第4話
前回までのあらすじ……リオナレッドハート6歳として生を実感している俺。小学校にも通ってる俺だが自分の魔力はいかほどのものかを確かめるべく、父さん付き添いのもと村の外へ出てみたいな~と考えていた。
「いいぞ」
あまりにあっさりした返事だった。もうちょっとこう、反発されるかと思っていたのだが……。
「とまあ実際は、森へ戦いにいくよりも、己の力を知りてぇんなら、ギルドへ行った方が手っ取り早い」
「ギルド?」
父さんは、あーそうか、とつぶやきながらポリポリと頭を掻く。
「村にはギルドがねぇからな。知らねぇのも無理はねぇ。ただ、“ガーディアンズ”ってのはわかるだろ?」
ガーディアンズ……いわゆるなんでも屋。犬の散歩から龍討伐の依頼、王宮での護衛任務まで、あらゆる依頼を請け負う人達のこと。
「そいつらはギルドに認められはじめて、正式にガーディアンズとなる。ギルドでは、技能測定をすることができる、便利な道具なんかがある。魔物狩るよか、よっぽど安全だぜ」
あっさりとした返事だったのはそういう理由だったのか。たしかに、ローリスクでハイリターンだ。是非とも行ってみたい。
「うん……それでいい!それがいい!いきたい!」
父さんはニカッと眩しい笑顔を見せ、
「よーし!んじゃ、いっちょ行くか!!王都までは遠いから、馬車で行くぞ。途中休憩を挟んだりして、つく時間はだいたい2時間後だからな。いまのうちにおやつの準備をいっぱいしとけよ~?」
ツンツンとおでこをつつかれ、笑みを浮かべる。
「うん、わかった!!」
我ながら超いい返事。子供に戻ってからというものの、おやつはどれを食べても美味いんだよなぁ。34歳のあのころは胸やけがやばかったのを思い出す。
エアリスも一緒だから、なんのおやつもっていくかってのを考えるだけでも正直楽しい。
―――俺、父さん、エアリスの三人が馬車前に到着しいよいよだ。
「いってくるぜ~!」
いってらっしゃ~いと母さんたちが手を振り見送ってくれた。俺たちも手を振り返す。しかし2時間か。この世界にはトランプとかスマホアプリとかがないわけだから、どうやって時間つぶすか考えモノか……。と思ってたけど……
「リオナちゃん」
エアリス。いい幼馴染を持ったもんだ。彼女との会話は何時間でも話せそうだ。2時間くらいあっという間だろ。
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―――2時間後、王都到着。ガチでエアリスとの会話は時間を忘れるほどだった。内容は小学1年生くらいの会話だけど。これが大学でも習った、濃縮した時間……ってやつか?
門すらも父さんの顔パスであっさり入れてしまった。
「すごい……」
村からでたことなかったから他の街がどんなものかわからなかったが、やはり王都か。繁栄の極みって感じだ。ヨーロッパ中世の雰囲気で、すげー好き。
「うし、ギルドについたぞ」
3階建ての大きな建物。ここがギルドハウスか。
色んな剣士や魔法使いっぽい人達をたくさん見かける。そしてその人達は、父さんの顔をみるなり、憧れの眼差しを向け挨拶をしていく。
やっぱ父さんってすごかったんだなぁ……。
―中に入るなり、父さんがギルドの役員と話を進めていく。世間話も織り交ぜながら、会話を弾ませていく父さんのコミュニケーション能力たるや。俺が34の時は……いや、考えるだけむなしいからやめよう。
「君が、リオナちゃん?はじめまして。ギルド受付をしてる、マリンよ」
「リオナです!よろしくおねがいします!」
よろしくね、といいながら、握手を求められたので返す。笑顔がよく似合ってるな。
「さっそくだけど……この水晶玉に手をかざしてみてくれるかしら?」
スッと、向こう側が見えそうなくらい透き通った水晶玉を差し出される。
「これは魔力を測るための龍水晶といってね。手をかざし、魔力を送り込むことによって、属性ごとの色に光り輝くの。その光の量は、その人の魔力によって決まるわ。さあ、かざしてみてちょうだい」
「はい……!」
龍水晶にゆっくりと手をかざし、意識を集中させる。
魔力を送る……そのイメージを……。
パアアァァッ…!
水晶は徐々に赤色の光が増していく。火属性だから赤ってことか。
「すごい、どんどん光が……!」
さらに増していく。
「こりゃあ……百人に一人……いや、千人に一人か!?」
さらにさらに増していく。
「まっ、眩しい……!」
と、ここで光が消えた。くっそまぶしかった。
「……ど、どうですか……?」
判定の程は……?いいのか?悪いのか?マリンがプルプル震えている。
「すごい!!6歳にしてこの魔力量……すでにBランクぐらいの魔力を……」
「さすがは俺の娘だ!……よくやったぞ!」
よしよし、と頭を撫でられる。恥ずかしすぎて顔が真っ赤になってしまっているのが自分でもわかる。
まぁしかし、ガーディアンズでもBランクか。ステータスでみたのもBランクだったし、ほぼステータス通りなわけか。んで、Bランクでも結構驚かれてるわけだし、すでに成人してなお且つそこそこ強い人並の力を持ち合わせてるってことだな。
「リオナちゃん、すごい!!あたしもリオナちゃんくらい強くなりたいなぁ」
今日に至るまで自己流魔力トレーニングを怠らなくてよかった。帰ったらエアリスにも教えてあげよう。
「みんな、ありがとう!」
ここで慢心せず、魔力トレーニングをやっていかねば。あと剣術も。帰ったら父さんに稽古つけてもらわねば。一層やる気出てきたぞ!
ガチャンッ!!
「はあっ、はあっ」
盛り上がっているところ、一人の戦士と思われる男が、慌てて入ってくる。息を切らし、傷を負っているのか、血をボトボトと床に垂らしている。
父さんが駆け寄る。
「お、おい、どうした!?って、お前、ヨーゼスじゃねえか」
ヨーゼスは、俺たちの村で暮らしている、自警団の一人。そのヨーゼスが、血まみれで王都まで来るということは……。
「が、ガイさん……大変です……村に……魔物が……大群が押し寄せてきて……」
近くにいたガーディアンズに治癒魔法を受けながら状況を説明するヨーゼス。
「大群だと?しかしあの辺りの魔物は、スライムとかゴブリンとかしかいないはず……俺たちの村の門を突破できるはずが……」
「魔物はスライムやゴブリンだけではありません……デーモンやヘルハウンド……この辺りに生息するはずのない魔物までが……」
父さんは顔を青ざめる。
「くそっ……こうしちゃいられねぇ……リオナ、エアリス。お前たちはこの王都に残っていてくれ。俺は村に向かう。マリン、二人を頼めるか?」
ヨーゼスさんが父さんに助けを求めるくらいだ。俺たちが行ったところで邪魔になるだけだろう。
「やだ!あたしたちもいく!!」
案の定、エアリスがごね始めた。わかるさその気持ち。俺も、ごねたいさ。
「だめだ!ここは俺たち、ガーディアンズにまかせろ。大丈夫、大丈夫だ」
「エアリス、父さんの言う通り、ここに残ろう?私達が行っても、父さんの邪魔になるだけだよ……」
「すまねぇな、リオナ。エアリス、わかってくれ」
エアリスの頭を撫で、俺は抱きしめた。不安で、彼女の体は震えていた。
周囲のガーディアンズも、父さんのもとへ集まり、救援として志願してくれている。
「ガイさん、風魔法“フライ”を使えば、現地まで30分で着きます」
「ありがてえ。早速だが現地へ向かう。敵はおそらく生半可の相手ではないだろう。一人でも多くの人間が必要だ。頼む。みんな、力を貸してくれ」
頭を下げる父さんに、周囲のガーディアンズは喜んで応える。
ありがとう……父さんはそうつぶやくと、
「行くぞみんな、魔物から村を救う。俺の後に続けえ!!」
読んでくれてありがとうございます!
次回へ続きます。