第1話
俺は赤坂リオ。
息苦しい時代を生きるごくごく平凡な社会の歯車。
皆と同じ空気を吸い、働き、汗を流し、泥のように眠る。
そんな日々を毎日繰り返している。
「疲れた」
そんな言葉しか出てこない。精神的に限界がきている。
俺だってこんな奴隷みたいな生活をしたいわけじゃない。かつては夢とかそういう曖昧な、だけど心が湧き踊る希望に満ちたものももっていた。
しかしそれらは、吸い込む排ガスや上司からの重圧などにより、とうの昔に消え失せた。
「この世界で生きている意味があるのだろうか」
死なないためには金がいる。金を稼ぐために死ぬ努力をする。人間とは不可解な生きモノだ。俺もその一人であるわけだから余計意味が分からない。矛盾だらけだ。
そうやって考えて生きているうちに、ついに起こった、ある日の出来事。
雨天。バイクを走らせていたところを派手に転び、そのまま後方から走ってきた車に撥ねられ、俺はあっけなく死んだ。34だった。
「これが死……なんか……あっけねぇな」
救急車で運ばれていく俺の死体をよそに、俺の魂はそのまま天空へと昇っていった。悔いなんかあるはずねぇ。どうせ心はすでに死んでいたからな。
―――しばらく天を昇っていくと……降っていた雨が止んでいき、やがて晴れ渡る空がまぶしい、雲の上についた。
「っと……歩けるのか、この雲」
テレビやマンガやゲームでしか見たことない、雲の上の世界。いわば天上界……てやつか?
果てしなく広がる雲の世界……いや、雲ばっかで見づらかったが、よくみると奥に宮殿みたいなのが見えた。
「はてさて、俺の魂の行方はどっちだろうな。天国か、地獄か……ははっ」
よくある話を思い出す。人は罰の数で魂の行き先が決まるとかなんとか……宗教話はわかんねぇけど。
ひとまずは宮殿に向かってみっか。
―――しばらく歩き、やがて宮殿へとたどり着く。
荘厳の一言だ。なんかどっかのゲームにあったような、神々が住んでそうな感じ。
奥へと歩を進めていくと、神秘的な光が天から差し込む大広間。そしてその真ん中にぽつんと一人―――。
「おかえりなさい、旅人」
……まるで俺の帰りを待つ母のように……その女は出迎える。
「……はじめてきた場所なのに、おかえり、なのか?」
「はじめてではありません。あなたはかつて、ここにいました。いえ、全ての生きとし生けるものが、かつてはここにいたのです」
わけがわからん……言ってる内容がゲームの中かと疑うほどだ。
「あれか?魂の始発点であり、終着点ってことか?しらんけど」
「その通りです」
女はフヨフヨと浮遊しながらこちらへ近づいてくる。
「そして、あなたが終わりを迎えた今、ここが始発点となります」
???まったくわけわからんが……ゲームとかマンガで言う……
「それって、転生……ってこと?」
こくりとうなずき、女は肯定する。
「なおかつあなたは人間界を全うできず、途中退場を余儀なくされた者。そして転生するに値する良き魂の持ち主。
あなたは転生するにあたり……別の人間界にて赤子として生まれることができます」
赤子か……そういや前の人生は踏んだり蹴ったりの人生だったっけ。
「ん?そういや赤子になるのはわかったが、今の記憶とかって持ち込めたりできるのか?」
「お望みとあらば、そういたしましょう。あなたの魂は選ばれし魂ですから」
マジか……だとしたらアツイなそりゃ……!
「あなたの次の人生、あなた自身が決めることができるのは、“容姿”、“性別”、“名前”、“特殊能力”です」
フォンッ…と、なにやらゲームでみたことあるメニュー画面みたいなのが出てきた。
「な、なんだこれ!?」
「あなたの存在意識にあるものです。私にはただの本にしか見えませんが……あなたには別のものに見えているようですね。その本を差し上げましょう。次のあなたの人生を支えてくれることでしょう」
そういうと、メニュー画面を俺の胸の中へと仕舞っていく。
「呼び出したい時は、あなたが呼び出したいという気持ちと、使用したい項目を思い浮かべ、口に出してみてください」
呼び出したいという気持ち……使用したい項目……
「とりあえず……メニュー」
フォンッ!と眼前に先ほどのメニュー画面がでてくる。とくになにかが書かれているわけじゃないが。
「できましたね。ではいよいよ、あなた自身の創造と移りましょう」
メニュー画面が2メートル級に拡大され、その画面には人の姿が映ってる。やべーぞこれ、オンラインゲームとかでよくみた、キャラクリエイト画面じゃねぇか!?
「それではごゆるりと。創造を終え、準備が完了したら私に声をかけてください」
すげーすげー!!こんなところでキャラクリさせてもらえるったぁマジで転生ってすげー!しかもなんだこれ……パーツもめちゃくちゃ豊富じゃねーか!
「こいつぁ、前の人生では決して味わえなかった興奮……マジで燃えてきた!!次の人生だ!めっちゃ気合いれてやるぜ!!」
読んでくださってありがとうございました!
好き勝手書いてます!