34話 お礼
「もうミユ、心配したのよ!!急にはぐれて!!」
「ごめんなさいお姉ちゃん・・・・・・。でも、春馬さんがね私をここまで連れてきてくれたから、怪我とはしてないから安心して」
ミユの言葉を聞いて、初めて俺の存在に気が付いた彼女は深々と頭を下げてきた。
「本当に、私の妹がお世話になりました。本当に感謝します」
「いえいえ、俺はそんな対したことはしてませんよ。それより、お二人が再会できて良かったです」
改めて俺と向かい合った彼女は、ぜひお礼をと言ってきた。普通なら用事があると言い断るのだが、今日はそんなことは出来なかった。
それは、何故かと言うと・・・・・・。
「・・・・・・私たちと、お茶をしよう春馬お兄ちゃん?」
「うっ・・・・・・・・・」
今まで、彼女と抱き合っていたミユがいつの間にか俺の元に来ており、涙目をしながら俺の服の裾を引っ張り上目づかいでそう言ってきた。
幼い女の子+涙目+服の裾を引っ張る+上目づかい+お兄ちゃん呼びをされてしまったら、いくらロリコンでなくってもOKをしてしまうのが男だろう。
「分かった、少しだけなら時間もあるし、お茶ぐらいなら大丈夫かな」
「やったー!!お兄ちゃんとお茶できる!!」
「では、近くに私行きつけの美味しい紅茶を出す、喫茶店があるのでそちらに行きましょう」
「分かりました」
俺が、ミユのあまりの可愛さに思わずOKを出すと、彼女は近くに自身のオススメの喫茶店があると言うことで俺はミユと手を繋いで彼女の後を追い、彼女オススメの喫茶店に向かった。
「どう?このお店の紅茶美味しいでしょう?」
「はい、本当に美味しいですねこの紅茶は」
彼女オススメの喫茶店「サクラ」の紅茶はとても美味しい品物だった。因みにミユはまだ紅茶を飲めない年齢のなのでジュースとケーキを頼み、今はケーキを美味しいそうに食べている。
やはり、ミユはケーキを食べている姿も可愛いな。うん。
「あっ・・・・・・、そう言えば、まだ名前を名乗ってなかったですね。改めて、申し遅れましたミユの姉のミユキと申します」
「あっ・・・・・・、えーと・・・・・・、俺は音無春馬と言います。性が音無で名が春馬です」
まだ、お互い自己紹介してなかったため、紅茶をすすりながら、お互い名前を名乗り、自己紹介を済ませた。とゆうか、初めて会った時から思っていたけど、本当にミユキはしっかりとした言葉遣いをしてるな。
「ミユキは、どんな用事でここに?」
「はい。実は私の王都に関する仕事の関係で数ヶ月間こちらで住むことになってしまったので、長い期間ミユを一人にするのも危険だと思い、一緒に連れてきたんです。今日は久しぶりの休暇を貰ったので、ミユと食事でもと思っていたのですが・・・・・・、あんなことになってしまって・・・・・・」
「なるほど、なんか色々お疲れ様です」
お互い自己紹介を済ませ、早速話のネタが無くなってしまい、苦し紛れに「ミユキはどんな用事でここに?」と聞いてみた。
ミユキが言うには、自身の仕事の都合で王都に数ヶ月間滞在する事になってしまったらしく、ミユを一人家にするのは危険と判断し、一緒に王都を訪れたらしい。
なんか、色々大変だな・・・・・・。ミユキも・・・・・・。
ミユをミユキの元に連れて行き、そのお礼として喫茶店「サクラ」に連れて行かれ、ミユキに紅茶を奢って貰ってから数十分が経ち。そろそろ、みんなとの集合時間が近づいていることに気づき、席を立ち上がり喫茶店を後にしようとした。
「あっ、じゃ、そろそろ仲間との集合時間になったので、俺はこれで失礼しますね」
「そうですか。それでは、しょうがないですね。では、話の続きはまたの機会ということで」
「はい、そうですね。それでは、しつ─────」
ミユキに紅茶のお礼を言い、席を立ち上がろうとしたその瞬間、俺の服の裾を誰が引っ張った感覚を感じた。
視線を自分の腰元に移すと、先程まで美味しいそうなケーキを食べていたミユが、涙目で俺の服の裾を引っ張っていた。
「え・・・えーと、ミユちゃん、そろそろ離してくれないかな?」
「ミユ離しなさい!!春馬さんが困ってるでしょ!?」
「ヤダ!!私はもっと、春馬さんと一緒にいたい!!」
「う〜ん、そう言われてもな・・・・・・」
俺とミユキがお互い服の裾から手を離してもらうように言ってみたが、ミユは泣きながら首を横に振り、それを拒否した。
いくら、説得しても俺の服の裾から手を離してくれないミユに対して、どうしようかと考えていると・・・
ある、名案が頭の中に浮かんできた。よしっ、アレをやってみるか・・・・・・。
「それじゃ、ミユ。約束の指切りをしようか」
「ゆ・・・・・・指切り?」
「うん。指切り。こうやって、小指同士を絡ませて、約束するんだ。そうすれば、また俺と会えるから・・・」
「本当に?」
「あぁ、本当だ。だから、俺の服の裾から手を離してくれ」
「う・・・・・・うん、分かった」
俺はミユに指切りをすることを提案した。指切りとは日本で誰しもがやっていた約束をする時にするおまじないみたいなものだ。
この指切りの提案に、今まで頑として俺の服の裾から手を離さなかったミユは遂に服の裾から手を離してくれた。
『指切りげんまん、嘘ついたら、針を飲む、指切った』
昔、日本でやった通りに、ミユと指切りげんまんをし、俺はミユキに改めて紅茶のお礼をし、二人にお別れの言葉を言い、喫茶店を後にした。
因みに今「錬金」で創り出した、腕時計を確認してみると、集合時間はとうに過ぎていた。
まずいな・・・・・・。これじゃ、集合した瞬間にシリカにボコボコにされるな。うん。




