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守護霊(?)は鎌倉武士  作者: ほうこうおんち
壱の章:目覚めた鎌倉武士
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武士の霊はかなり強かった

 皆川ユウキは、ラーメン屋で出会った胡散臭い霊能者・芦屋ミツルの事は記憶の彼方に追いやっていた。

 あれからしばらく会う事も無かったし。

 当然、訪ねても来ていない。

 だから、よく居る胡散臭い奴とか、セールスマンとかと同じように、もう出会う事も無いだろうと忘れようしていた。

 だが、奴は現れる。


「あー、居た居た!

 おーい、サムライ君!」

 金曜の夕方、大学を出て夕食に向かおうとしていたユウキは、ほとんど忘れかけていたチャラ男に声を掛けられる。

「えー-っと……何の用?」

「君、俺の事忘れてたでしょ、寂しいなあ。

 うん、用も無いのに会いに来ないよ。

 明日って暇かい?」

「まあ、特には……」

「飲み行かない?」

「行かない」

「即答しないでよ、いけずやわ。

 俺と付き合いたくないんだろ。

 大丈夫、大丈夫、俺だけじゃないから」

(何が大丈夫なんだろう?)

 そう思い、立ち去ろうとするが

「女の子も居るし、霊とかの話は一切しないよ」

 との言葉に足を止めてしまった自分を情けなく思ってしまう。

 陰キャな方で、こういうコンパとかに誘われる事もない。

 ユウキも正常な大学生だ。

 つい欲に負けてしまい、コンパ参加を了承してしまった。


 土曜日、阪急梅田駅から待ち合わせ場所に移動する。

「あー、来た来た!

 こっちこっち!」

 見るとチャラ男の他に、同系統の男と女性陣が居た。

「飛び入り参加の、えー-っと、誰だっけ?」

「えー、ミツル君、名前も知らない人呼んだの?

 マジ、ウケルんですけど」

 女性陣が笑う。

 女性陣は、特にギャルとかそんな感じではなく、軽さはあるがちょっとオタクっぽさも感じられた。

「まあ、いいやん。

 彼、鎌倉時代の武士の子孫だよ」

「ウッソー!

 マジ?

 誰?

 名無し君、この辺の人?」

「いや、栃木だけど……」

「足利……じゃないよね?

 え、まさか小山党?」

 ユウキは先祖の事はある程度調べたから、小山党という武士団については知っていた。

 だが、軽そうな子に一発でその名を出されて驚く。

「この子たち、歴女なんだよね。

 この子は今の大河ドラマ関係で、鎌倉時代が好きなんだよ。

 こっちの子は適塾とかが好きで、さっきまでそこに行ってたって」

「はあ……」

 歴史好きな女性たち。

 それとこの芦屋ミツルという男がどう繋がっているのか?

「実はさ、俺も割と有名な歴史上の子孫なんだよ。

 安倍晴明と戦ったとか何とかな、陰陽師の子孫。

 らしいよ!」

(「らしい」か……道理で胡散臭いわけだ)


 話は意外に盛り上がり、特に史学系大学生のユウキは珍しくモテて有意義な時間と思われた。

……実際にこの日は盛り上がっていたのだが、ウブなユウキは「社交辞令」とか「キャバクラトーク」とか「興味なくても話を合わせる女の子の特技」というものに鈍感である。

 おかしいと思わなければならない。

 芦屋ミツルという男が、普段はそれ程付き合いが無さそうな歴女との合コンをセッティングした真意を。

 実際、彼のツレのチャラ男たちは、歴史以外の話をして盛り上がっている。

 歴史好きの集まりでは決してなかったのだ。


 夜、テキトーな時間でお開きとなる。

 そのまま京都に帰るのだが、

「まだ終電までに時間あるし、ちょっと地下街付き合ってよ」

 と芦屋に言われ、ユウキは言われるがままに着いて来た。

「ちょっと待っててくれない?」

 そこは泉の広場という場所で、以前は地下にも関わらず噴水が置かれていた。

 そしてオカルトに鈍感なユウキは知らなかったが、ここは結構な心霊スポットである。

 ここでは「赤い女」という霊が徘徊していると言う。

 赤いドレスを着た、顔は無表情だが目だけまるでクレヨンで塗り潰したように真っ黒という、不気味な霊が……。


 言われるがままに待っていたユウキは退屈を覚える。

(まだ帰って来ないのか?)

 そんなユウキの所に、幽霊ではないモノがやって来る。

 それは零感のユウキにもハッキリ認識出来た。


「てめえ、なにをガン飛ばしてんじゃ、ああ?

 ワレ、ナメとんと承知せんで!」

 チンピラである。

 ただし、ツレの方がまともなようで

「おい、そいつ下見てスマホいじってたやん。

 見境なく喧嘩売るのやめとけや、アホ」

 と制止していた。

「絶対こいつ、俺にガンつけとった。

 殺気感じたしな。

 喧嘩売ってんの、こいつじゃ」

「酔っておかしな事言うなや。

 おい、そこの兄ちゃん、さっさとどっか行きぃや」

「待てや、おい!」

 こういう場面に慣れていないユウキは固まってしまっている。

 それをナメた態度と見たのか、因縁つけて来たチンピラが、制止を振り切って近づく。

 だが

「う……、気持ち悪い……」

 そして

(自主規制)。


「ほれ見た事か、吐きくさって情けない。

 兄ちゃん、今の内やで、さっさと……」

「あ、すみません、すみません、ツレ待たせてたんです。

 君、早く行こう」

 芦屋が速足で戻って来て、チンピラのツレに頭を下げて状況を説明すると、ユウキの手を引っ張ってその場から連れ出した。


「大丈夫?」

「あ、ありがとう。

 なんか、足がすくんで動けなかった。

 助けてくれなかったら、殴られてたかもしれないね」

「いや、助けたの俺やないし、あいつ君を殴れんかったよ」

「は?」

「あの兄ちゃん、急にリバースしたやんか。

 あの前にさ、君の背後霊の武士が矢を放ってたよ」

「はあぁ??」

「君に危害を加えられると思ったんだろうね。

 自分の所有物に手を出す者は許さんって感じで攻撃してたよ」

「……霊から人間への攻撃って、取り憑いたり祟ったりってのは分かるけど、物理的な肉体にも効果あるものなの?」

 芦屋はしばらく考え込み、

「俺も初めて見た」

 と答える。

 そして

「……人間ってさ、魂からあって、その辺りはボォっと鈍く光ってるんだよね」

 と続けた。

「はあ……」

 零感過ぎて、ユウキはそんなの見た事もない。

「武士の矢が当たった後ね、刺さった辺りの魂の光が無くなってたんだよ」

「魂が無くなったって事?」

「全部ではないけど、多分そう」

「魂が削られた……。

 じゃあ、あの人死ぬのか?」

「そりゃ人間いつかは必ず死ぬけどさ。

 多分すぐ死ぬって訳ではなさそう、分かんないけどね、

 でも、死なない方が苦しいかもな……」

「と言うと?」

「魂が減った場所に、悪霊っていうか、変な気が集まって埋めていってた。

 それと、あの人の守護霊も武士に殺されて、代わりにやっぱり悪霊みたいなのが取り憑いてた。

 これから先、魂を侵食されながら相当重い霊障に苦しむ事になると思うよ」

「そうなんだ……」

「まあ、リバースした一番の理由は、その武士が腹パン噛ました事だけど」

「へ?」

「初めて見たよ、物理的な打撃力がある霊なんてさ。

 君の背後霊、霊なんて可愛いものじゃなく、実は生命エネルギーの形ある映像、

 オラオラオラオラとか無駄無駄無駄無駄無駄ァ!って言いながら攻撃してくるタイプのものなんじゃないの?」

「いや、知らんし……」

(確かに鏃に触って発現したけどさぁ)

 そんな無駄話をしながら、京都へ帰る終電に揺られていた。


 芦屋はユウキに黙っている事があった。

(噴水広場に居る赤い女の霊をぶつけてみようと思ったけど、失敗だったなあ……。

 余りに武士の霊が強過ぎて、女の霊が隅っこでガタガタ震えて泣いてたし。

 しかし、肉体に直接攻撃出来る霊とは……。

 今度試す時は、もっと凄いの探して来ようっと)

次話は明日17時にアップします。

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― 新着の感想 ―
[一言] つまり鎌倉武士はスタンドだったのか
[良い点] そう言えば例のアレも、最初は「俺には悪霊が憑いている、近づくな」的な事を言ってて、制御出来てませんでしたね~ 制御出来ればユウキ君も立派な幽○紋使いになれますねw
[良い点] これ、主人公と守護霊が歩く災害になっているような気が。 [一言] 悪霊より悪霊してますよね。
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