想定外の合成
「ん? どうなった?」
≪マスター。 下です≫
スライム同士を合成させたと思ったのだが、合成の光が収まるとそこには何も無いように見えた。 失敗しても不定形のナニカは生成されるのだが、神様が設定間違えたか? と思ったのも束の間、オペレーターの声によって何が合成出来たか判明する。 俺の足元には、極小サイズのスライムがぽよぽよ飛び跳ねていた。 ミクロスライムだ。
「超大当たり来たぁぁぁぁ!!!!」
≪ハズレですね≫
「え?」
≪え?≫
俺とオペレーターが全く異なる反応を取ったことで、両者疑問の声をあげる。 オペレーターには何か別の物が見えてるのか? ミクロスライムだぞ、ミクロスライム。 戦闘力こそ無いものの、その隠密性は最高峰。 所持スキルである【縮小】によって、人間が見えないサイズにまで小さくなれる。 ACOでは攻略者たちとの情報戦において大いに役立ったあのミクロスライム様だぞ。 こいつが居なければ、俺は世界ランク1位になれたとは思えないほどの便利さだ。 1階層から攻略者に付けることさえできれば、攻略者が持っているスキルや武器、防具、場合によってはそのスペアですら丸裸にできる。 階層ボスの前でわざわざ武器や防具を変えるやつだっているんだ。 その情報を先に知れるのと知れないのでは大きな差が生まれる。
≪そう聞くと恐ろしいモンスターですね≫
「だろ? しかもここは現実世界。 ゲームではできなかったが、人間の体の中に潜入させて【縮小】を解除させられると考えると…」
≪……。≫
やはり最高のモンスターだと言わざるを得ないな。 思わずオペレーターも絶句しているが、その気持ちも分かる。 俺だって知らない状態で同じことを聞いたら絶句する自信しかないしな。 …にしてもこいつはいつまで跳ねてんだ? スライムは動かなかったのに、合成後のミクロスライムは動いている。 検証の余地ありだな。 巨大なモンスターを出したときに潰れました、じゃただのアホだからな。
そう思いながら俺がミクロスライムを掴むと、手の中でぽよぽよ跳ね始めた。 意外と可愛いなこいつ。 もう一体出来ないかなと思いながら、合成の画面を見直すと、画面には変化が生まれていた。
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【合成】
・スライム
+ =×××
・スライム
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「流石に制限は有るか」
≪はい。 同じ素材で合成できるのは、日に一度までです≫
ふむ、むしろ素材を変えれば合成できるのは有り難い。 そもそもの合成可能数の制限があるよりは使いやすい。 とはいえ、素材が少ない今は何もできないとも言い換えられるが。 ゴブリンを合成するにしても、ミクロスライムが動いたということから、迂闊に試すこともできない。 仮にここで襲われでもしたら、殺されるのを待つだけだ。
となると、次にやるべきことは【ガチャ】だな。 ACOのガチャからは食料品やベッドといった生活必需品も出てくる場合があった。 それらはゲームの中ではゴミとまで言われ、女性向けのコレクションルーム作成に使われたのだが、この場においては一番役立つと言っても過言では無い。 何も無い部屋で過ごすというのは案外精神がすり減るものだ。 それ以前に、現状だと食料品もないので、ガチャで出すしかないというのも事実ではある。
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【ガチャ】
・配下ガチャ
・罠ガチャ
・食料品ガチャ
・家具類ガチャ
・衣類ガチャ
・嗜好品ガチャ
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「ほっ。 神様もそこは考えていたっぽいな」
≪食料と家具は必須ですからね。 その二つだけは毎日10回分を無料で引くことができます≫
そりゃあありがたい。 初めて神様に感謝をしながら、俺は食料品ガチャの方をタッチする。 と同時に、画面が光り出す。 どうやら10回分はタッチすると自動で引かれるらしい。
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【食料品ガチャ】
・高級肉
・薬草サラダ
・鰹
・生麺
・ビーフジャーキー
・草
・回鍋肉
・チョコレート
・卵
・虫
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若干、食料か怪しいものも出てきたが、節約しながら食べて行けば何日かは持つレベルの食料を入手できた。 オペレーターによると、今引いた食料はダンジョン操作の方から取り出せるようになっているらしい。 ACOにもあったボックス機能に入っているのだろう。 もしかしたら異世界で最も活躍するのは、ボックス機能になるかもしれないな。 ダンジョン内限定とはいえ、生物以外はなんでもしまえて、なんでも取り出せるボックスはある意味一番のチートだと言えるかもしれない。
「それじゃあ家具類の方も引くか」
前の画面に戻るのは思考の操作だけで出来るのに、操作をするときは実際にタッチしなきゃいけないのは面倒だなと思いつつ、家具類ガチャを引く。 いや、よく考えると、実際にタッチするようにしとかないと事故を多発しそうだな。 これで正解かもしれん。
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【家具類ガチャ】
・椅子
・カーテン
・机
・籠
・天蓋付きベッド
・板
・バスタブ
・額縁
・乾燥機
・棚
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「……狙い通りベッドは出たな」
≪天蓋付きですが≫
とりあえずはこの場でも寝ることが出来ると。 それに水さえどうにかなれば、風呂にも入ることが出来そうだな。 水風呂だけど。 どうにかしてお湯を作る方法はないものかと考えるが、家具類で湯沸かし器的なものが出るか、お湯が出せるようなモンスターを配下ガチャで引くのを待つしかないかと肩を落とす。 と思いきや、オペレーターがここで役立つ。
≪合成してみては?≫
「出来るのか!? モンスター以外の合成!!」
俺は過去一の速度で画面を【合成】に戻す。 流石にモンスターと家具の合成や、モンスターと食料の合成は出来ないだろうが、要らない食糧同士を掛け合わせたり、合成元によっては高確率で欲しい家具が手に入るかもしれない。
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【合成】
・草
+ =・???
・虫
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【合成】
・草
+ =×××
・板
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ひとまず合成後のタッチはせずに合成可能素材を選択していくが、やはり同じ分類の物しか合成できなさそうだ。 とはいえ、合成できるだけでゲームの時から比べれば相当な進歩ではある。 ただのゴミが宝に化ける可能性もありそうだ。
「使わなそうなのから試してくか」
≪そうですね≫
食料品の方は草と虫を合成し、生ゴミ。 卵と生麺を合成し、釜玉うどん。 生麺が何を経て、うどんになったのかは知らないが、食料品のほうは釜玉うどんが出た時点で止めておいた。 家具類の方は籠と板を合成して、ゴミ箱。 乾燥機と棚を合成し、ハンガーラック。 最後に額縁と何かを合成させようと思ったが、失敗する予感しかしなかったので辞めておく。
「こんなもんだな……ん?」
必要なものを消費してゴミを生み出してもしょうがないので、ここまでにしようかと思った俺の目に、ゲームではあり得なかった合成素材が表示される。
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【合成】
・ダンジョンコア
+ =・???
・???
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「へぇ。 ダンジョンコアも合成の素材に使えるのか。 つってももう一つの合成素材が無いから、合成できないんだけ……ど?」
≪マスター!?≫
ダンジョンコアが安全な状態になるなら、いつかは合成も試してみたいなと思いながら、俺は【合成】の画面を閉じたはずだった。 決して???の横の・を押したということは無い。 そもそも押す気も無かったのだから、思念で一つ前の画面に戻すはずだった。 可能性としては、画面からダンジョンコアを外していなかったからといった予想はできるが、時すでに遅し。
ダンジョンコアと俺の体とが光り出し、四角の部屋が光で埋め尽くされた。




