転生
「はっ!? ……は?」
神が嗤ったと思ったのは気のせいだったのか? 俺は全く以て問題が無いどころか、多少は身体能力が上がっているとすら感じる自分の体を試しながら、そう考える。 俺の予想なら、そのまま死ぬと思ってたんだが。 まさか普通に目を覚ますとは。 体に問題がないことも確認した後、俺は目を覚ました場所を見渡す。
見渡したはずだが、ほとんど何も無い。 俺が今居る場所は、ゴツゴツした壁に囲まれた真四角の部屋だった。 これではダンジョンというよりも洞窟と言った方が正しいだろう。 とはいえ、本当に何も無いのではなく、部屋の中央にはダンジョンコアらしきものがほのかに部屋を照らしながら、台座の上に収まっている。 それを見なければ、俺はここがダンジョンだと理解できなかっただろう。 神が俺を殺すために異世界に送ったと考えた方が分かりやすかったからな。 なぜ俺を殺す必要があるのかというのは置いといて。
「ふむ、転生し終わったということでいいのか? まあ無事に転生できたのならそれでいi」
≪ダンジョンコアにお触りください≫
謎の声というよりか、謎の機械音が響き渡り、俺はその場から飛びのく。 神にしろ、この声にしろ、最近はこんなのが流行ってるのか? ダンジョンコアから聞こえているようだが、俺はダンジョンにこんな機能があるなんて知らないし、ACOにもこんな要素は無かった。 とすれば……
「神が用意したものだろうな。 ……触ればいいんだよな?」
不用心にもほどがあるなと自分の中で叱責しながらも、俺はダンジョンコアに触れる。 どちらにしろ触るという道しか俺には残っていなかったから。 周りは壁に囲まれていて、外に出ようにも掘るという手段しかない。 そもそもダンジョンの壁が掘れるのかという疑問もあるが。
おそるおそる触れると、先ほどの機械音が聞こえてくる。
≪ハロー、マスター。 私はこのダンジョンのオペレーターです。 マスターのサポートとして神に生み出されました。 これ以降はマスターの保有スキルとなってサポートをするので、決心が付きましたら、スキル化の了承をお願いします≫
「……了承する」
決心とは何のことだと思いながら、一拍置いて了承をする。 スキル化と言っているぐらいなので一心同体にでもなるから決心と言ってるのだろうと考えた俺は、数秒後、甘く見ていた自分に後悔する。
「がぁっ!? ……ぐぅぅ……」
頭に響く痛みは、生まれて初めての痛みだった。 俺には分からないが、片頭痛を味わったことがある人はこんな気持ちなんだろうかと考える。 と同時に襲い掛かって来る痛みに、遂には思考すら危うくなり、その場に蹲る。
「ぅぅぅ……はぁっ!! はぁっ!! 痛みがあんなら先に言っとけよ!! アホか!?」
≪すみません。 生物にスキル化などしたことが無かったので、まさか痛みがあるとは≫
「確認作業ぐらいしとけ!!」
頭に響く俺以外の声に不快感を感じながらもツッコミを入れる。 確かに神は初めてダンジョンを作ったとは言っていたが、ダンジョンマスターになることを了承した俺に対して中々酷い仕打ちじゃないだろうか。 俺はゆっくりと立ち上がった後に、ダンジョンコアに向かって平手打ちをする。 壊そうなんて気持ちはないが、多少の仕返しだ。
「はぁ、それで? 深淵のダンジョンの能力を準拠したと言ってたが。 その結果はどんな感じなんだ?」
≪と言うと思われましたので、もう一度ダンジョンコアに手を置いてください。 痛みはありませんから怯えなくても大丈夫です≫
俺は先ほどよりも警戒しながら、もう一度コアに手を翳す。 すると、ダンジョンコアの上に透明な板のようなものが現れる。
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【深淵のダンジョン】
・ダンジョン操作
・配下生成
・罠生成
・合成
・ガチャ
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≪文字の前の・をタッチすると、詳細が表示されるようになっています。 また、ダンジョンに関するほとんどの機能はダンジョン操作の中に入っています≫
なるほど。 ダンジョン操作がACOでいう所のコンソールみたいなものだな。 そう思いながら、配下生成の横の・をタッチする。 ダンジョンの方から手を付ける前に、出すことができるモンスターの方から見た方が早いと思ったからだ。
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【配下生成】
・スライム
・ゴブリン
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流石にこれはダンジョンが出来たばかりだからってことで良いんだよな? ゲームの方の深淵のダンジョンからの引継ぎは無さそうだし、ガチャと合成はあるとはいえ、素材がこの2体だけだとどうしても限りがあるんだが。
≪その2体はDP0で無限に生み出せるモンスターとなっております。 マス≫
「は?」
≪もちろん一定時間毎の配置上限はあります≫
「だよな。 流石にビビった」
まさかゴブリンとスライムが永遠に湧き出てくるダンジョンなんて俺も作りたくないからな。 だが、配置上限はあったとしてもDP0はヤバい。 ACOではそんなモンスターは存在していなかった。 合成というシステムがある以上、DP消費をモンスターごとに設置していなければ、初心者が誰にも攻略できないダンジョンを作り出すことができてしまう。 モンスターを設置し続け、相手を疲弊させればそれで勝てるからな。 それだけ物量というのは強いものだ。
≪続けます。 マスターがDPを獲得する量に応じて、出現させることができるモンスターは解放されて行きます。 保持している量によっては、ドラゴンなども召喚できる可能性があります≫
「可能性ってことは、できないこともあるのか?」
≪はい。 例を挙げるとするならば、エルフという種族がおります。 エルフがダンジョンマスターを務めると、植物系モンスターや虫系モンスターが中心に生成可能になっていきます≫
これは予想した通りだな。 神が俺をダンジョンマスターに選んだ理由もこれだろう。 漫画や小説によって、異世界の妄想なんかもするし、ドラゴンと聞いても忌避感などはない。 何かに偏っているような種族でもないし、それに加えて俺がプレイしていたACOはモンスターの可能性が無限大。 確かに適任ではある。
「生成するにはまた・の部分を触ればいいのか?」
≪はい。 そうです≫
一応確認を取ってからスライムの方を触る。 すると、ダンジョンコアから光が照射され、その光が俺の横の地面を照らしたかと思うと、そこにはスライムが生成されていた。 動く様子はないが、これがゴブリンだったらどうなっていたのか疑問に思う所だ。 まさかいきなり襲い掛かって来ることはあるまい。 なんて考えながら、俺はもう一度スライムの方をタップする。 今度は先ほどスライムが生成された横に、もう一体のスライムが生成される。
≪思念を送れば、先ほどの画面に戻れます≫
「お、サンキュ」
スキル化?されているからか、オペレーターにも俺が考えていることが分かったらしい。 ACOの初心者ならまずは試してみること。 合成だ。 あり得ないほど低確率だが、スライムとスライムを合成し、ヒールスライムなんかが出来ると最高だな。 異世界でどうかは知らないが、ACOでは回復役は貴重だったし。 ちなみに合成に失敗すると、不定形のナニカになる。
「それじゃあ合成と」
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【合成】
・スライム
+ =・???
・スライム
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少しわくわくした気持ちを持ちながら、俺は???の横の・をタップする。 思えばどこか懐かしい。 俺も初心者だったころは、最初にスライム同士を合成させたものだ。 スライムはACOでもDP消費1という低コストで召喚できたるが、戦闘能力が一切無いというモンスターだった。 それでも合成の素材にする分には最高のモンスターなので、初心者はスライムで合成というものを学んでいく。 スライム同士以外の組み合わせでは、超高確率で失敗するということも同時に。 世界3位のやつが中級者ぐらいの時にスライムとドラゴンを掛け合わせたネタ配信で大当たりを引いて、全員から恨まれたのも懐かしい。 一瞬だけ流行ったな。 スライムとドラゴンの合成。 わりに合わな過ぎて、これまた一瞬で廃れたけど。
≪お、きましたよ≫
「さて、何ができるか」
昔話を思い出し、若干のホームシックを発症しながら、俺は光り出す2体のスライムの方を見つめる。 ヒールスライムヒールスライムヒールスライムヒールスライム!! 来いやぁぁぁぁ!!!!




