↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でオッサンは勇者になれるか?  作者: 高戸 賢二
4章 異世界道中膝栗毛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/229

49話 寒い夜(おまけ付き)

スカーダイに向けての行動開始は夜明け前となった。


「さあ夜も更ける。 明日に備えて寝る準備をしよう。 今夜は水浴びはなしだ。 魔法を使って魔物にバレるのも良くない。 見張りの順番はいつも通りで」

「「「了解」」」

見張りの順番はヘレン、俺、リディ、レイラと決めている。

見張り用の砂時計があって、およそ2時間交代だ。

大体いつもは、暗視も魔力感知も苦手な俺の分までヘレンが見張りを続けているが。

今夜はいつもより寝るのが早い分、見張りの時間も長い。

ヘレンに見張りが2回は回ってきそうだ。

今夜は俺も見張りをしよう。

今夜は風が強い。

夜の草原はかなり冷え込みそうだ。

こういうときは3人が川の字のように並んで寝るのだ。

真ん中は結構温かい。

一応両端には土魔法で土手をあらかじめ作っている。

寝れるときはしっかりと寝ておかないと、体力と魔力の回復が遅くなるからな。


仮眠後、俺はヘレンと見張りを交代した。

今夜は雲がないので満天の星空だ。

月が一つしか出ていないが、夜空が明るく感じる。

プラネタリウムでもこんなに星は出さないだろう。

天の川のような星の雲が赤かったり紫だったり、結構色とりどりだ。

この世界に来て12年になるけど、星空は見飽きない。

この世界にも星座とか呼び名はあるんだろうか。

あまりに星が多すぎて、星座にならない気もするが。


見張りと言っても、俺はぼーっとしてることが多い。

何も考えずに自然と一体になるように感覚を広げていくと、何となく周囲の気配が感じ取れるようになる。

草原で遮るものもないので動物はいないが、虫の気配はわかる気がする。

殺気とか敵意とかは感じられない。

夜になって段々冷え込んできた。

何もない草原なので風がかなり強い。

音は風の音しか聞こえない。

魔力感知に集中しよう。

寝落ちしないように気を付けなきゃ。


何事もなく、俺は見張りをリディと交代した。

リディと交代したあとは熟睡してしまったらしい。

スキルを多用したあとは、必ず眠くなる。

やはり俺のどこかに負担をかけているんだろうな。

そういえば俺は日本ではイビキがかなりうるさかった。

自分のイビキで目が覚めたこともある。

太ってないのに睡眠時無呼吸症候群と診断されたことを思い出した。

何でこんなことを考えているかというと、変なタイミングで起きてしまったからだ。

おそらくヘレンが見張りの交代で寝床を抜けた時に、一気に体が冷えてしまったのだろう。

体感で今はざっくり3時ぐらいかな。

おしっこもしたくなった。

交代でレイラが入ってくるだろう。

レイラが来たら抜けにくくなるな。

しょうがない、起きて用を足してこよう。


そそくさと寝床を出て、そそくさと寝床に戻る。

あ、時間停止使えば良かった。

寝床に戻ってもレイラはいなかった。

あたりを見渡すと近くでレイラが体育座りでうずくまっている。

俺は念話を飛ばした。

《レイラ、早くおいで。 そんなところで座ってたら寒いだろ》

《いい。 ここにいる》

《今は魔力を使えないんだから、そこだと冷えるよ》

そういえば念話は大丈夫なのだろうか?

あまり魔力を使っている感じがしないので、大丈夫だろう。

ダメだったら魔力感知力の高いヘレンが何か言ってくるはずだ。

《ほら、早く。 レイラが帰ってこないと隙間が開いて、俺が寒いの》

《だって・・・水浴びしてないから・・・》

は?

そんなこと気にしてるのか?

・・・年頃の娘ってことか。

聞いてみれば、最初に寝たときは気になって寝れず、真ん中のリディからはできるだけ離れるように、土手に張り付いていたんだと。

それに気づいたヘレンが真ん中になってから寝たんだが、ヘレンが抜けて戻ったら真ん中しか空いてなかったので、戻れなくなったらしい。

やれやれ・・・

困った娘さんだ。

《俺が真ん中になるから。 俺だったら平気だろ?》

《・・・》

明日は嫌な予感しかしないんだよね。

こっちの世界は夜明けで日付が変わるから、明日でいいんだぞ。

《明日は何が起きるかわからないんだから、しっかり体調を整えなきゃ。 俺なら大丈夫だから、おいで。 むしろ俺の臭いの方が気になるわ》

《そんなことない。 ケンちゃんが臭いのは慣れてるから》

臭くないとは言わないのね。

《早くおいで》

《・・・うん》


レイラがようやく俺の隣に入ってきた。

若干離れぎみだが。

《・・・大丈夫? 匂わない?》

《大丈夫。 むしろ、いい匂いだ》

《・・・ヘンタイ》

ヘンタイって、あなた。

俺はそういうフェチじゃないぞ。

《・・・ねえ。 手、握ってもいい?》

俺の方からレイラの手を握った。

!!

氷のように冷たいじゃないか!

《おまっ、こんなに冷えて、ダメじゃないか!》

俺は半ば強引にレイラを抱き寄せた。

「!!」

レイラの小さな悲鳴が聞こえたが、気にしない。

恥ずかしがってる場合ではないのだ。

全身が冷え切ってるよ。

震えてるし。

まったく・・・こんなになるまで我慢するやつがいるか。

しょうがない娘だ。


俺たちは抱き合ったまま、しばらく黙っていた。

レイラの震えが止まっていない。

《まだ、寒いのか?》

《ううん・・・怖いの》

《怖い?》

《明日が・・・怖い》

レイラも嫌な予感がしてるのか。

レイラの場合、確信的な「勘」かもしれないが。

気持ちは、わかる。

《明日か・・・俺もいい予感はしてないな》

《ケンちゃんも・・・なの?》

《ああ、こんな感じは初めてだ》

大丈夫、なんて励ましは言いたくなかった。

レイラの前では強がっても意味は無さそうだし。

レイラは勘が鋭いからな。

上っ面だけで言おうものなら逆効果だ。


《ケンジィ・・・私怖い。 すごく・・・怖い》

俺は上着の前を開き、レイラの顔を俺の肌着一枚の胸に押し付けた。

《ちょ! な、何?!》

《うるさい。 俺の胸に耳をつけろ》

レイラの顔を横向きにして、俺はレイラの頭と体を抱き抱える。

力を入れすぎないように。

優しく。

そっと。

《俺のいた世界では、人の心臓の音を聞くと落ち着くって言われててな》

《・・・何で?》

こっちではそういうのはないのか。

レイラが知らないだけか。

《赤ちゃんってお母さんのお腹にいるだろ? その時に赤ちゃんが聞いてるのはお母さんの心臓の音なんだ。 人は人の心臓の音を聞くと、お母さんのお腹にいる時を思い出して、落ち着くんだとさ》

こんな説明で大丈夫だろうか。

レイラは俺の胸の中でうずくまるように、おとなしく抱き抱えられている。

ホントに赤ちゃんみたいな体勢だ。

《レイラも俺の心臓の音で安心できないか?》

レイラはまだ震えている。

《ケンちゃん・・・どこにも行かないで》

《ああ、ずっと側にいるよ。 いつでもこうして抱きしめてあげる》

《・・・ホント?》

《約束する》

レイラの震えが、止まった。

《・・・ホントだ。 心臓の音って安心する》

嫌な予感がしてるのは俺も同じだ。

でもレイラといっしょなら、レイラを守るためなら、嫌な予感はするが不安はない。

《何があっても、俺がレイラを守るから。 安心しておやすみ》

《・・・うん》

ほどなくして、レイラから小さな寝息が聞こえだした。

冷えきっていたレイラの体も温かくなった。

レイラを抱いていると、俺も安心する。

俺もまた眠りに落ちた。


「二人とも幸せそうだね」

「ええ、若いって羨ましいわ」

リディとヘレンに見下ろされながら、俺たちは夜明け前を迎えた。

さすがに恥ずかしい。

レイラも恥ずかしそうだった。


何だか決戦の日を迎えたみたいな感じだ。

レイラも昨夜のような不安そうな感じは見受けられない。

でも今日はまだ決戦じゃない。

体調は万全。

気力も万全。

昨夜はレイラを安心させたが、逆に俺もレイラから勇気をもらったような感じだ。

レイラを守るためなら怖いものはない。

俺がこの世界に来たのはレイラを守るためなんじゃないか?

確信にも似た想いを抱いたのだった。



このサブタイトルを見るたびに松〇千春を歌ってしまいます。

そういう言葉遊びみたいなものが私の原点です。

この話でこの章は終わりです。

次回から新章になります。


ヘレン旅服です。

挿絵(By みてみん)

巨乳の胸当てはオーダーメイドでないと、合わなさそうですよね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。