表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護霊(?)は鎌倉武士  作者: ほうこうおんち
弐の章:呪術師との対決
20/46

後始末

 人外の戦いは終わった。

 鎌倉武士は外道を退治して、これでまた功徳を積んだと得心している。

 鎌倉武士にこき使われていた暴走族の少年は、久々に暴れられてスッキリしている。

 愛馬も主人の暴威を見られて満足している。


 こいつらはひと暴れしてそれで良かったかもしれないが、後始末は人間がしなければならない。

 皆川ユウキは、幸徳井晴香に指示されたように芦屋ミツルに連絡を入れると、余計な事をせずに待機していた。

 その後、芦屋が

「帰って来た。

 なんか、一仕事終えた満足そうな顔をしているね。

 勝ったようだ。

 って、やめて!

 その馬、変なモノ食ったせいか、腹を壊したみたい。

 ここで出さないで、気持ち悪い」

 と言った事で、全てが終わった事を知る。

「えーと、霊って腹を壊すの?」

「普通は壊さない。

 大小便をする霊なんか存在しない!

 だけど、もうこの連中は俺の常識の範囲外にいるから、理解不能」

「でも、霊の馬糞(ボロ)なんか有っても、大した事ないでしょ」

「見えない人にはね!

 俺には見えるの!

 臭うの!

 ダメなの!

 あ、そこの兄ちゃんありがとう。

 良かった、片付けてくれた……」

(見えないから全く分からない。

 一体何がどうなってるやら)


 芦屋ミツルは、その後「こっち方面の」人脈を使って、事態がどうなったのかを調べて貰っている。

 その間に、ユウキと芦屋は別件で色々忙しかった。

 呪いの依頼者で、術者の事を白状しようとして口封じされた学生、この死亡について何回か警察に事情聴取を受けている。

 検死では急性脳出血ではあったが、直前に口論していたのを見られていた為、警察としては色々と聞きたいところである。

 ユウキの方はほぼ部外者で、何も言える事はない。

(当事者は後ろにいるんだけど、警察が話を聞けるわけないしなあ)

 そう思って、警察が可哀そうになる。

 芦屋は、女性問題で口論になっていたと話さざるを得ず、それはそれで恥ずかしい思いをしていた。

 だが、このレベルで話しを留めておかないと、面倒臭い事になる。

 呪いとか、呪い返しとか、そんな話はしても信じて貰えないし、業界的にも話してはいけない事だ。


 そして哀れな依頼者の葬儀にも参加した。

 出たくはなかったが、それでも最後に目の前に居た縁もある。

 幸徳井晴香に相談したら

「縁を一回終わらせる意味でも、葬儀に出た方が良いと思う」

 と言われた為、全くの無関係であったがユウキも参列した。

 そこで芦屋が、遺族から何やら詰られていたが、知らんふりしよう。


「ふう……俺、悪くないのに色々言われて参ったよ」

 遺族にしたら、行き場のない思いをぶつけていたのだろう。

 それでもユウキは

「俺の気分分かった?

 俺自身は何もしてないのに、色々呪いをなすりつけられたり、守護霊が大暴れしたりで、家を追い出される羽目になった気分を。

 説明したくても、説明出来ないもどかしさってやつを」

(我ながら性格悪いなあ)

 自覚しつつも言っておきたくて仕方がなかった。

 そもそもはこいつが、色んな事件の発端なのだし。


「あ、そうそう、俺を呪った奴の情報入って来たよ」

(切り替え早いっ!)

 さっきまで神妙な顔をしていたのに、もう別な話題に変えて、ケロっとした顔になっている。

「思った通り、日本人では無かったそうだ。

 裏社会の人間。

 警察も、死んだ彼が銀行からそれなりの大金を下してどこかに持って行った所までは分かったみたい。

 当然、俺に対する報復で、暴力団とかに金が渡ったんじゃないかって調べた。

 俺の事情聴取も、反社の人間に付き纏われていないか、とかそういうのがあったしね。

 それで呪術師を探していたって所までは突き止めたようだけど、そこから先には進めなかった。

 相手がちょっとデリケートな問題を抱える外国人だったからね。

 日本における代表者みたいな人が出て来て、警察を黙らせたみたい。

 ただ、それでも警察が分かったのは、呪術師が死んだって事。

 俺もユウキ君も推定死亡日時には京都に居たのが証明されているから、この件は嫌疑が掛からない」

(うちの御先祖がやった事だろうけど、法的な証明は不可能だろうな)

「金を持って逃走なら、警察も黙っていなかったけど、容疑者……呪術で何かするのは法的に問題に出来ないから何て言うんだろうね、とにかく容疑者死亡だったから、それ以上の捜査は打ち切り。

 迷宮入りって事にした。

 遺体は母国の人が持ちかえったようで、この件はニュースとしては表に出ないようだよ」

「まあ、そうだろうね」

 外国人の呪術師、何をやったのかも分からないまま死亡、宗教関係・人権関係・外国人問題とかで色々言われたら、実害が出ている訳でもないのでそれ以上は捜査も出来ない。

 納得はいかないが、やむを得ないだろう。


「それで、その呪術師の仲間が仇討ちに来るとかは無いのか?」

「無い」

「本当に?」

「いや、さあ、聞いてくれよ」

「嫌だと言っても話すんだろ?」

「まあね。

 なんかさ、俺って手を出してはいけない霊能力者って裏社会で評判になってるっぽいんだよ。

 蟲毒とか特級呪物とかをことごとく返り討ちにしたヤバい術者だって。

 誤解だよなあ。

 でも、その誤解を元に裏社会の元締めみたいな人が

『芦屋ミツルには決して手を出してはならない、この愚か者の事は自業自得だと思って忘れろ』

 って言ったようなんだ。

 だから、もう俺が呪術師から狙われる事は無くなったと思う」

「そうか。

 なんか色々と納得出来ないんだが、とりあえずは一件落着かな」

「そうだと思うよ。

 精進落としに、どうだ、これから飲まない?」

「付き合う」

 普段は下戸で酒とかに付き合わないユウキの返答は意外だった。

「おお、いいねえ、いつもは嫌な顔するのに」

「なんか、俺も凄く疲れたよ。

 一杯飲みたい気分だ」

 なんか酒ッ! 飲まずにはいられない! と感じる時はあるものなのだ。

「よし、決まりだ!

 じゃあ女の子呼ぶから」

「……あんた、まったく凝りてねえのな」


 こうしてこの件は終わった。

 だが、「蟲毒すら返り討ちにする最強の霊能力者」とされた芦屋ミツルは、それゆえにまた色々な厄介事をユウキに持ち込む事になる。

次章はまた1話読み切り形式にします。

次話は明日17時にアップします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 第20部分到達、おめでとうございます! [気になる点] >その馬、変なモノ食ったせいか、腹を壊したみたい。 だから、あの呪術師は『永遠に死に続け』状態に留めておいた方が良かったのでは………
[良い点] よくも悪くも、理不尽さが表れてますよね。この後味の悪さも含めて。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ