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Red Hearts  作者: Y
5/9

第5話

前回までのあらすじ……村の自警団の一人、ヨーゼスさんが傷だらけで王都のギルドハウスに報告にきてくれた。村が魔物の襲撃をうけているみたいだ。

くそっ……俺たちがどうこうできそうな話ではないのはわかってるけど……待つことがこんなに辛いなんて……。


胸に延々につっかえ続けている嫌な感じがぬぐえない。父さんだから大丈夫だとは思うが、だからといってお茶でも飲んで待つとかそこまで楽観的にもなれない。


「お父さん……お母さん……」


エアリスが俺の胸の中で震えている。無理もない……。34と6歳の俺ですら胸騒ぎで不安が抑えられねぇよ。


マリンさんも突然の緊急事態で職務に追われているみたいだ。他のガーディアンズも続々と出撃していく。


「リオナちゃん、エアリスちゃん。6歳の君たちには辛い現実かもしれないけれど……信じて待ってあげて……」


マリンさんは俺たちに優しく語り掛け、そっと抱きしめる。


「大丈夫よ、リオナちゃんのお父さんは、世界にその名が知れ渡るほどの凄腕のガーディアンなんだから、負けるはずがないわ」


ガシャーーーンッ!!


突如、ガラスを突き破る音が響く。


「え!?な、なに!?」


マリンさんが物音のした方向へ走っていく。


「エアリス、ここにいて」


俺もすかさずマリンさんの後を追う。そこで俺たちが目にしたものは、信じられない光景だった。


グルルルゥ……。


ギャウッ、ギャウッ!


魔物たちがギルドハウスへ大群をなして入ってきていたのだ。


「ヘルハウンド!?どういうこと!?門は?!」


焦る心を抑え、マリンは腰に納めていた剣を抜く。


「あぶない!!」


一匹、隙を見てとびかかっていやがる!日頃練習を重ねてきた俺の火の魔法、喰らっとけ!!


キュイィン……


ゴッボォウ!!


俺の魔法を直撃したヘルハウンドが吹っ飛ばされ、丸焼けになりながら悶えている。


「リオナちゃん!?だめよ、でてきちゃ!!」


「そうも言ってられません!私も、戦います!!じゃなきゃ、終わりです!!」


「くっ……わかりました、援護してください!!」


俺は壁にかかっていた剣を取り上げ、構える。剣術がこいつらにかなうかわからないが、ないよりはマシだ。魔法に関していえばおそらく問題はない。


「いくつか新魔法試すことになりそうだが……じゃあ次はこれだ!」


「リオナちゃん……魔法を……詠唱ナシ……?!あなた一体……」


炎の力を体全体に駆け巡らせ、身体能力の向上を図る魔法だ。こいつはすでに村でこっそり試したことがあるが、木が片手でスパスパ切れるようになるくらい能力が向上したんだよな。


「名付けて……“シフトアップ”!」


こいつをマリンさんにもかけてやる。能力は俺のお墨付きのバフだ。派手にやっちゃってくれ!


「すごい……あなた、本当に6歳……!?」


「マリンさん、このバフには制限時間があります!!今のうちに、攻めてください!援護します!」


「ええ、わかったわ!!はぁぁああッ!」


ザンッ!


マリンさん、さすがだ。俺もサポートに徹さねば。

考えることとしては、“バフを切らさぬこと”、“マリンさんの死角を補うサポート”の二つだ。バカスカ魔法を撃ってガス欠を起こすのもダメだし何もしなさ過ぎてもダメだ。


「FPSゲームやっといてよかったぜ!」





―――大分ヘルハウンドの数が減ってきたな。くそっ、救援はいくら待ってもこない。こんだけヘルハウンドがハウスに入ってりゃ、それも絶望的か。おそらく門番は既に倒されてて、村に向かっちまった大勢のガーディアンズもこっちの様子なんて知ってたとしてもすぐには来れないだろう。というか村もおそらく苦戦してるだろうな……。


パチ


パチパチパチパチ


どこからか、拍手らしき音が響いてきた。


「誰!?」


「失礼。いやいや、なかなかに手こずらせてくれますから、思わず拍手をしてしまいましたよ」


フォンッ!


どこからか突然ワープしてきたのは、全身薄紫色の肌をした、マンガとかでよくある魔物……というよりは魔人って感じの人が姿を現した。


「ま……魔人!?どうしてこんなところに!?」


「くくくく」


ブォンッ


バゴォオン!!


「きゃあああ!!」


い、今何をした?全然見えなかったぞ……魔法か?それともただの攻撃か?


「くっ」


これ以上マリンさんに追撃を許すわけにはいかない。俺は急いで新魔法“ブラスター”で応戦する。連射も利くし低燃費で、爆発してくれるからそこそこ威力が出せる。これでどうだ!?


「ほぉ……無詠唱……これは逸材の予感」


フォンッ!と腕を振るうと、飛ばしていたブラスター何発かを弾き飛ばしてしまった。何よりヤバイのが、俺の魔法を喰らったはずなのにほぼ無傷ってところだ。


「なるほどこれはこれは……」


カツッ、カツッとヒールを鳴らし、俺に近づいてくる。


「リオナちゃんに……近づくなぁーーーッ!!」


マリンさんが立ち上がり、斬りかかる。バフはまだ続いてる!


ガキィン!


魔人は腕を刃へと変形させ、マリンさんの刃を受け止め、鍔迫り合いの状態になった。いいぞ!バフが役に立ってくれてるみたいだ!


「フム……魔力による身体能力の向上検知……なるほど、それもこのリオナという少女がかけた魔法のようですね……興味深い!!」


「べちゃくちゃと……やかましい!!」


すかさずマリンさんは蹴りを放つ。


「おおッ!?」


その蹴りは魔人の顔へとモロに入った。バフ+蹴りの威力により魔人は大きく吹き飛ばされた。


「はぁ……はぁッ……リオナちゃん……エアリスちゃんを連れて逃げて……」


「そんなことをしたら……マリンさん、あなたが!」


その先を言おうとしたところでポンっと頭に手を置かれた。


「大丈夫よ、心配はいらないわ。私がなんとかここであいつを抑えておくから」


無理だ!!やめてくれ、そんなこと!!

くそっ、涙で俺の視界が歪む。


「泣かないで。さあ、エアリスちゃんを連れて逃げるのよ……早く!さっきの部屋には地下を通る避難経路があるの。敷いてある絨毯の下よ。それで王都の外に出ることができるわ」


「……!ぐっ!」


俺はもう一度マリンさんへバフの魔法をかける。


「絶対、死なないでください。バフ、かけておきましたから」


マリンさんはくすっと笑顔で応える。

そしてエアリスのいる部屋へ指をさし、俺に逃げるよう無言で指示する。

俺は涙をぐっとこらえ、エアリスのいる部屋へ全力で走った。


ガチャン!


「エアリス!逃げよう!ここももう長くはもたないから!!」


震えていたエアリスの手を無理やりつかみ、絨毯を引きはがし、無事避難経路へと潜り込んだ。





薄暗い道のり。火の魔法で照らしているからある程度見えるが、どれくらい歩いたかわからない。戦闘による爆発でも起きているのか、地震みたいにゆらゆらと揺れる。


ドン!ガラガラガラ……


「うあっ!」


一番大きな爆発が起きたのだろう。さっきまで歩いていた道が土砂により封鎖された。もう戻ることはできない。


「生き埋めになる前に、急いで外にでよう、エアリス」


こくっとうなずく仕草だけで、彼女は終始震えっぱなしだった。こんなの、6歳の子供には酷な経験だ。





―――しばらく歩くと、ようやく目の前に扉が見えた。


ガチャッと扉をあけ、階段を上り、真上の扉を開けた。


「まぶしい……」


どうやら、外に出れたみたいだ。王都があるであろう方角を見てみると、頂上の王がいる城からも火の手が上がっている。




―――子供の自分でもわかる。この国は、魔物に負けてしまったのだ。




あふれ出そうになる涙をこらえ、俺達は逃げるように走った。村へ。

そう、村にいけば、ガーディアンズが集まってる。父さんがいる。

ピタっと足をとめ、俺はもう一つの魔法を使うことにした。


「エアリス、私にしっかり抱き着いて。捕まってて。離さないでね」


ロケットエンジンの要領だ。爆発による推進力。これで飛んで、一気に村へ向かおう。一度試したことがある。大丈夫だ。風魔法フライよりもおそらく早くとべるはずだ。


「念のため、バリアも展開しておこう」


よしいくぞ。ロケットエンジンだ。映画でもみたことある、ロボットマンみたいな感じで、イメージ……イメージ……。

きてるきてる……3…2…1…。


キィイイン……


「GO!」


ドォオオンッ!!


爆発音とともに、俺は上空へ一気にかけ上げる。


「よしっ!このまま、爆発を繰り返して、一気に村までGOだ!」


ドンッドンッドンッ!!


まるで大砲で発射されたかのように、爆発の力をかりて一気に村の方角へと俺達は吹き飛ばされていった―――。

読んでくださりありがとうございます!

次回へ続きます。

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