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第二十四話 駄菓子

「さっきも目にはしたが、この大きさには圧倒されるな」


「あまりうろちょろするな。田舎者に見られるぞ」


 この学校は東京と同列かよ。けど、俺からすれば負けず劣らずの迫力があるな。

 そんなことを思いながら校舎内に入るとすぐ、違和感に気づいた。


「さっきよりも、賑やかになっていないか?」


「多少はな。気にするほどでもない。さっさと駄菓子屋で用を済ませて帰るぞ」


 若干ペースが速くなった彼女に続いて階段を上り、フードコート擁する六階に到着した。


「この階に駄菓子屋もあったのか?」


「昼飯の時に、ちらっとだが視界に入った。おそらくこの階は、レストランに限らず様々な店が入っているのだろう」


 あの時に周囲に気を配る余裕があったことに驚きつつ、歩を進めていくとフードコートは終わり、その代わりに彼女の言ったように多様な店が立ち並んでいるのが見えた。


「この学校は、本当に何でもありだな。服に雑貨に日用品。食材を売っている店もあるな」


「あそこが駄菓子屋だ」


 目を丸めながら歩いていると、前を歩いていた彼女がある店の看板を指で示して立ち止まった。


「これが、異世界の駄菓子屋か。何とも、こう、代わり映えしないな。いい意味で」


 デパートに入っているような店が並ぶ中、駄菓子屋だけは木造感満載の開放的な店構えとなっている。年季といい商品の陳列の仕方といい、古き良きを見事に再現した出で立ちだ。                                                        今時、前世でも希少種となった駄菓子屋を、このオシャレ学校で目にすることができるとは。この異世界はどこか王道を忘れてしまったところもあるが、今回に限ってはそこに感謝せざるを得ないな。


 彼女に続いて中に入ると、帰り着いたような安心感に襲われる。ただ、よく見てみると、駄菓子の雰囲気は纏っていても、味の想像がつかないような個性派たちがそこかしこに鎮座している。


 胸を高鳴らせて駄菓子を入念にチェックしていると、俺が好きだったものと同じ形状のした駄菓子を発見した。


「随分と時間をかけて見ていたが、それが気に入ったのか?」


「これは小さいくせして味が詰まっているんだよ。将来酒を飲む機会があれば、一度はこれをつまみにしたかったくらいだ」


「値段的には問題なさそうだな。それにするのか?」


「支払いが可能な金額ならためらうことはしない。ただ、一つだけ引っかかることがあってな」


「他にも気になるのがあるとかか?」


「いや、これにしようとは思っているんだ。しかし、どうしても聞かずにはいられないことがある」


「味のことか? それなら、私もお前と同じように、つまみにしたいと思うから心配はないぞ」


「そうじゃない。俺が気になっていることは、何故これが虹色なのかってところだ」


「普通は虹色だろ」


「それは普通じゃねーよ! これの色といえば、暗めの赤だろ。どうして雨上がりの空を反映しているんだよ! これをつまみにしたら、酒の飲みすぎで目がおかしくなったことをまず疑う」


「そんなことを言われてもな。これは虹色であることが当たり前だ。それに味はさほど変わるまい。ビビらずにさっさと買え」


「別に駄菓子にビビったりしてねーし。俺がためらうのは、虹色の食べ物全般だから 勘違いするなよ」


「はいはい、分かったから。いいからレジに行くぞ」


 背中を押される形で、虹色の駄菓子を持ってレジまで進んだ。

 ここまできたら、覚悟を決めるほかない。大丈夫。パスタやパンケーキを食べたとき、こいつの味覚に異常はなさそうだった。


 まず虹色駄菓子を置いて、次いで金貨を渡す。これで購入が完了するはずだった。

しかし、そこに待ったをかける人物がいた。他でもない、店主のおばあちゃんだ。


「ちょっと待ちな。この小金貨、偽物だね」


「「......は?」」


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