第8話
前回までのあらすじ……エアリスの両親は死に、悲しみにくれる二人に容赦なく襲い来るヘルハウンド。悲しみと怒りの果てに、エアリスは突如として……エルフのような姿へ変化する。
「エア……リス……?」
「ううううあああッ!!」
エアリスは暴走を続けている。彼女の咆哮に、続々と魔物の残党が集まってくる。
ギャウッ!ギャウッ!
グオオオッ!
ヘルハウンドとデーモンそれぞれが四方八方囲う。
「き……えてえええええええええッ!!」
シュパパパァン!
エアよりも強力な風魔法エアリィを放ち、カマイタチで一気に葬っていく。
エアリスの魔法の強力さに、近づくことすらできない。
「エアリス……落ち着いて……お願いだから……!!」
パチパチパチパチ
どこからか、聞いたことある……拍手の音!?
「まさか!」
「そう……そのまさかですヨォ」
ヴォンッ!
どこからかワープしてきた魔人がいつの間にかエアリスの首をつかんで離さない。
「グッ……ううう……ッ」
「クーックックック、掘り出し物ばかりですねぇ、この村は。あなたは先ほどの赤髪の少女、そしてエルフ……ハーフですかね」
この魔人はさっきのギルドハウス襲撃の……ここにいるってことは……くそっ、マリンさん……!
「これはこれは……なるほどこれはァ!!」
ミキミキミキィッと音を立て、エアリスの首を絞めていく。
「素晴らしい魔力の胎動を感じますネエ!やはりエルフは素晴らしい!ここで神族と出会えるとは……幸運の極み!!」
魔人の目が赤く光ると、首を握っている手からどす黒く赤い波動が立ち上り始めた。
「て、てめぇ、エアリスに何を……」
薄気味悪い笑いを浮かべながら俺の問いに答える。
「賢いあなたなら、もうすでに分かっているのでは?神からの“生き返し”を受けたアナタなら……ネェ!」
刹那、ブワッ!と波動が一気に燃え上がると、その隙間から覗くエアリスの肌が、徐々に黒く変化していく。眷属にでもする気か……!
「そうは……させねぇ!!」
ブラスターを撃ち、隙を狙う。俺のブラスターに反応したのか、魔人は余った手で防壁を張る。
が、俺のブラスターはあっさりと受け止められる。くっそ……!
「ククク、そう焦らずとも、アナタも眷属にして差し上げますヨォ。……さぁ、目覚めろ!!」
ドンッ!
闇の波動がエアリスへと注ぎ終わる。
掴んでいた首を離すと、エアリスは殺気を纏った目を見開き、狂いながらも美しかった肌は黒く染まり、面影はあるものの、もはやエアリスとは思えない。
「こんなの……あんまりだ……ッ」
前世でもここまでの絶望はなかった。姉妹のように育ってきた幼馴染が、俺の力不足によってこんな……。
「さあエアリス、アナタの手で、彼女を少し痛めつけてあげなさい。殺してはいけませんヨォ?」
「グゥゥ……オオオアアアッ!!」
エアリスは殺気を放ちながら咆哮する。その直後、エアリスの姿が目の前から消えたのと同時に、腹部へ激痛が突如襲う。
「ぐ……えッ……」
腹……を殴られたのか……景色も早く流れて……吹っ飛ばされてるのかこれ……。
「げほっげほっ……ぐ…うェ……ッ」
咄嗟にフレイムシールドで守れたのはいいけど、それでも激痛だ……立っていられない……!
「えあ……りす……負け……ないで……」
「くははは!無駄なことを!
なぁに、悲しむことはありませんヨォ、アナタも眷属になれば、お友達のエアリスとも一緒にいられるのですからネェ……」
絶対絶命……ここまで……か。
父さん、母さん……ごめん……―――。
―――キィンッ!!
突然金切り音が響くと、どこからか飛んできたナイフが魔人の肩に刺さる。
「ぐぅ!?このナイフ、いつの間に!?」
辺りが氷のように冷たい空気へと変化していく。と同時に、魔人に刺さったナイフが凍り付いていき、その氷は腕全体を包んでいく。
「私は―――あなたを殺す」
氷のように冷えた殺気を放ち、俺の傍を立つ女性―――。
その女性は、見間違えるはずもない、俺の母親、キサラ・レッドハートだった。
読んでくださりありがとうございいます!
次回へ続きます!