14話 救助
エミリア町を出発してから、いくつかの町を通り過ぎて3日が経った。
手元にある地図で現在地を確認すると丁度王都まで半分を過ぎたようだ。
現在馭者台に座っているのはシリカだ。リーフェスは長時間馭者をやっていたためか疲労がたまり熟睡している。シルは地図を見ながらシリカのナビ係をしていた。
そして、俺と言えば何もすることが無いため、「スコープ」で近くに魔物がいないか確認していた。因みにこの魔法は壁などの障害物があっても見えるため温泉や宿屋では絶対に使うなと女性陣から釘を刺されている。とゆうかリーフェスは兎も角、シリカとシルは結構長い付き合いなのに俺のこと信じてないのかよ・・・。なんかショックだな・・・。
そんなことを考えながら「スコープ」で1キロ先の状況を確認していると、高級そうな馬車、数人の兵士、そしてそれらを囲んでいる武装したウルフボーイの姿が見えた。更によく見ると馬車の近くには数人の兵士が血を流し倒れていた。兵士たちの状況を見ると馬車の中にいる誰かを守っているようだった。
「シリカ。前方で数人の人が魔物に襲われている。手を遅れになる前に急ごう」
「分かったわ」
俺はそうシリカに声をかける。シリカはそう答えると馬に鞭を入れ馬車のスピードを上げた。馬車が近づくによって馬車の中の状況も見えるようになった。
どうやら、馬車の中には子どもと30代ぐらいの女性と老人が乗っていた。子どもは無傷のようだったが、女性は腕を負傷しており血を流し続けていた。そして最も重症なのが老人だ。老人は胸に怪我を負っており今にも息を引き取りそうだ。これは、早くしないと危うい状況だ。
「シル、リーフェス。ここから、ウルフボーイに向けて魔法を放って」
「分かりました。炎よ 球となり敵を撃て ファイアーボール」
「了解。氷よ 聖なる槍となれ スノースピアー」
俺はシルとリーフェスに荷台から魔法を放つよう指示を出した。シルとリーフェスの魔法は数十メートル先にいるウルフボーイに命中した。
魔法が命中したのをきっかけに俺とシリカは馬車をシルたちに預けウルフボーイの前に飛び降りた。
「シャァァァァ!!」
ウルフボーイの1匹が俺に気づき、爪を立て飛び掛ってきた。丁度いい、ここで新しく習得した魔法の実験をしてみよう。
「チェーン」
俺がそう呟くと、ウルフボーイの周りに魔法陣が現れそこから鎖が飛び出し、ウルフボーイを締め付けそのまま絞め殺した。これが新しく俺が習得した魔法の1つ「チェーン」だ。能力はウルフボーイのように鎖の力を強めて絞め殺すこともでき、力を弱めれば敵を捕縛することも出来る。この鎖は絶対にきれない鎖のため結構無敵な魔法だ。
1匹目のウルフボーイを倒した後、2匹目のウルフボーイが飛び掛ってきた。俺はそのウルフボーイの攻撃を避けハンドガンで2発の弾丸をウルフボーイの横腹に叩き込んだ。それから、3匹目のウルフボーイがシリカに襲いかかったがシリカはウルフボーイの攻撃を2本の短剣で受け止めた後、素早くウルフボーイの懐に入り込み腹部を切り裂きトドメを刺した。最後に4匹目のウルフボーイが俺たちの視覚から襲いかかってきたが、俺たちの目の前を氷の槍が通り過ぎ、ウルフボーイの胸を貫いた。どうやら、シルが近くに馬車を止めそこからリーフェスが氷魔法で攻撃に参加してくれたようだ。
4匹目のウルフボーイを片付け、他にもいるかも知れないため「スコープ」で辺りを探索してみたが魔物の気配は一切無かった。
「どうやら、もう居ないようだな。3人は怪我とかしてない?」
「えぇ、大丈夫よ」
「こっちは、無事よ」
何とか俺たち4人は一切怪我を負わずに事なきを得たが、ウルフボーイに襲われていた一行の被害は大きかった。俺は近くにいた腕を負傷している兵士に声をかけた。
「大丈夫ですか?そちらの被害は?」
「護衛の8人の内3人がやられて、2人が重症。残りの3人が軽傷だ。後は馬車の中に軽傷者が1人、重症者が1人いる」
腕を負傷している兵士は悔しそうに拳を握り締めながら俺に被害の状況を詳しく説明してくれた。余程辛かったんだろう。俺たちがもっと早く到着していれば被害は最小限に収められていただろう。だが、今更後悔しても現実は変わらない。今はこの現実を受け入れよう。
「誰か!!誰かいませんの!!爺やが爺やが!!」
被害の状況を確認していると、馬車の中から女の子の声が聞こえてきた。俺たちは一斉馬車の方向を振り向き、兵士の1人が馬車の扉を開けると12、3歳の少女が泣き叫んでいた。
馬車に近寄ると老人が横たわり、胸から大量の血を流していた。これは、今すぐ治療をしないと駄目だ。
「誰か、この中で治癒魔法使える人はいますか?」
「・・・・・・悪いが、この中には治癒魔法を使える者はいない。ここにいる者は全員攻撃専門の奴らなんだ」
「くそっ、どうすれば・・・・・・」
「春馬くん、あれを使ってみるのは!?」
急いで俺はこの中に治癒魔法の使い手がいないか確認を取ったが、残念ながら1人も治癒魔法を使える者はいなかった。
絶望的な状況に頭を抱える、俺にシルがある1つの提案をしてきた。その提案とは俺が3日前作り出した銃弾の1つ「ヒール弾」を使うことだ。
確かにあれを使えればこの老人の怪我を治すことができるかもしれない。よしっ、使ってみよう。
「この人は俺が救います」
俺は兵士たちをどかせ、老人の側に駆け寄り、胸に刺さっている槍の部分を引っこ抜き、ヒール弾を1発老人の胸に命中させた。
「爺や!!お前何故爺やを撃ったんだ!!」
「お・・・・・・お嬢様、落ち着いてください」
「爺や?無事なのか?」
「はい、どうやらあの銃弾のお陰で傷が治ったようです」
「じ・・・爺や!!」
突然老人を撃った俺に飛びつこうとする少女を先程まで重症だった老人が止めた。どうやら、ヒール弾が効いたようだ。良かった効いてくれて、これで駄目だったらもう打つ手が無かったしね。
老人が無事なのを知ると少女は老人に抱きつき、わんわん涙を流しながら泣きじゃくっていた。今までの様子を見ていた兵士と馬車の中にいた女性はあまりの出来事に驚いていた様子だった。
何とか1人の人間の命を救えた俺たちは安堵の溜息と共に地面に座り込んだ。
本当に良かった1人の人間の命を救えて。本当に。




