8話
戦いごっこ、人形遊び、木登り。この世界遊びが少なすぎる。だから作ることにした。
「今日は、ブランコを作ります」
「「はーい」」
「子供だけだと作れないので、パパ達とババ様に来てもらっています。今日はよろしくお願いします」
「ミアの頼みなら、なんだって手伝うよ」
「暇してたから、丁度よいぞ」
「ありがとうございます。ということでこれらの、前から準備してたロープ、パパたちに持ってきてもらった丸太を半分にしたもので、造っていこう」
前作って、好評だった櫛のこともあり、子供だからと断られず、丸太と大人の力を借りることができた。まかせっきりなのも悪いので、ロープは3人で作った。なかなか丈夫にできたと思う。
ひとまず丸太は、危ないので外側の皮を剥いでもらって、1つは両脇にロープが通るぐらいの穴を2個、もう1つは中心に穴を1個、あけてもらう。あいたら、そこにロープを通して、団子結びをして抜けないようにしてもらって、反対側を木の太い枝にしっかり結んで、
「かんせ~い」
「これが、ぶらんこっていうのか。乗って揺らすって言ってたが、1人でどうやって揺らすんだ?」
「見ててって」
私がブランコに座って足を揺らと、ブランコも揺れだした。
「どうなってんだ?」
「こういうもんだよ。揺れて楽しいし、乗ってるときに目つぶっても楽しいよ。慣れないうちは、誰かに背中を押してもらうといいよ」
「何とも不思議じゃな」
パパやザシィとトトに教えていくうちに、みんなこぎ方を覚えていった。靴がないから、うまく止めないと足裏が痛いときがあるのが難点だが、それ以外は、前世と変わりはない。うまく作れたし、みんな楽しいと乗ってくれているので、造って正解だったな。
「う、楽しいが乗りすぎると、ちょっと気持ち悪くなるな」
「パパ、吐く前に止めてね」
「そうするよ」
その後も、もう1人気持ち悪くなる大人が出たので、大人は乗りすぎ注意となった。椅子の代わりにもなるし、遊び道具にもなると、違う木にもう2つ造られた。
「ルーの村ってどんなところ?」
「種族が違うだけで、住んでる村とあまり変わらないわよ」
「そうなんだ」
ルーみたいな獣人をたくさん見れるのも、天国だな。私たちは、もう1つの隣村のフォル族の村に向かっていた。前回同様、お遊び交流会だ。ただ、お昼を過ぎても歩き続けているので、前回より遠い。
フォル族の友達出来るといいな。というか、つくる。推しと友達になれるんだから、前世みたいに受け身になってられるか。でも不安なのは、同い年がいないらしい。自分が一番年下だから、つくるなら年上しかいないということだ。
「見えてきたぞ」
「おー」
目の前には、少し開けた所に集落が見えた。村の中に大きな木がないところが、私たちの村と違うみたいだ。
「よおダグラス、久しぶり」
「久しぶりだな。この子が、娘のミア」
「はじめまして」
「初めまして。このフォル族の村長、ビドだ」
「よくできた子だろ」
「確かに、しっかりしている子だね」
またむず痒い会話をされながら、広場に連れていかれた。降ろされた後も会話が弾んでいるので、急いで離れた。
「あ~、ムズムズした」
「ミアのパパ、べた褒めだったね」
同じく降ろされたザシィとトトと一緒に広場を見ると、確かに同い年はいないようだった。見た感じ、みんな1~4歳ぐらいの年上みたいだ。男女ともに、走ったり、転がったりして遊んでいる。
「あそこ混ざりたい?」
「ううん」
「ミアが混ざりたいなら」
年上多いし、混ざったら押しつぶされそうだから、私も乗り気になれないんだよね。そう言うと、混ざらないで、木の上から眺めようとなった。人形遊びもしてる子がいないとは、驚きだった。
全体が見れて、外からあまり見えない大きいめな木があったので、そこに登ることにした。いつも登る木ぐらいの大きさだが、ここら辺には、20メートル級のでっかい木がない。だから、遠くまで見れそうと、ルンルンで登っていたら、足裏が見えた。先客がいるようだ。登りきると、全体像が見えた。1歳上か?。
「こんにちは」
「…」
「私は、ミアです。名前はなんですか?」
「…」
「な、何歳ですかぁ…」
「…」
だんまりー。言葉のキャッチボールじゃなくて、砲丸投げになっちゃってるよ。
「僕たちも、ここにいていいですか?」
「…いい」
返ってきたー。ザシィ、ナイス。いていいみたいだし、いきなり上から蹴落とされることはないね。
その後は、木の上で観察しながらお菓子を食べていた。お菓子の力は偉大で、無口さんにもあげたら、ありがとうと言って食べてくれた。今日聞けたのは、この二言だけだった。
お遊び会2日目、私たちは昨日と同じく木に登っていた。もちろん、上には無口さんがいる。おはようと挨拶したら、うなずいてくれたので、少しは打ち解けたのかな。
遠いから、明日返るらしい。お遊び会だけど、いつもとあまり変わらない。運動のため下に混ざってもいいけど、今更な、入りずらいな。ここで、みんなが遊んでるの見たり、だべるだけでいいや。
「お前たちは混ざらないのか?」
後ろをバッと振り向くと、無口さんと目が合った。幻聴じゃないよね。
「あ、年上が多すぎて、混ざりずらくて」
「そうか」
「あなたは?」
「…」
質問のノリで、会話できるかと思ったけど、ダメだった~。でしゃばっちゃった~。脳内反省会もんだ~。
「好きじゃない」
「お、え、そうなんですね」
「あと、敬語じゃなくていい」
「わかりま…わかった」
その後、名前を聞いたら、ガイと名乗った。その後は、またしゃべらなくなった。急にどうした無口さん。また返事が返ってこなくなったけど、今会話で来てたぞ。これは、時間がたてば、仲良くなれる系か。のんびり仲良くなっていくか。
その日は、それ以上話さなかった。1つびっくりしたことは、昨日普通に木から降りていたガイが、木の上のほうから、何言わぬ顔で飛び降りたことだ。慣れてるようだし、いつもこうやって降りてたのかな。今度私もやってみよーっと。
無事に2日乗り切り、帰る3日目になった。私は、また村の出口で、肩車されている。
「お、ガイが見送りに来るなんて、珍しいじゃないか」
「…」
「また、だんまりか。許してやってくれ、こいつ無口なんだ」
「いいって、そういう子もいるさ。それじゃあ、みんな揃ったことだし帰るな」
「じゃあな、またこいよ」
「おうよ」
「「バイバーイ」」
私たちは見送られて、村を出た。ガイは日陰で、手も振っていないが、見送りに来てるだけいいほうなのだろう。私は見えなくなるまで、村のほうを見続けた。多分、一番最後に村の奥に入っていたのは、ガイだった。