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異世界でオッサンは勇者になれるか?  作者: 高戸 賢二
5章 異世界人形ムラキ
51/229

51話 スカーダイの王女(挿絵付)

挿絵が付きます



夜明けと共に野営地を出発した俺たちは、まだ朝と言えるうちにスカーダイに着くことができた。

街の外壁の門は開いていて、自由に出入りすることが出きる。

門番もいないのだから当然か。

それでも辺りを伺い、慎重にスカーダイの元王都に足を踏み入れた。


街並みは大した損傷もなく、比較的きれいに残っているが、人の気配はない。

やはり魔素はない。

ネズミの視線も、今は感じられない。

ヘレンが魔力感知をしながら城へと進む。

微細な魔力をも見逃さないように。

どうやら大丈夫なようだ。

俺たちは何事もなく、スカーダイ城の城壁までたどり着いた。


さて、ここからどうやって中に入ろうか。

俺はスキルでどこからでも中に入れる。

レイラも空中闊歩で城壁の上に上ってしまえば、中庭から中に入れる。

さすがに土魔法じゃうるさいから、俺が踏み台だな。

結局、俺とレイラが城壁の上に登ったあと、リディとヘレンをロープで引き上げることにした。

表側は目立つので、城の裏手に回る。


確か中庭に面した扉で、魔物に壊されたところがあったはずだ。

・・・見つけた。

城壁に上がった3人を、俺は壊れた扉のある中庭へ導いた。

この中庭で、アーチャを見たんだ。

彼女が扉に鍵をかけてなければ、ここから彼女の元にたどり着けるはずだ。


俺たちは4人で纏まって行動することにした。

敵が潜んでいるかもしれないからだ。

マネキンなら、どこにでも突然現れるだろう。

手分けしたら各個撃破のマトにされてしまう。


先頭を察知力のあるヘレン。

2番手は攻撃力のあるレイラ。

3番手はどこからでも奇襲が出きる俺。

殿は防御力のあるリディだ。


ヘレンは城の下の方に向かっていった。

王族なら上の方に住むんじゃないのか?

それとも彼女は監禁されているのだろうか?

それもあり得るよな。

中庭に出れたんなら監禁はないか。

色々考えながら、ヘレンのあとについていく。

結構階段を下りた。

すでに地下に入っているだろう。

暗くじめじめしている階段を俺たちは降りていく。


ヘレンが扉の前で止まった。

中に気配があるらしい。

俺が時間停止スキルで中に入ることになった。

中にいたのは昨日の綺麗な女性だ。

一度リディたちの元に戻ることにした。


「中にアーチャがいた。 どうする?」

俺の問いにリディが間髪入れずに答えた。

「接触して話しかけてみてくれ。 アーチャが敵だったとしてもケンなら逃げることはできるだろ?」

「大きな魔力は感じないわ。 ケンジィよりもずっと小さな魔力。 魔物じゃないことは確かよ」

アーチャは俺より魔力が小さいのか。

だったら大丈夫かな。


俺は時間停止で扉の中に入った。

ドーム状の部屋だ。

何に使われる部屋なんだろうか?

住むのに適しているとは思えない。

彼女はここで何をしているんだろうか。

部屋の真ん中でこちらに背を向け、床に直接座っている。

いきなり目の前に姿を表したら、相当驚くだろう。

俺は扉の前でスキルを解除した。


あれ?

気づかない。

彼女はこちらに背を向けたままだ。

俺は扉を中からノックした。

コンコン。

・・・無反応だ。

《ケンちゃん、どうしたの?》

扉のノックに反応したのはレイラだった。

《なんでもない。 ちょっと待っててくれ》

レイラたちを中に入れようかと思ったが、大勢で押しかけても迷惑だろう。

俺だけでも迷惑か?


「もしもーし。 失礼しますよ」

俺は声をかけながら、彼女に近づいた。

まだ無反応だ。

・・・生きてるのか?

いや、ヘレンが気配を感じたのだから、死んでるってことはないはずだ。

大回りして、遠目から彼女の視界に入るように近づく。

彼女は両手を顔の前で組んで・・・祈ってる?

目をつぶってるな。

それでも気が付いても良さそうなんだけど。


仕方がないので彼女の目の前に行って、肩を軽く叩いてみた。

「もしもーし。 こんにちわ」

「!!」

彼女は肩を叩かれたことに気づき、俺の方に目をやり、声にならない悲鳴を上げた。

四つん這いになり、赤ちゃんがハイハイするように壁の方に逃げる。

壁に背中を預けてこちらに向いて座り、近くの火のついていない燭台を武器のように俺に向けた。

女性が震えているのがわかる。

口をパクパクさせているが、声は出ていない。

・・・喋れないのか?

耳も聞こえてないのか。


俺は彼女に念話を飛ばしてみた。

チャネルが繋がるといいんだが。

《もしもーし》

かめよかめさんよ、と言いたくなったが我慢した。

《俺はあなたに危害を加えるつもりはない。 念話が届いていたら、返事をしてほしいんだけど》

彼女は燭台を俺に向け、目は俺の全身をジロジロと舐めるように見ている。

俺の見た目は12歳だし、顔は人畜無害の典型的日本人顔だ。

大丈夫。

怪しくない・・・か?

念話が届いてる感はあるんだよな。


《俺の名はケンジィ・クリューガー。 あなたの名前を教えてくれないか?》

《・・・クリューガー?》

お、反応ありだ。

あえてクリューガーを名乗って正解だな。

ここも魔王軍に襲われたというから、何かリアクションがあると思ったんだ。

《元クリューガー王国の関係者だ。 あなたはアーチャなのか?》

《・・・》

俺だけじゃ心開いてもらえないかな?

《部屋の外で仲間が待ってるんだ。 中に入れてもいいかな?》

彼女は無言で扉の方に目を向けた。

燭台はまだ武器のように構えられている。

彼女からは否定の意志がないと判断して、俺は扉の方にゆっくりと歩いた。


扉を開けてリディ、ヘレン、レイラの3人が入ってくる。

武装した3人を見て、アーチャが体を硬直させて、震えが大きくなった。

戸惑いの表情を俺に向けている。


「俺はリディ。 隣からヘレン、レイラだ。 よろしく頼む」

リディがアーチャに向かって自己紹介をした。

彼女はきょとんとしている。

「リディ、アーチャは多分耳が聞こえない。 声も出せないみたいだ」

俺は自分の言ったことも、女性に念話で伝えることにした。

何を話しているかわからないままでは、彼女も警戒を解くことはできないと思ったからだ。

リディの話したことも、念話で飛ばした。

《・・・この人たちもクリューガー?》

よし、彼女からリアクションがあった。

《3人ともクリューガーだよ。 レイラ、この人に念話を飛ばしてもらえないか?》

「彼女は念話ならできるみたいなんだ」

リディとヘレンに伝えた。

《レイラ、念話を俺と彼女と3人で繋がるように話してくれ》

《わかった。 はじめまして。 私はレイラ。 レイラ・クリューガー。 あなたの名前を教えてくれない?》

《・・・アーチャ》

《《アーチャさん?》》

やった。

ようやく名乗ってくれた。

やっぱりアーチャだった。

《私の名前は、アーチャ・トーア・スカーダイ・・・だと思う》

っていうか「だと思う」ってなんだ?


 挿絵(By みてみん)



《・・・何も覚えてないの。 何が起きたかも。 私が何をしていたかも。 名前しか覚えていない・・・》

記憶喪失か・・・

《他にここに住んでいる人はいないのかい?》

《・・・人は・・・いない》

何か引っかかる言い方だな。

とりあえず、アーチャの言ったことをリディとヘレンにも伝える。

「アーチャ・トーア・スカーダイと言ったの? アーチャさんは結婚したから『アーチャ・ライド・スカーダイ』になったはずよ」

言われてみればその通りだ。


「監禁されていたようには見えないな」

リディが周囲を見ながら言った。

「アーチャは何故ここにいるんだ?」

確かに逃げようと思えば逃げられるような気もする。

逃げられない理由でもあるのだろうか。

《アーチャは、何故ここにいるんだ?》

アーチャに直接聞いてみた。

《・・・わからない。 私はどこに行けばいいの?》

記憶喪失だったな・・・それでどこにも行けないのか?


《あなたを探している人がいる。 俺たちといっしょに行かないか?》

明らかにアーチャの態度が変わった。

何かに脅えているような・・・

「オレたちが責任を持って、君を守ろう」

リディが力強く言った。

俺がリディの言葉を念話でアーチャに伝えたが、アーチャはまだ迷っているようだ。

何か理由がありそうだ。


《ねえアーチャ。 あなたは誰かに捕えられているの?》

さすが、レイラは鋭いな。

アーチャは俯いたまま、ふいに首を横に振った。

そしてレイラを見つめて、

《ここから連れてって。 お願い》

記憶喪失のせいか、アーチャはレイラより幼く見える。

王女というよりはお姫様だな。

まずはフェイモスに連れて行って、宰相に預けよう。


さて、一つ目の依頼はひとまずOKだな。

次はクレアの依頼だ。

この城で何が行われたのか、調査したいところだが。

どうする?

見たところアーチャは戦うことは出来なさそうだ。

アーチャを護衛しながら城を調査するか?

それともまずはアーチャの保護を最優先として、ひとまずここから脱出するか?


リディに相談した。

「アーチャの保護が最優先だ。 城の調査なら宰相に話をしてフェイモス王にも手伝ってもらおう。 調査は人数が多い方がいい」

なるほど、一理ある。

俺たちはスカーダイからの脱出をすることにした。


ドーム状の部屋から出ようとしたとき、背後から声がした。

「日 お前たちは誰だ? 何をしてる? 日」

日本語?!

アイツか!!

俺は振り返りもせずに、時間停止をした。

先手必勝!!

俺たちの背後にあのマネキンが立っていた。


ちょうどいい。

お前を倒せばクレアの依頼も達成だ。

火蜥蜴牙のスティレット、デビュー戦だ。





ずいぶん前に「出番未定」としてみてみんに投稿していたキャラが、ようやく日の目を見ることができました。



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