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守護霊(?)は鎌倉武士  作者: ほうこうおんち
肆の章:四国巡礼の旅
36/46

ヒダル神

この回もネタ回だと思ってもらえれば……。

(円谷プロ、ごめんなさい)

肆の章はあともう2回、おまけでネタを突っ込んでいきます。

「ユウキ君、ここが室戸岬だよ!」

 能天気な芦屋ミツル。

 それに対し、運転もしてないのにグロッキーな皆川ユウキは

「そう……」

 と答えるのがやっとであった。


 ここは第二十四番札所の最御崎寺(ほつみさきじ)が在る。

 だが芦屋はただ、八十八ヶ所巡りをする為だけに室戸まで来たのではない。

 ここにも「最強の霊能力者」とされる彼への依頼者が居るのだ。

 正しくは、彼の親戚で霊感商法をしている者が元請けで、京都における住宅とか諸々を無料で使わせて貰っている芦屋に依頼を投げられた、となる。

 その男は、自分の親戚が「最強の霊能力者」となった事で、「恩を売っておいて正解だった」とばかり、難しい案件ばかりを丸投げして来ていた。


 この地での仕事は、ヤバい筋の人間からの依頼とか、大金が支払われたというものではない。

 かなり厄介なモノの割に、実入りは少ない。

 だが退治出来たとなれば、一気に評価が上がるだろう。


「で、どんな怪異なんだ?」

 体を動かす度に悲鳴を挙げながらユウキが聞いた。

「餓鬼憑きってやつやね」

「餓鬼?」

「そう。

 激しい空腹になったり、疲労が凄かったり、手足が痺れたり、体の自由を奪われたりする。

 そして、そこから一歩も動けなくなって、飢餓によって死ぬ事もあるってさ」

「……それ、今の俺……」

「いやいや、ユウキ君のは激しい筋肉痛なだけでしょ。

 まあ、体を乗っ取られて、自由を奪われたりもしたけどさ。

 あんなパワーを出したら、筋肉も断裂したりすると思うよ」

「どんだけだったんだ……」

 とりあえず全身激痛のユウキは、その激痛と手を動かす事すら億劫な事から、食欲は無かったが喉は異常に乾く。

 痛みに耐えさえすれば、体は動かせるから、症状としては全然違った。


 過疎化が進み貧しい孤独な老人が増えている。

 そんな中、近年世界を騒がせた伝染病で外出制限されたりした事で、飢えた老人がこの餓鬼に取り憑かれてしまったようだ。

 病院に運ばれて、その老人は助かる。

 しかし、同様に急激に飢餓状態に陥る者が相次いだ。

 世間は病気のせいにしているが、とある霊能者が

「これはヒダル神の仕業だ」

 と見て取った。


「ヒダル神?」

 ユウキが尋ねる。

 餓鬼とか言っていたが、相手は「神」なのか?

 まあ神と言っても、背後の長沼五郎三が撃退した地獄の神のようなモノもいるし、やはり長沼五郎三が数百年封じていた山の神という自然神もいる。

 どんな奴かは分からないが、まあ所謂「絶対神」とか「唯一神」とか「創造主」ではないだろう。

行逢神(ゆきあいがみ)の一種かな。

 人や動物に行きあって災いを成す存在。

 まあ神って言ってるけど、妖怪とかに近いかな」

「じゃあ、あんたでも退治可能だな」

「いやいや、そう簡単に退治出来ないから、神とか付けられてるんよ。

 追い払う事は出来ても、根本的には退治出来ない。

 だから西日本各地に、様々な呼ばれ方をして存在しているんだ。

 ヒダル神の他に、ダラシとかダルとかダリとか……」

「ダリだと?」

「うわっ!

 魔剣さん!」

「魔剣さん、何か心当たりがあるんですか?」

 この魔剣に封じられた大悪魔は、極めて自己顕示欲が強い。

 しょっちゅう話に混ざって来る。

 しかも、刀身を震わせながら発声するので、関西のお笑いトリオの「お~ま~え~は~ア~ホ~か~」というのこぎり音声に近いが、それでも零感者だって聞く事が可能だ。

「ダリ……そいつは宇宙細菌かもしれない。

 俺様が知っているその種に寄生された奴は、極度の貧血状態へと陥り、衰弱死するという。

 まあ、俺様が知っているのとは種類が違うっぽいな。

 だから、もしかしてと思って言っただけだ」

「もしその宇宙細菌なら、どうやって倒すんだ?」

「そりゃ寄生された宿主ごと倒せば良いだろ。

 また武士に取り憑いて貰って、俺様を使って雷を受けてだな……」

「もう勘弁して……。

 今の俺は、3分しか動けない体になってしまったわけだし」

「3日もすれば回復するだろ。

 まあ、宿主ごと倒すのでなければ、そこの武士に体の中に入って貰って、中からダリを倒せば良い。

 おい、小さい敵を倒すのなんてダリぃなんて面してんなよ」

「え?」

「主の守護霊の事さ。

 明らかに面倒臭がっている。

 まあ、大敵とは違って、面倒臭いだけの相手だからな」

「面倒臭い?」

「あのなあ、体内で思いっ切り暴れて良いなら何の問題も無えよ。

 それやるとマズいんだろ?

 やって良いなら、いっそ宿主ごと倒すまでさ」

「なんでこう、極端から極端に話を持っていくかなぁ……」

 だが言っている事に一理はある。

 ミクロ化して体内に進入、言うは容易い。

 しかし、それで内臓を傷つける事なく相手と戦うのは難しい。

 なにせ、抗がん剤とか抗生物質とかでさえ、関係無い体内の組織や体内菌に作用する事があるのだ。

 そして、長沼五郎三は云わば神でさえ倒す剛剣のような存在だ。

 とても細かい組織から病巣を取り除くガンマナイフと同じ能力なんて持っていない。

 途中でイライラして、周辺の組織ごと焼き討ちしかねない。


 二進も三進も行かなくなって来たが、ここにもう一人、自由に動ける霊が居た事を思い出す。

 短い間ではあるが、常に神の力さえ宿した古き霊と一緒に居た為、多少それが伝染してた奴が。

「おい、そこの馬飼い。

 そうだ、お前だ。

 お前、俺様を持ってこいつの体内に入って、ダリを退治しろ。

 お前、最近生きていた時より強くなって来たとか言ってたな。

 それを証明してみせろ。

 特別に俺様を使わせてやるのだ、有難く思え。

 なに? 面倒臭い?

 よし、武士よ、そいつを〆ろ。

 分かった、やる?

 それで良いんだ」


 ユウキも芦屋も置いてきぼりの中、方針が決まったようだ。

 そして、このヒダル神(宇宙細菌ダリ)対策は成功する。

 鎌倉武士が督戦する中、暴走族の霊は魔剣を持って、体内の病原体、もしくは宇宙細菌を駆除するのであった。


 そして「ヒダル神を退治した者」として、芦屋ミツルの名声は更に高まるのであった。

おまけ:

移動中の車内にて。

ユウキ「ナビの音声だけで退屈しないか?

 音楽とか聞かないか?」

芦屋「いや、今でも結構騒々しいから、やめてや」

ユウキ「??

 騒々しい??

 車の音か??」

芦屋「違う!

 旅の道連れの連中が歌ってるんだよ!

 聞こえないって、凄くいいよなぁ……」

芦屋には疑問があった。

鎌倉武士は昔の日本の歌を歌っている(芦屋が知らないだけで、それは田楽であった)。

暴走族の霊である馬飼いは最近の歌を歌っている。

芦屋の腰の女の首は、ニコニコしながら聞いているだけ。

(まあこいつが声を出したら、結構な衝撃波が発生するから、黙っててくれて良いのだが)

問題は魔剣の方だ。

鞄の中に入っているから、例のビヨンビヨン音は聞こえて来ないものの、基本的に霊的な存在の声だから芦屋の耳には届く。

(小〇旭の「自〇車ショー歌」とか、どこで知ったんだ?)

微妙に歌の選択がレトロな魔剣さんであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに細菌まで、もう本当何でもありですよね。火力が過剰すぎるのが欠点ですね。
[良い点] 今話もありがとうございます! >なに? 面倒臭い? >よし、武士よ、そいつを〆ろ。 >分かった、やる? >それで良いんだ wwwww [気になる点] 宇宙細菌ダリはヒダル神だった……?…
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