表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/53

第三十八話 魔法

 先生の魔法で、ある程度カオスが解消された後、お話し合いの時間となった。


「まずは、そうですね。サファイアさんは本当に大丈夫ですか?」


「少しの間、身動きが取れないだけだ。何も問題はない」


「そうそう、ちょっと動けないだけですって。それで、この後はどうしますか?」


「正直なところ、測定室がこんな惨状になったところは見たことがありません。ひとまず、そうですね。他の測定室に空きがないか確認してきます」


 他にも測定室が作られているとは、余計なことをしてくれる。一つだけであれば、先生は慌てて、サファイアは空腹で動けなくなる。そして、俺はのほほんと測定をスルーして、まったりとしながら過ごせるというのに。


「一室使えるそうです」


「それはグッドニュースですね。しかし、ここで先生にバッドニュースをお伝えします」


「また何かあったんですか!? 今度は床に問題でも!?」


「いや、そんな大事じゃないですよ。ただ、この後の測定について一つ。俺、多分魔法を使えません」


「......え?」


「よく分かりませんでしたか? 魔法を使えない、別の言い方をすると」


「意味は分かります! けど、どうしてかが分からないというか」


「その答えは、ものすごくシンプルなんです。ついさっきまでで、使い切っちゃいました」


「え〜と、ごめんなさい。今度は意味が理解できませんでした。使い切っちゃったんですか? 一体いつ?」


「数分前ですかね。ほら、ど派手な魔法が披露されたときですよ」


「確かに、そのど派手な魔法は私も目にしましたが、発動したのはサファイアさんですよね?」


「魔法を使用したのは、間違いなくサファイアです。ただ、あの魔法にはサファイア以外の魔力もこもっていたんですよ。覚えてませんか、先生? この測定が重要なものだと聞いて、俺は緊張して」


「力がこぼれる」


「その通りです」


「それで、さっきのサファイアさんの魔法を、図らずも援護する形となったってことですか?」


「お恥ずかしながら。制御が効かなかったもので」


「けど、それで全ての魔力がこぼれるとは、いや、あの威力の魔法であれば」


 しばらく独り言を呟いていた先生だったが、やがて一つの納得できる結論に達したらしい。

 すまないな、余計なエネルギーを使わせてしまって。


「はい、一応整理は付きました。それでは、測定はまたの機会にして、クラスの皆がいる体育館に向かいましょう」


 先生も充分に落ち着いてくれたようだ。

 残る問題はただ一つだけ。横たわって動かないサファイアを起こし、肩をかして所在地不明の体育館に連れて行くことだ。


「私も肩をかしますよ!」


「その気持ちは嬉しいが、どうしても無視できない点があるから遠慮させてもらおう」


「どこが、あ〜、分かりました。そうですよね、迷惑ですよね」


「サファイアだって感謝をしているんです。だから、背が小さいからって落ち込まないでください」


「お前、あえてそれを口にするか」


「私なら大丈夫ですよ。この身長とは長い付き合いですので」


 先生が肩を落としながらポジティブに振る舞う様子は、見ていて非常につらい。

 誰だよ、先生の身長が小さくなる運命づけをしたのは。まあ、小走りの様子とか可愛いから、そこまで責めはしないけどさ。


「よおクラース、測定が終わったぞ」


「はやかったね」


「少し気合を入れすぎてな。それより、随分と眠そうだな」


「体力をつかうから。ついうとうとしちゃう」


「でも、その割には豪快に的を破壊しているじゃないか」


「いつもどおりじゃない?」


「何の魔法を使ったら、コンスタンスに的を木っ端みじんに破壊できるんだ?」


「うーんと」


 俺の問いかけに答えは返ってこず、かすかに寝息だけが聞こえてきた。

 立ったまま眠ることすら驚きなのに、それを実技の時間に成し遂げるんだから尊敬の念すら湧いてくる。


「蒼くん、サファイアさん。二人に一つ知っておいてもらいたいことがあります」


「その真剣な顔つき、真面目な話の始まりですね」


「クラースについて、だな」


「はい。クラースさんが使用する魔法について、重要な話です」


「クラースさんは、初級魔法しか使うことができません。中級以上の魔法を使おうとすると、魔力が暴走してしまいます」


「じゃあ、この的の破壊のされ具合は」


「初級魔法を彼女なりに精一杯コントロールした結果です」


 なるほど、これで理解できた。

 クラースに会ってから、まだ一時間くらいしか経っていない。その中で疑問に思ったことの答えに、何となく予想が付いた。


まったく、魔法ってのはそんなに重要なものかね。これじゃあ、この世界の支配者が完全に魔法ってことになっちまうじゃないか。

 ただ、これでやるべきことが決まった。

 ひとまず、サファイアには座ってもらおう。流石にしんどくなってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ