99 薑汁燒肉。
何処から手を付けるか、男性陣としては堀と草木、だそうで。
『分かります、だってアレは花蘇芳なんですもん』
『ですよね、紫荊を植えて増やさないとですし』
紫荊花園と登録されている地区なんですが、学者ズが品種が違う、と。
確かに私も混同してるとは知ってたんですが、地域で呼び名が違うだけ、だと。
「で、全てを一気には無理なのだし、いっそ三班に分かれて。と思ったのだけれど、どうかしら?」
「ですねぇ」
「だな」
『“頼むね父さん”』
「おう、任せておくれ」
今は朝食会議となっているのですが。
ウムトさん、いつまでココに居るつもりなんでしょう。
「あの、奥様がお待ちでは?」
「彼らの方が安定したら、だね」
「すまんが頼む、流石に無理となってほっぽり出すワケにもいかんしな」
『“ありがとう”』
何かちょっと、ラブラブっぽいんですよね。
いや嫌悪も無いとは言ってましたけど、コレは。
いえ、止めときましょう、変なフラグを立てて折れても困るので。
「でだ、組み分けをするぞ」
「はいー」
園庭の事は全て小鈴と兔子に、薔薇姫様と薬羅葛氏は家具全般、金絲雀も家の知識は少し有るので雨泽様と鶺鴒と。
で、私はと言うと。
「はー、楽しいわ」
『そうですね』
暁霧さんと青燕さんとで婚礼衣装選び。
「いや家の事に」
「船頭が多くて諍いになっても困るでしょう?私達は予備、人手不足、相談が必要な場合に動ける方が良いでしょ?」
「まぁ、私の意向は伝えてるので良いんですが」
じゃあ他は何をしているのか、と言うと。
ウムトさんとトゥトクは材木や素材、それと職人集め。
ルーちゃんはお仕事が有るので寝てますし、臘月様と春蕾さんと先生は、顔役や地域へのご挨拶回り。
それ雨泽様の仕事じゃん、とも思ったんですが。
未だに病弱設定なのを利用して、朱家との衝突や摩擦を避ける為にも、今回は表には出させないんだそうで。
ほら、家の事に関わって無いの私達だけ。
「まだ婚約して無いから良いのよ、ね?」
『はい、それに詮索される面倒も避けられますので、コレが最善だと思います』
「あー」
毛色を気にする事って殆ど無いんですけど、ココですよね、ココで引っ掛かりが生じる。
しかもハレムですからね、最初位は愛想良くお付き合い出来るのがベストでしょうし。
「それでも気になるなら、コッチでやる事をさっさと済ませるか」
『お料理して頂ければ宜しいかと』
「あ、確かに」
大人数ですからね、作るのにも少し時間が掛かってしまうので。
まぁ、1品だけで良いですよね。
今回はルーちゃんにも約束した生姜焼きを。
でも豚、手に入るかなぁ。
『良いわ、うん、俺コレ好きだわ、名前とか有るの?』
「薑汁燒肉、ですかね」
《私も好きよ、醬油味なんですもの》
『何が使われてるんですかね?』
「それが聞いてよ翠鳥ちゃん、臭み消しに酒精を少し、後は玉葱と生姜と乾物のお出汁だけなのよ」
『乾物のお出汁って、やっぱり凄いですね』
「そうなんですよぅ」
先生にもお出しするので、隠し味に昆布出汁を使いました。
海と山を掛け合わせると、大概は失敗しない。
コレ、最早チートでは?
『お代わり』
「お、包々がお代わりって珍しいですね、ありがとうございます」
『次はもっと生姜多めで』
「はいー」
何処か少し懐かしい味だったんですけど、少し物足りないと言うか。
「うん、良いなコレは」
「ルーちゃんは、微妙そうですね?」
『美味しいんですけど、少し物足り無いと言うか、甘さが、もう少し』
「それ、テリヤキだかバーベキュー味だろ」
「あぁ、派生と言えば派生かもですね。甘めも作ってみましょうか?」
「いや、俺には美味いと思った記憶が無いんだが」
「ピーマンの肉詰めとか美味しく食べれますよ?」
「ピーマンが無いだろピーマンが、本来はトマトだって無い筈なんだからな?」
「けどパプリカは有りますよね?」
「アレはサフランやトマトの代替品として、良いのか?この情報」
「あ、つい、知的好奇心に負けました」
『その、パプリカじゃダメなんですか?』
「肉厚なのでちょっと」
「なら青唐辛子で良いか」
「いや辛さは要らないんですって、って言うか唐辛子も、本来は?」
「良いのか?」
「ぐっ、我慢します」
「実はな」
「あーーー」
「避け方がガキだなバカめ」
『どうしてピーマンだけが無いんですかね?』
《そりゃ関わった者が嫌いだったからじゃよ》
『「成程」』
「あの、もう終わりました?」
「終わった終わった」
「はぁ、あ、次はテリヤキですかね?」
『寧ろ大元、本来の食べ方を知りたいんですけど』
「あぁ、確かにな」
「んー、多分ですけど、ヤキトリ、鳥の串焼きかと」
「ほう、随分と平凡そうだな」
「あ、ツクネ、肉団子のタレですね」
「また、鮮度が大変そうな物を」
「しかも生卵に付けて食べるとかします」
「ココなら最悪は死ぬな」
「流石に私も食べてませんからねぇ、生卵掛けご飯」
「それ本当に美味いのか?」
「そりゃ好みは分かれますよ、ナットウとか特に」
「何で納める豆なんだよ、明らかに腐り豆、豆腐と逆だろうが」
「藁に納まった豆、だとか何とか」
「なら豆腐はどうなる」
「さぁ?」
『食べたいですか?』
「んー、温泉卵が有るので別に、ナットウもそこまで好きってワケでも無いですし」
「俺はジェノバソースが食いたい」
「あー、ピザ」
「パスタだろうが、ジェノベーゼの代わりが無さ過ぎる」
「紫蘇」
「違う、全然違う、香りが違うだろうが」
「細かい」
「お、やるか?」
『乾燥したのは有りますよね?』
「ジェノバソースは生を使ってこそだ」
「なら次はバジル料理にします?生はココら辺で罗勒って名前で手に入りますし」
「中央ですらも越冬出来んとはな、軟弱者が」
「そうなんですよねぇ、知りませんでしたよ。何にします?」
『あの、その、僕は遠慮しておきますね』
「苦手ですか?」
『祖母が育てて、それで作った自家製のソースが、苦手で』
「あぁ、他のと一緒に植えると匂いだか味がおかしくなるらしいな」
「へー」
「まぁ、改めて原種を食ってみてから考えろ」
『はぃ』
「材料って、何です?」
「コレだから、まぁ良い、松の実にオリーブオイル、チーズにアンチョビが少し、以上だ」
『あの、アンチョビも』
「まぁ、良さそうなのが手に入ればだ、松の実とオリーブオイルで何とかなる」
「けど本場の味が食べたいなぁ?」
「だそうだ」
「無理に食べないでも良いですからね?
『はぃ』
あの女道士、まさか先生狙いとか無いですよねぇ。
『ちょっと金雉、コッチコッチ』
「はいはい、はいはい?」
『あの女道士、本当に大丈夫なんですか?』
「何故?」
『だってアナタとほぼ初対面なのに、やけに親し気じゃないですか、裏が有ったら嫌なんですよ』
「あぁ、大丈夫ですよ、女性専門だそうですから」
『夜の意味で?』
「夜の意味でも」
『あぁ、ヤベぇ、夜伽についてお伺いしちゃった』
「他の人に頼むって言ってましたし大丈夫だと思いますよ?」
『もしかして女道士って全員が女色家、とか無いですよね?』
「あー、ご紹介されちゃう、とか、それは流石に無いと思いますけど。誰か付き添わせます?」
『いやあまり広めるべき事じゃないと思うので、多分、逆にお断りされるかと』
「私の為だけですか?」
『いやアナタにかこつけて興味半々ですよ』
「成程?」
『だって色に溺れるって言う位ですし、嵌まるとも言われてるんですから、相当ともなればもう凄いのでは、と』
「アレを一応、少し位は好んでるんですよね?」
『デカいって噂についてはどうでも良いですね、どうデカいかまで出回ってませんし、下手にデカいと痛いだけだそうですから』
「あー、それで、自分で身を守らないとですもんね」
『てか彼らのって大丈夫なんですかね?あんまりだとアナタがケガしちゃいますよ?』
「そこですよねぇ、準備万端を見せるって流石に無いみたいですし、確認して頂くのも忍びないので」
『なら、ココやっぱり、現物を拝むしか無いですよねぇ』
「でも婚約後に無理だ、となるのも、ちょっと考えものですよね」
『見れば良いじゃん』
「莫迦なの?」
『いや傷は浅い方が良いじゃないですか、私も帰ったら見るだけ見るつもりですよ?』
「お互いに手出しは無し、ですよね?」
『勿論ですよ、婚約前にヤって逃げられて腹に居たら大変な事になるんですから』
「それ、他もしてるんですかね?」
『貴族に多いみたいですよ、下手に婚約破棄になると不名誉なんで』
「でも、見るだけって、ちょっと何か」
『あー、アナタの場合はアレですもんね。見張りしたげましょうか?』
「なぜ」
『いや見慣れてるし制圧は私が一番得意な筈ですよ?』
「まさか私の為に道場に通ってたとか」
『いえ兄達の過保護からですよ、宿に変なのが来た時用、寧ろアナタの煤払いをしてたのは練習ですよ』
「私って、金絲雀の何なんですかね?」
『親しい幼馴染では?』
「腐れ縁」
『腐って無い健全な縁だと思ってましたよ?恩だとかは追々分割払いでと思ってましたし』
「ココで払い終えて」
『どうしてそうなりますかね?』
「利益ありきじゃないですか?」
『そりゃ損しか無いなら逃げますけど。あのですね、そう思う一端を担ってしまいましたけど、もう少し自信を持って良いんですからね?』
「外見には自信が有りますよ、魅了し易いなぁと」
『根の良さと真面目さも評価してますよ私は』
「初耳ですが?」
『あれ言ってませんでしたっけ?』
「仕返し?」
『いやマジで』
「マジで?」
『あー、こうして他で言ってたので言った気になる事も有るんですね、成程』
「まぁ、私もそんな感じですねぇ」
近くに居ても誤解が生じるって、マジだったんですねぇ。
相変わらず花霞の近くは勉強になりますね。
『お前は相当血が余ってんだな?』
婚約式の前に、お互いに体を見せ合いたい、って。
心配になって横を見ると、案の定。
《らしい》
「まぁまぁ、仕方無いじゃない、ある意味願いが叶うんだもの」
『で、どうすんの?』
《お互いに見て安心出来るなら、そうすべきだと思う》
《そうだね、思うよりも小さ過ぎて離縁になった者も居るのだし》
「それは残念だけれど、子が生まれないとなるとね」
《いや、浮気が発覚しての事だよ、彼のは他とそう変わりが無かったらしい》
「あら凄い方だったのね、そのお相手」
『ぶっちゃけデカいってどん位デカいの?』
で臘月が指し示したのは、腕。
《折角だからと姉に立ち会わせて貰ったけれど、流石に驚いたよ、確かにアレは明らかに凶器にしか思えないね》
「そりゃ腕並みだなんて、凄いわね元奥様」
《どうやらお互いに相性が良かったそうで、そうした理由も有って円満離縁になっていたよ》
『まぁ赤の他人に急所見られてるけどね』
「もうちょっと、詳しく聞きたいわよね?」
『まぁ、浮気してどう円満離縁になったかは気になるけど、大猪は大丈夫か?』
《流石に腕並みじゃない》
《じゃあ、詳しく話そうか》
相手は使用人。
でまぁお嬢さんに懸想してて、部屋で匂いを嗅ぎながら一人でヤってた所をお嬢さんが見て、そのまま。
けどお互いに立場を良く分かってるから、結婚する意志は無くて、その時だけ。
そのまま女は結婚して、初夜を迎えた、でも満足出来ず。
しかもそれはお互い様で、別々に相談に来て、事が発覚。
円満離縁させるにしても、次もまた同じ事で破談になっても困るだろう、と。
臘月の姉ちゃん、当主が使用人の大きさを確認して、上手く誘導したらしい。
『で使用人と結婚?』
《ご両親のどちらかには言う必要が有ってね、当主である父親に言って納得して貰ったよ》
「あぁ、女同士でも分かり合えない事は有るものね」
『めっちゃ不安そうじゃん』
《金雉のは小さいかも、知れない、と》
『あー』
「そうね、部分的に成長が遅い、ともなればね。けど大丈夫よ、全部じゃなくても良いそうだし」
《と言うか、こう話していて気付いたのだけれど、金雉は自分の事を知って確認をするんだろうか》
『あ、確かにって、またもー』
「と言うか、訊ねる事もちょっと、憚られるわね」
《そうだね、コレは流石に青燕から訪ねて貰おう》
でまぁ、濁されて終わりだよね。
答えを出すのは向こうなんだし。
「まだ暫く不安でしょうけど、仕方無いわね」
『だな、頑張れ』
《うん》
麗江滞在3日目にして、ジェノバソースが完成致しまして、先生とルーちゃんにジェノベーゼをお出ししました。
「パスタも仕入れたお前は偉い、優勝だな」
『ありがとうございます』
うん、転移者強い、勝てない。
仕入れで右往左往して頂いた苦労は有ると思いますが、言って1日で材料が揃ってしまう。
コレで家とか頼みたいんですけど、マジで1日で建ちそう。
あ、もしかして向こうの一夜城って、向こうの転移者の仕業?
凄い、居てアレかぁ。
「あ、無理しないで下さいね?」
『先生が言ってた通り、他のハーブと混ざってたんだと思います。美味しいですよ、凄く』
「それか成長したから、だな」
「あぁ、確かに」
それか、もう、私が作ったなら何でも良いんじゃないですかねルーちゃん。
『そんな事は多分、無いと思います』
「本当ですか?」
『多分』
あ、宝貝有るんだった。
「それより蠱毒について俺は聞きたいんだが、お前はどうする?」
「私が聞いても大丈夫な範囲なら、ですね」
『例の無差別蠱毒を放った者を捕縛し罰してる最中ですから、安心して下さい』
「あ、もうそこまで」
『はい』
「お疲れ様です。大変でしたか?」
『基本的には僕の力、人の力だけで辿り着かないといけないので。はい、大変でした』
「下手をすれば悪目立ちするからな」
『はい、証を他にも見せないといけませんから』
「となると、捜査、ですか」
「抽象的に言え」
うん、助かります先生。
『とても薄く、細い線を辿って、何とか』
私も例に漏れず、好きなんですよね探偵モノ。
「詳しく聞きたぃ」
「頑張れルー」
『悪縁って、実はちゃんと有るんです、黒くて禍々しい糸。その黒い糸を辿るんですけど、それが蠱毒か蠱毒師に繋がっていて、だから地道に辿らないとダメなんです』
「闇夜で見えます?黒い糸」
『そこは、内緒で』
法術か加護ですかぁ。
「成程ぅ」
『因みに罰は開墾奴隷です、河川の整備や道の整備、僻地なので逃げ出すと死にます』
「そうした方々のお陰だと思うと、複雑ですね」
『既に舌は切り取られ、周りは極悪人だと知ってる普通の方々、しかも管理は徹底されてるので大丈夫ですよ』
「普通の方と同じで、だから舌を、成程」
『はい、蠱毒師だった事は上役しか知りませんから、何か有れば上役の首が飛びます』
「あぁ、蠱毒師を利用したら誰が利用したのか分かっちゃう仕組みなんですね」
『他にも仕組みは有るんですけど、聞かない方が良いかと』
「そうしておきますぅ。けど、理由は何だったんですか?」
『蠱毒師の復活、だそうですけど、単に有名になって遊び回りたかっただけなので。蠱毒師の全てに指導が入りましたから、暫く同じ事は起きないかと』
今度は蠱毒師について気になりますけど。
まぁ、知らない方が良い事が多そうなので、この辺にしておきましょうかね。
「次はイカスミとミニトマトだな」
「あー、美味しそぅ」
「で、見せ合うってどう言う事だ」
「あ、そうだそうだ、その件でも来たんですよ」
『は?』
「あ、いや、見せ合うだけ。あまり大きいと困るので、はい」
「俺が代わりに見といてやろうか?」
「それトゥトクが妬きません?」
『先生でもトゥトクでも、花霞無しで見られてるかも知れない状態は僕は無理ですからね』
「だが立会人は居るんだろう?」
『だとしても他人でしょうから』
「そんなに花霞に見せたいか」
『そ、あ、いや、そうじゃなくて』
「あまり虐めないで下さい?」
「まぁ、考える余地をやる為にも、コイツは最後だな」
「あー、確かに」
「最初よりは良いと思うぞ、その時までには見慣れてるだろうしな」
『無し、は、無しですよね』
「はい、婚約前の傷が浅い状態で試す事なので」
「でお前は自分の大きさを把握してんのか?」
あ、とうとうルーちゃんまで。
『すみません、顔を洗ってきます』
「強くこすらないで下さいねー」
「で、いや、まぁ、お前が確認さえすれば良いか」
「と言う事にしといて下さい」




