10話 ロールケーキ
シリカと合流して宿屋に戻ると、宿屋の食堂でアヤさんと見慣れない女性が話していた。歳はおおよそアヤさんと同じくらいだろう。髪型は軽いウェーブがかかった黒髪。職業は白いエプロンをしていることから料理関係だろう。
2人は向かいあわせでテーブルに座っていた。2人の前にはそれぞれコーヒーと紅茶が置かれていた。2人は飲みながら難しい顔で何かを話していた。
「ああ、お帰りみんな。あっ、ねぇちょっと、いいかな?」
「どうしたんですか?」
俺たちに、気づいたアヤさんは声をかけてきた。そして、アヤさんは俺たちの前に彼女を連れてきた。
「この子はカナエって言って、近くで「パシット」っていう喫茶店を経営してるんだけど・・・・・・」
「パシット?ああ〜、昨日行きましたよ。とても良いお店でした」
どうやら、昨日打ち上げをした喫茶店はカナエさんのお店だったらしい。本当に店内の雰囲気も店員さんの態度も良かったし、なによりサンドイッチとミルクがとても美味しかった。また、行ってみたい店だ。
「それで、アヤさんたちは何を話してたんですか?」
「実は、カナエの店は最近客不足で苦労してるの。だから、何か新しいメニューを出そうと話し合ってるんだけど、何も思い浮かばなくってさ。だから、アナタたちの意見を聞こうかなって思って」
「何か良いアイディアがあったら教えてください。お願いします」
カナヲさんはそう言って歳下の俺たちに頭を下げた。後ろの2人を見ると既に手伝う気まんまんだった。
「はあ・・・・・。いいですよ、俺たちなら力になります」
「あ・・・ありがとうございます!」
女性に頭を下げられお願いされてるし、断る訳にもいかない。それに、断ったらシリカとシルから猛バッシングをくらうだろう。
まぁ、力になれるか分からないけど。
「で、どんな物を出したいとか決まってるんですか?」
「はい。事前にお客さんたちから要望を聞いて、軽く食べられるデザートが欲しいと言われました」
「軽く食べられるデザートか・・・。じゃ、やっぱりロールケーキとかじゃないですが?」
少し考えたが思い浮かんだアイディアは恥ずかしながら1つしかなかった。
「ロールケーキ?」
「はい、ロールケーキです」
うん?どうしたんだ?みんなそんな表情をして。もしかして、この世界にはロールケーキはないのか。でも有り得るか、実際ロールケーキに近いケーキも見たことないし。
「ロールケーキって、一体どんな料理なんですか?」
「えーと、ロールケーキって言うのはケーキの一種でスポンジ生地にクリーム、果物、ジャムなどを乗せて巻いたものです。聞いたことありません?」
「いえ、聞いたことはありません」
「えーと、ケーキみたいなやつなんですが・・・。もしかして、ケーキも知りません?」
「はい、それも聞いたことありません」
一応俺なりにロールケーキのことを説明したが、イマイチ分からないらしい。それに、ケーキも知らなかったようだ。
「作り方って分かりますか?ロールケーキとケーキの」
「う〜ん、まぁ分かりますよ」
カナエさんの質問に俺はそう答えた。俺はこう見ても高校では家庭科部に所属していて、部活でケーキやロールケーキを沢山作っていたのだ。 そのため、完全に作り方を覚えてしまっていた。
「じゃ、今から俺が言う材料を持ってきてください」
「はい、分かりました」
「卵3個、砂糖80g、薄力粉50g、牛乳、サラダ油大さじ1、水大さじ1、生クリーム100g、粉糖、25cm×20cmシート1枚。えーと、この中で用意できない物とかあります?」
「えーと、生クリームが用意できません」
「了解。じゃ、それは俺が今から調達するから待っててください」
どうやら、この世界には生クリームは存在しないらしい。そのため「錬金」で生クリームを作ることにした。
錬金で生ものまで作れるか分からなかったが、何とか作れてホッとした。
「えっ、今どうやって・・・?」
「あ・・・。えーと、まぁ、俺の魔法の1つですよ」
俺の能力に驚いたカナエさんが声を上げたが、何とか濁すことに成功した。
「じゃ、シル今から俺が作り方を口頭で説明するから、この紙に書いてくれない」
「はい、分かりました」
俺は文字を書けないため、シルに変わりに俺が口で言った作り方を書いてもらうことにした。因みに調理するのはカナエさんだ。俺が調理してもいいんだが、ここはこれから作る人が作るのがいいと思いカナエさんに作ってもらうことにした。もちろん、力が必要な作業は俺も手伝うつもりだ。
大体形が出来上がると最後に、用意した25cm×20cmシートでまるめた。本来は冷蔵庫に入れるのだが冷蔵庫が無いため氷魔法が使える冒険者を見つけ、お願いをし冷やしてもらうことにした。
それから、30分間放置した後。シートを剥がして1枚のお皿にロールケーキをうつし、人数分包丁で切って分けた。あっ、もちろん氷魔法で手伝ってくれた冒険者の分もあるから。
まず、最初に味見をするためフォークで一口食べてみた。少し味は違ったが、ロールケーキと言ってもいい物だった。味が良かったためカナエさんたちに差し出した。彼女たちは一口食べて目を見開き、笑顔をこぼした。
「お・・・・・・美味しい!?」
どうやら、味は良かったみたいだ。安心安心。
「なにこれ、ふわふわしてて美味しいわ!!」
「ねぇ、本当に美味しわ!!」
「こんな、デザートがあったなんて知りませんでした」
「確かに美味しいわね。アナタの頼みを聞いて良かったわ」
アヤさんを始め全員がこのロールケーキを気に入ってくれたようだった。自分的にはもう少し美味しくできたのだが・・・。まぁ喜んでくれればそれでいいか。
それはともかく、このロールケーキを作るにあたって一つ問題がある。それは、カナエさんのお店で氷魔法を使える人がいるかどうかだった。
だが、この心配は全然だった。カナエが言うには従業員の1人が氷魔法を使えるらしい。なら大丈夫だな。
「あとは、ケーキなんですけど、今は時間が無いのでこれに作り方と材料をうつしておいたので、用意できない材料があったら言ってください。今用意するので」
「大丈夫ですけど。しいて言うなら生クリームが欲しいですね」
「分かりました、生クリームですね」
どうやら、生クリームが欲しいようで、カナエさんは生クリームを要望してきた。俺は急いで生クリームを2つ作り出した。
「2つも生クリームありがとうございます!今から帰って作ってみたいと思います!!」
カナエさんはケーキを作ってみたいと言いお礼を言って店に戻って行った。
残された俺たちはロールケーキをデザートに昼食を摂ることにした。
因みに今日の昼食メニューをは、パンとシチューとサラダだった。特にシチューはとても美味しく3杯もおかわりしてしまった。




