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第二十八話 会談

「夢にまで見たお金じゃないか!」


「うらやましいです!」


「あの学院長やりやがったよ。俺たちのニーズを完璧に捉えやがったぞ」


「輝きといい重みといい、間違いなくこれは本物の金貨だ」


「うらやましいです!」


 自分の目的も忘れて、金貨の輝きに目を奪われている魔族よ、それでいいのか。

 しかし、これで新たに一つの道が開けた。やはり、種族の壁すらも超えるものは金だ。異世界にきて、それをよく思い知らされた。


「なあ魔族さんや。一つお話合いといかないか? そっちにとっても魅力的な提案ができると思う」


「おもしろそうですね。私も、こき使われることには飽き飽きしていたところです」


「では、私たち三人の秘密の会談を始めるとするか」


「まず、必ず確認しておかなければならないことがある。お前は裏切るか?」


 魔族に向かってそう問いかけると、澄んだ目をして答えが返してきた。


「サンドバックがセールの店を見つけることが、ここ最近の趣味でした」


「真っすぐな瞳での返事をどうもありがとう。それじゃあ、最大の問題は解決したということで、早速本題へと移ろう」


 魔族があっさりと証言したが、どうやらこの学校には魔族側の内通者がいるらしい。最終的な目標は、若い芽を摘み取ることか、はたまたこの学校を自分たちの手中に収めることか。

 目的がいずれにしろ、俺たちが気にすべきことはたった一つのことだけだ。


「魔族側が大きく動くとしたらいつになると思う?」


「おそらく、約二か月後に開催される魔剣祭のときでしょう。魔剣祭では、この学院に一般の人が入場することも許可されます。加えて、七月までに調査を終えるように私も指示されました」


「となると、私たちもそのころまでに準備を終えなければならないというわけか」


「思ったよりも急だな。俺たち二人は、この学校に来たのが数時間前だからな」


 これからの予定をあれこれと考えていると、魔族がある提案をしてきた。


「ここは、私が人肌脱ぐ場面のようですね」


「お前が? 大丈夫か?」


「失礼ですね! 私は、四月からこの学院の調査にひたすら取り組んできました。ですから、この学院に関してはお二人よりも詳しい自信があります」


「長さで言えば、お前は確かに私たちに勝っているだろう。だが、なあ」


 俺の方を見て同意を求めるな。気合の入った相手に対して、残酷な真実を突き付けるのは気が引ける。

 しかし、言わねばなるまい。何せ、すっかり忘れているようだし。


「どうして縄に縛られているのか、その理由を忘れたのか?」


「ぐっすりと眠っていたから、お前は今も縛られているんだ」


「これは油断、そう、油断していただけです!」


「油断をそう誇らしく理由にするなよ」


 今更ながら、この魔族に裏切りとは別の心配が芽生えてきたが、そんな俺の様子を感じ取ったのか、縄で縛った張本人がフォローをした。


「確かに、今のこいつの見た目は哀れだが、潜伏能力には期待できる。平凡なものであれば、私がもっと早く見つけていた」


「なら、そういうことにしておこう」


 こと魔法に関して、俺にとって彼女以上の先生は今のところいないのだ。ならば、ここは先生を信じるとしよう。それに、戦闘力でいえば、まず間違いなく俺よりは高いのだ。俺に文句を言える義理はないというもの。


「あの、一ついいですか」


「どうした? 金のことならまた後でな」


「いえ、そうではなくて、お二人とも、何か共通の目標を持っているのですか? 協力関係という言葉がよく似合う雰囲気でしたので」


「そういえば、まだお前には告げてなかったな」


「俺たちは同盟関係にあるんだ」


「その名も、甘い蜜を吸えるだけ吸おう同盟だ!」


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