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守護霊(?)は鎌倉武士  作者: ほうこうおんち
肆の章:四国巡礼の旅
35/46

トンネルを抜けたら、そこはヤバい村だった

「なあ、ここ何処なんだ?」

 ナビの通りに運転していた芦屋ミツルが、助手席の皆川ユウキに語りかける。

 彼等は高知市を出た後、徳島県に向かってレンタカーを走らせていた。

 そしてトンネルを通って、出たら急に道が悪くなっている。

 その時、ユウキは往復拳骨連打デンプシーロールという肉体言語での警告を何度も食らって、そっちに行ってはいけないと警告を受けていたが、それによって意識を飛ばしていたから、止めるどころではない。

 それに幾ら警告しても、彼がハンドルを握っているわけではない。

 鎌倉武士は自動車というものを理解してはいないが、運転手を驚かせると危険というのは感じたようだ。

 言ってみれば、馬に乗っているようなものである。

 急に馬を脅かして暴れさせれば、落馬して大事になる。

 あの鎌倉殿・源頼朝だって落馬が元でこの世を去っているのだ。

 守護霊たるもの、守護している自分の子孫を危険な目に遭わせるわけにはいかない。

 仕方なくそのまま気づくまで運転させていた。


 初めての道で、芦屋も気づいていない。

 トンネルを出た所には

「コノ先、日本国憲法通用セズ」

 と書かれていた事に……。

 あのトンネルは、何処か変な場所に繋がっていたのだが、ナビを信じて運転していた為、芦屋は明らかにおかしいと気付くまで、自動車を走らせてしまったのだ。


「あれ、エンジンが掛からない。

 どうして?

 AT車でこんな事あるのか?」

 急にエンジンが停止し、再度エンジンを掛けようとしても動かず。

「まずいよ、こんな所で……」

「電話は……圏外?

 JAFにも来て貰えないやんか」

 何か背筋に冷たいものが走るのを感じ、この場から逃げ出したくなる2人。


「助けを呼ばないと。

 あと、電話を借りられたら借りようや」

 芦屋がそう言って、村の方に歩き出す。

 だが歩いて行った先に、紐に結び付けられた缶があった。

 それを踏んだ途端に、カランカランと音が鳴る。

「なんだよこれ、罠か何か?」

 芦屋が文句を言うと、それにユウキであってユウキに非ざるモノが答える。

「戯け者よ。

 其の方はわしの後ろを護れ。

 腰の呪物を使うが良い」

「ユウキ……君?」

「あれなるは、人にして人に非ず。

 仏罰を恐れず首を取れ」

「首を取れって……そんな物騒な……」

「情けなや……元服を過ぎて人の首一個も取った事無きや?」

「普通無いって!」

「されば、今宵あれなるを討ち取って、初首を挙げるが良い」

 芦屋は雰囲気の違い、口調の違いから

(これは守護霊やってるサムライに強制的に体を乗っ取られたな)

 と悟った。

 あのサムライ、夢の中(強制幽体離脱中)には会話した事があるが、日本語は通じても会話が成り立たない。

 言うだけ言って、話を聞こうとしないのだから、黙って従っていた方が気が楽になる。


「我が主よ、今はあの武士が意識を持っているとはいえ、やっと主に使われる日が来たな。

 武士は俺様を使う技を持っているから、これは楽しみだ」

 いつの間にか鞘から抜かれ、ユウキの左腕に握られている短刀が、そう言って笑う。

「来たぞ」


 見ると、斧を持った男たちがわらわらと寄って来る。

 日本語のようには聞こえない言葉で威嚇をして来た。

 彼等が何者なのかは分からない。

 もしかしたらユウキの身体を乗っ取った長沼五郎三が言ったように、普通の人間ではないのかもしれない。

 そんな彼等だが、今夜は不幸であった。

 相手にするのが、彼等以上のDQNなのだ。

 彼等は人を殺す事に躊躇いがない。

 余所者は殺しても構わないと思っている。

 無表情に殺しにかかる。

 しかし長沼五郎三の場合、殺す事に躊躇いが無いどころの騒ぎじゃない。

 殺す事に誉れを持っている。

 自分に喧嘩を売って来る相手は、当然自分に殺されるのも覚悟しての事だろう。

 殺してやるのが礼儀だ。

 そして、自分程の剛の者に討ち取られるのだ、末代までの誇りとせよ。

……まあ、今すぐ族滅させてやるから、末代とは当代の事なのだが。


 そして左手に握られている短刀。

 厚重ねの刺刀には、名を持つ大悪魔が宿っている。

 この悪魔は、強い奴と戦うのが好きなのだ。

 面白い戦いをするのが好きなのだ。

 現世の人間に憑依して意識を乗っ取っている長沼五郎三は、得意の弓矢が使えない。

 だから実体化したこの魔剣を使う。


 利害は完全に一致していた。


 ユウキの肉体は、何やら奇声を挙げながら襲い来る村人を、逆に刺し殺す。

 斧を振りかぶる村人に対し、最短距離で喉を貫く。

 致命傷を与えると、その者を他の敵にぶつける形で蹴り飛ばす。

 その蹴った反動で次なる敵に急接近すると、今度は相手の頸動脈を斬る。

 噴水のように吹き出す血。

 だがこの血も、自らが浴びるではなく、別の敵の方に吹き出して目くらまし及び、相手を怯ませる道具とした。

 こうして立て続けに5人ばかりを殺すと、ユウキの肉体は呟いた。

「肩慣らし終わりたり。

 子孫なれども修練が足らず、情けなや。

 これより本気を出す」

 刀も笑う。

「久々に血を味わったぞ。

 だが、まだ足りぬ。

 もっとだ。

 俺様の力をもっと引き出す戦いを!

 折角刀となったのだ。

 もっと面白い戦いを!」

 そう言うと、急に雷鳴が轟く。

 そして稲妻が走ると、それが魔剣に落ちた!


「ユウキ君?」

 見ると魔剣に落ちた雷電が、刃先で放電しながら留まっている。

 ユウキはその刀を両手で持ち、大きく上段に構えて力を溜めていた。


「もしかして、その技はギガブレ……」

 芦屋が言い終わる前に、ユウキは村人の一人に向かって突進し、一気に刀を振り下ろした。

 途端に爆音。

 直撃を受けた相手だけでなく、残った村人全員が砕けながら飛び散っていた。

 それだけではない。

 斬撃が向かった先にある村に雷撃が走り、炎上する。

 直撃した地点にはクレーターが出来ていて、近くの樹々は同心円状に薙ぎ倒された上で燃えていた。


「討って良いのは、討たれる覚悟のある者のみなり」

 ユウキの口からそういう言葉が漏れる。

「中々面白い技だったぞ」

 そう言う魔剣に

「武士は雷獣や鵺、鬼を退治す。

 我が祖も、大百足を矢にて倒せり。

 この技は龍神の加護を受けし武士もののふが扱えしもの也。

 わしはその技を習ったが、生きている時には使えなんだ。

 幾歳もの修練を積んで、漸く使えたり。

 か程に年月を重ね、ようよう源頼光公や渡辺綱殿の足元に及びしか」

(そいつらは生身でギガ(以下略)を使ったとでも言うのか?)

 啞然としている芦屋の方に、ユウキが歩いて来た。


「疾く、此処より去るべし。

 今ならあの牛車のようなる物も動こうぞ。

 疾く!!」


 言われた通り、自動車は始動した。

 そしてユウキは車に乗ると、急に意識を失って眠ってしまった。

 2人は急いでこの場を立ち去る。


 バックミラーに映る、一軒残らず炎上する村を見ながら……。

おまけ:

戦国時代、九州にて。

戸次道雪「統虎(後の立花宗茂)よ。

 お主にはわしが左足と引き換えに会得した秘剣・雷切雷光斬撃(ギガブレイク)を伝承する。

 これは龍神の加護を受けた武士ならば使える技じゃ。

 まず太刀に轟雷(ギガデイン)を受けてじゃな……」

戸次統虎「その時点で死にます」


一方、東海地方にて。

徳川家康「平八郎、お主の必殺技は何だったかな?」

本多忠勝「蜻蛉切回転一閃(ハーケンディストール)ですな。

 亡き鬼武蔵こと森長可殿の血祭人間無骨ブラッディースクライドには負けませぬ」

徳川家康「そちの鎧は、(井伊)直政の鎧と違って薄くて軽いのぉ。

 それで大丈夫なのか?」

本多忠勝「敵の攻撃の当たらぬ男に不安がおありですか?」


大和国にて。

柳生宗厳「師よ、剣の奥義を!」

宝蔵院胤栄「槍の技の極意を!」

上泉信綱「大地を斬り、海を斬り、空を斬る……。

 そして全てを斬るのが一刀流なのです!」


やがて、雷切ギガブレイクを受け継いだ立花宗茂と、一刀流ストラッシュの系譜のタイ捨流は出会う事になる。



おまけのおまけ:

山法師「おのれ、仏敵織田弾正!

 聖なる御山を焼き討ちするとは許せん!」

第六天魔王「今のは叡山焼討メラゾーマではない。

 坂本堅田焼討メラだ」

最近、第六天魔王様の焼討を免れた仏像が見つかったというニュースがあったので。

全山焼討メラゾーマなんか使ってない部分焼討メラ程度しかしなかったんだろな、と。

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― 新着の感想 ―
[一言] 歴史がドラクエに汚染されていく…
[気になる点] 元ネタが思いだせないー何だっけ?どっかで観たなー
[一言] どうあがいても、絶望(村人達が)
感想一覧
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