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異世界でオッサンは勇者になれるか?  作者: 高戸 賢二
8章 異世界珍道中
89/229

89話 珍道中

朝になりました。

今日もすがすがしい朝です。

朝焼けが綺麗。

結界は風も防ぐようで、テントは飛ばずに済みました。

テントいらなくないですか?

でもテントがないと、私の寝顔が丸見えなので、テントはあった方がいいですかね。

というか、テントの張り方、もっと上手にできませんか?

リディさんは旅慣れてるはずですよ。

リディさんでも、こんなに大きなテントは張ったことがないということでしょうか?


彼は座ったまま、熟睡しています。

見張りの意味は?

というか、結界を張っているなら見張りは必要ないのでは?

・・・言いませんよ。

だっていっしょに寝たくはありませんから。


彼を起こして、私は歩き出します。

「あれ? 朝食はないの?」

昨夜で持ってきた食料は無くなりましたけど?

「あー。 食べ物がないのか。 取ってくるよ」

彼は消えました。

また城に戻って補充してくるのでしょう。

ちょいちょい城に帰る旅って、何なんでしょうね?


彼が戻った後、朝食を食べて、歩き出しました。

今日で3日目ですか。

というか、もう3日もお風呂に入ってませんけど。

あ~お風呂に入りたい。

せめて水浴びでも。


彼はもっとひどいでしょう。

黒のフルメタルアーマーを身に着けているのですから。

汗がすごいです。

・・・近寄りたくありません。


彼は鈍感です。

私しか見えていませんが、私の気持ちには気づきません。

もう3日です。

旅立ってからじゃありません。

お風呂に入ってない日数です。

・・・同じかもしれませんが。


無言で歩き続けて、すでにお日様は高いところにあります。

振り返ると、まだ城は見えています。

こんなペースで歩いていたら、目的地に着くのはいつになることやら・・・

そういえば、どこに向かっているんでしょうね?

私は地理とか何も記憶にないので、ここがどこかもわかっていないのですが。


「そろそろ狩りに行ってきます。 君はここで待ってて」

そういうと彼は私の周りに結界を張ります。

結界の中は無風なので、あまり居心地がよくないんですけどね。

文句は言いません。

彼は私のためを思って、やってくれているのですから。

人の好意に文句をつけてはいけません。

ただ、彼の好意はズレてるんですよね。

子供のやることだから仕方ない、と自分に言い聞かせてます。


彼が小さな弓矢を持って、どこかに消えていきました。

狩場を変えるみたいです。

そりゃあ、この辺りの大草原では何も取れないでしょう。

まだ彼は一度も狩りを成功していません。

魔物を倒すほど強いのに。

何で慣れない弓矢を使うのでしょうか?

魔物を倒すよりも動物を狩る方が簡単だと思うのですが。

素人考えなのでしょうか?

というより、狩りは弓矢でなきゃダメだとか思っていませんか?


日が傾いたころ帰ってきた彼は・・・手ぶらでした。

今日もダメだったのですか。

・・・はあ。

美味しいお肉、食べたかった。

仕方がないので、今夜はお城で保存してある狼肉で我慢しましょう。

まずは彼を労ってあげましょうか。

《狩りは明日、また頑張りましょう》

がっくりうなだれている彼の頭を撫でてあげます。

「はいっ!!」

いい返事です。


《じゃあ、帰りますよ》

「はいっ!! い、いや・・・でも・・・」

私は彼を睨みます。

《帰って食事をして、お風呂に入ります》

彼はなかなか返事をしません。

あなただって、本当は帰りたいんでしょ?

《私が汚れたままでも構わないというのですか?》

「あ・・・」

《あなたも相当汚れてますよ》

彼は私の念話にハッとした後で、自分の臭いを嗅ごうとしています。

フルメタルアーマーを着たままではわからないでしょうに。


そのことに気が付いた彼が、上半身の鎧を外したところ、

もわっ・・・

私は思わず鼻をつまみました。

狩りで相変わらず動物を爆発させていたのでしょう。

彼の体臭と動物の返り血の臭いが混ざった、物凄い悪臭です。

彼でさえも自分の体臭にむせています。

「げほっ、げほっ・・・すみません・・・」

・・・自分の体臭に、そんなに咳き込む人を初めて見ました。

記憶はありませんが。


《さあ、帰りますよ。 あなたは先にお風呂に入りなさい。 私はその間に食事の用意をしますから》

「え・・・いいの?」

彼は驚いたように私を見ます。

《そんなくさいままで、私の料理を食べる気ですか?》

さらに彼が驚いています。

自分の臭いを嗅いでは咽ていました。

そんなにくさかったら、料理の味もわからなくなるでしょ?

はあ・・・

本当に鈍い人・・・


彼の能力で3日ぶりに城に戻りました。

すごく懐かしい感じがします。

たった3日なのに。

彼をお風呂に追いやり、私は厨房で食事の準備です。

狼のお肉は保存庫に入っています。

保存庫も魔道具で、中のものは魔力がある限り腐ることはありません。

原理とかはさっぱりわかりませんが、これも初代王が作ったとか。

初代王って、本当にすごいお方だったんですね。

改めて尊敬します。


できた料理はいつものドームの部屋に持っていきます。

先に食べるのは申し訳ないので、一応は彼を待つことにしましょうか。

しばらくしてから、彼が現れました。

「探しちゃったよ。 何で食堂で食べないの?」

ここがいいからに決まってるじゃないですか。

私はこの部屋が一番好きで、落ち着くんですから。


それよりも気になることが。

《ちゃんとお風呂のお湯を入れ替えたんでしょうね?》

ハッと驚く彼の顔。

・・・やっぱり気が利きませんね。

自分がどれだけ汚れてたか、気が付いてなかったのかしら。

「す、すぐに入れ替えてきます!」

彼は走って扉から出ていきました。

彼は急ぐ時ほど、何故か走ります。

自分の能力の方が早そうなのに。

そして、またもや扉は開けっ放しです。

・・・学習しないですね。

「先に食べてて!」

遠くから彼が言ってるようです。

念話として届きました。

・・・少しは学習しているようです。


食事の後、彼にお風呂を沸かしてもらい、お風呂に入ります。

は~、極楽極楽。

今日はお風呂に香りのいい果実を入れました。

育ちすぎて食べられない果実を入れてみたんです。

大正解。

気持ちいい~♡


「よし、お風呂も入ったし、戻ろうか」

彼はフルメタルアーマーに着替えていました。

はあ?

これから寝に戻るんですか?

寝るだけなら、このまま城のベッドで寝ればよくないですか?

戻るって言ったって、まだテントも立てていないんですよ。

外はもう真っ暗なのに。

《この暗闇の中で、あなたはテントを立てるんですか?》

彼は驚いています。

気が付いていなかったみたいです。


3日ぶりにベッドで寝ました。

やっぱりベッドがいいですね。

ついこの前まで苔むした石畳で直接寝ていたはずなんですが。


翌朝、私たちは昨日の場所へ行きました。

まだ草原は超えていません。

でもお風呂に入って、ベッドで寝て、リフレッシュできました。

彼は大きなリュックを背負い、

「さあ、行こうか」

と歩き出します。

彼も元気を回復できたみたいです。

というか、こんなに頻繁に城に戻るなら、大きなリュックなんていらなくないですか?


その日の夕暮時、彼が野営の準備を始めたので、

《帰りますよ》

と念話しました。

「え~っ 今日も帰るの?」

彼は不服そうです。

でもあなたの能力で簡単に城に戻れるんですよね?

あなただって、忘れ物を取りにちょいちょい城に帰ってるじゃないですか。

こんな壊れそうなテントでお風呂に入らずに寝るよりも、城に戻って食事して、お風呂に入って、ベッドで寝た方が疲れも取れますよ?

めんどくさいから説明しませんけど。

それくらい気づかないのかしら?

《帰ります!!》

「・・・はい」

渋々と言った感じの返事です。

あなただけ一人で野営してもいいんですよ?

・・・かわいそうだから言いませんけど。

代わりに頭を撫でてあげます。

彼は嬉しそうです。


翌日は旅に戻らずに、溜まっていた洗濯と、畑の世話をしました。

たった4日なのに洗濯物が山のようです。

ベッドのシーツも洗濯です。

3日ぶりにベッドで寝たときに、ちょっとカビ臭かったんです。

今度から、自分の洗濯ものは彼に自分でやってもらいましょう。

彼のは特に臭いがひどいですから。

畑も雑草がたくさん生えてます。

草取りも彼にやってもらいましょうかね。


翌日から私たちの旅はこうなりました。

城での朝食のあと、厨房で食器を洗ってから前日の位置に戻って歩き、夕暮れに城に戻り、お風呂、夕食、ベッドで寝る。

5日目は城で、洗濯、掃除、畑仕事、旅はお休み。

結構、快適な旅になりました。

・・・旅と言えるのでしょうか?




ようやく大草原を抜けて、森が見えてきました。

もう2季になりますかね。

暑くなってきました。

暑い時期でも、日陰の多い森なら歩くのも悪くありません。

森には動物がたくさんいるはずです。

そろそろ狩りを成功させましょう。

たまにはかっこいいところ、見せてくださいね。

言っておきますが、好きになることはないですよ。

私にはサラン様という一生を捧げた人がいるんですから。

・・・美味しいお肉が食べたいんです。




ムラキはまだリディの体に慣れていません。

他人の体臭のように感じてしまうので、咽てしまいます。



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