7話
「むやみに牙を仲間に向けないと、誓うか?」
「「「はい」」」
「それならば、牙をおぬしらに授けよう」
そう言ってババ様は、私たちに小さな牙をわたした。3歳になった誕生祭で行われる儀式だ。やっとこれで、どこでも木盤が書けるしらくちん。
儀式の後は、いつも通り飲んで食べて、組み合い大会が行われた。今年は最後まで戦えたが、ラナに負けたので、去年と一緒で準優勝だった。
祭りの終盤、3人で遊んでいると、ババ様とパパが近づいてきた。
「ミア、みんなと話し合った結果、弓を渡してもよいとなった。気を付けて使うんじゃよ」
「よかったなミア。明日、パパと一緒に練習しような」
「やったー。ババ様、パパありがとう」
実は、弓の練習がしたいので、貰えないか相談していたのだ。近接戦では命の危険が高いだろうから、弓が使えたほうが生き残れるだろう。もちろん、近接戦も鍛え続けるつもりだ。
「さすがに、3歳になってからとなったが、渡すことに関してだれも反対せんかった。さすがじゃ。じゃが、ほかの人に当たらないように、気を付けるんじゃよ」
「はい」
そのあとは、興味津々のザシィとトトに弓と、前世で知っている武器について教えてた。それぞれの武器の弱点を補うために、2人の得意な武器を探すのもいいな。ゲームでみんな同じ武器使ってるの、敵の盗賊だけだもんね。
次の日、パパとともにババ様の家裏にできた空き地に来ていた。森にある練習場は危ないので、作ってくれたらしい。
「まずはこの距離でいいだろう。最終的に、あの木の板に当てられるように練習するんだ」
そういうとパパは、弓のつがえ方を教え、見本を見せてくれた。真似してやってみると、矢はとどく前に地面に刺さった。2本目は右に飛んで、3本目は引くとき失敗して、横にピヨーンと飛んでしまった。
「最初はそんなもんだ。なれが必要だから、頑張れよ」
「うん」
まだ3歳なので、体力的に限界が来た。だから、お昼の軽食を取った後は、弓の手入れや、矢の作り方について学んだ。
狩りに行ったパパたちが帰ってきたので、頼んでいたものを取りに行く。今回はいつにもまして、大きいモンスター狩ってきたな~。
「パパおつかれ様」
「ミアただいま。あと、それが頼まれてた矢にする枝で、こっちが丈夫でミア以上の長さがある枝だ。やりと言う物を作ると言ってたが、こんな感じでよかったか?」
「うん、いい感じ。ありがとう」
「よかった。そうそう、2日後同じロン族の、隣村に泊りで行って遊ぶからな」
「となり村の子と?」
「そうだ、同い年の子もいるから、きっと楽しいぞ」
そういうとパパは、仲間に呼ばれて、肉の運搬作業に向かった。
3歳になると、近くの村に遊びに行くのに参加できるようになる。こっちの村に来ることもあるが、3歳になるまでお互い遊ばないルールがあったので、遠目で見ていただけだ。だから、子供の獣人を近くで見れるのは、めっちゃ嬉しい。
「ミア、楽しみなことできたの?、それとも新しいこと思いついた?」
「なんでわかった」
「目がにやけてた」
「表情出ちゃってたか」
「よくある」
「あはは、そうなんだ」
獣人のこと考えてたら、表情に出ちゃってたか。危ない危ない、今度からは、表情気にしよ。
「で、なに考えてたの」
「2日後に、となり村に行くんだって」
「ふーん」
「楽しみじゃないの?」
「見てて飽きはしなさそう。でも、やんちゃに誘われそう」
「誘われたら断ればいいよ。つっかかってきたら、相手するよ」
ありがとうと言って、ザシィの糸目は、もっと糸目になった。トトにもこのことを告げると、楽しみとはしゃいでいた。
2人を、造ってもらった裏庭に連れてきた。
「ここが弓の練習場だよ」
「「お~」」
「ほかの子には内緒ね。特にパパが、1個上の子達には教えるなって言ってた」
「「りょうかーい」」
それにしても、3歳で聞き分けめっちゃいいな。一緒に勉強したおかげかな。
「それで、持ってるの何?」
「これは、この前話してた槍だよ」
「それが槍なんだ」
「うん。この武器は剣より長いから、相手がとどかないところから攻撃できる。とうてきにも使えるかな。デメリットは、家の中とか狭い場所で戦うとき、動きずらくなってしまう」
「でめりっと?」
「マイナス、よくないところって意味だよ。逆にいいところは、メリットって言うよ。それじゃトトはこっちの木、ザシィはそっちの木の葉をねらって槍でついて。落ちてくる葉があったら、そっちをゆうせんしてついてね。どっちが早く、3回連続で葉がさせるか競争ね」
言い終わると、2人とも始めの合図もなしに葉をつきだした。明日隣村に行くし、疲れる前に止めよう。しょっぱなから3回連続で葉が、刺さるわけないだろうからね。
私は、少し2人の様子を見て問題がなかったので、矢の先を尖らせる作業をした。
「2人ともそこまで。明日隣村いくから、この辺にしといたほうがいい」
「えー、もうちょっと」
「隣村から帰ってきてからもできるよ。槍は木の根元にさしておいて」
「えー」
「遊びに行くのに、ずっと寝てるだけになっちゃうよ。ほら、帰るよ」
「んー、わかった」
トトは、しぶしぶ槍を地面に刺した。帰りでも不機嫌だったので、明日持っていく人形の話をしたら、槍を忘れたようにニコニコ笑った。
次回は、突くだけじゃなくて剣道みたいに叩きあってみるかや、あっちの村にはどんな子がいるのかや、想像を膨らませながら寝た。
トトと遊ぶ人形は背おった。パパが、水袋とお菓子とその他いろいろ持ってるから、これだけで大丈夫だろう。
「ミア、もう行くぞ」
「はーい」
パパと一緒に村の出口に行くと、ほぼみんな揃っていた。ほどなくして、最後のムグとナグが来たので、出発した。
歩いていると、いつも水くみと洗濯に使う川についた。どうやらここを渡るらしい。
「みんな、水飲んだらわたるぞ。水袋に水入れ忘れるなよ」
「パパ、あさせとはいえ、私渡れないよ」
「大丈夫さ、こうするんだ」
そう言って、パパはいきなり私を肩車した。
「高いだろ~」
「う、うん。タカイネ」
いきなりは、びっくりするって。パパの毛にしっかりつかまって、周りを見てみると、ザシィとトトも肩車されていた。せっかく肩車したし、私たちは向こう岸で水を飲むことになった。ムグとナグは、どっちが肩車されるか前日に戦って決めたらしい。ナグめっちゃ悔しそうな顔してるな。
みんな準備が終わったのを見計らって、パパが出発の合図をした。依然として、私は肩車されっぱなしである。あ、ナグも肩車してもらえたんだ。
結構歩いてのに、まだつかないんか。あれからずっと肩車したまま、歩き続けている。車とか電車ってすごかったんだな。
「パパ、あとどのぐらい?」
「あとちょっとだな。でも途中で狩りもしたから、予定時間より少しおしてるな。持ってきた菓子たべるか」
パパは、私に焼き団子のお菓子を、2個渡した。確かに途中で、狩れそうだし土産の足しになると、弓と牙を使って、デカい角のシカっぽいジーカというモンスターを狩った。まあ、それにしても長いこと歩いてるんだよね。
「見えたぞ」
「おー」
うちの村とあんま変わんなーい。同じ種族だし、近所だし、それもそうか。
「ベルクー、きたぞー」
「よおバダラス、やっと来たか。広場でうちの子らは、もう遊んでるぞ」
「久しぶりだな。途中で、いいジーカがいたから、狩ってたんだ。あと村から持ってきた、これらも土産だ」
「ありがとよ。でその子が、自慢の娘か」
そうだと、パパが肯定すると、私のことを語りだした。はずい、話題ずらそ。
「パパ、この人だれ?」
「ああ、紹介してなかったな。ベルクと言って、パパの友達で、この村の村長だ」
「初めまして、よろしくね。この村でも櫛が女性に人気だよ」
「ミアです。よろしくお願いします」
「それでな、」
「バダラス、広場についた。いったん娘を置いてあげたほうがいい」
「ああ、そうだな。ミア、遊んできなさい。パパは、この辺でベルクと話してるから」
「はーい」
はー、解放された。恥ずかしかった。それにしても、ボーたちは、もう遊びに参加してるな。それにこの村の女の子たちも、はしゃいで走り回る系が多いし、人形遊びしてるのは2人だけ。これどうやって仲間はいるか。もうグループで来てるところに入るのは、私きついぞ。
「ミア、どうする?」
「どうしようか。走り回りたい?」
聞くと、2人とも顔を横に振った。じゃあ人形入れてもらうか?。でも絶対年上だし、2人の世界入っちゃてるし、行きずらいな~。
「3人であそぼ」
「隣村に来たって、無理してこの村の子と遊ばなくていいか。んー、あの木陰で遊ぼう」
走り回ってる子に絡まれるのも面倒なので、木に登ってお菓子を食べてから、人形遊びをすることになった。座るのにいい枝を探していると、登ったところとは反対側に、白い塊が座っていた。よく見ると、耳がついていて、私たちと同じロン族ということがわかる。私は興奮を抑えて、1人でお絵かきしているその子に、声をかけた。
「何してるの?」
「え、」
「お名前は?」
「あなたこそ誰よ」
「私は、ミア。あなたの名前は?」
「へ、ヘルデ」
「ヘルデね。私たち今からお菓子食べるんだけど、上で一緒に食べない」
「え、」
「みんなで分け合ってって言われてるから、遠慮いらないよ」
登れないのかなと思い、いったん降りて、戸惑っているヘルデを立たせて、見本としてもう一回のぼった。
「私、登るって言ってないわよ」
これは、気が強い系か。苦手なタイプだけど、見た目が真っ白で推せるんだよね。仲良くなりたい。乗っかるかわからないけど、試しに煽ってみることにした。
「1人で登れないの?、手伝おうか?」
「そういうわけじゃあ」
「もう1回降りて、手伝うね」
「じぶん1人で登れるわよ」
そう言うと、ヘルデは1人で登ってきた。作戦成功。まじかで見ると、ほんと真っ白だなー。
「白で何が悪いのよ。登って来いって言ったのは、ミアでしょ」
「え、声出てた?」
「でてたよ」
あちゃ~、顔だけじゃなくて、言葉でも出ちゃったか。気を付けようって、この前決めたのに。
「あはは、声に出てたんだ。真っ白で、きれいだなって思って、声かけたんだ。気持ち悪かったらごめんね」
「あ、えぇ、別に。それより、おかしは?」
うつむいちゃったけど、あまり気にしてないっていうなら、大丈夫か。それより、お菓子お菓子。
仲良くなるためにも、お菓子で餌付けしていると、下から呼ばれた。
「おーい、戦いごっこしようぜ」
「白いのもいるじゃん。そんな奴おいて、俺らと遊ぼうよ」
木の上にいても、誘ってきたか。それに、ヘルデをそんな奴とは、何言ってるんだこいつら。
「男もいんじゃん、女に囲まれてるとかなよいな」
おっと、ザシィまで見下すとか、私が黙ってないぞ。
「私、行ってくるね。ヘルデ、このお菓子袋持ってて、食べててもいいからね」
ヘルデにお菓子袋を渡して、下に降りた。
「おい、ヘルデとザシィを馬鹿にすんなよ。私は3歳だ。同年代か、いないなら1歳上で強いと思う人と組み合いしたい。あと白いのと言った君と、なよいと言った君とも組み合いする」
言った子達もあんまり身長差ないから、戦い申し込んじゃったけど、3人以上体力持つといいな。ザシィをなよいと言った子が、声を上げた。
「まずは、俺だ」
「名前は?」
「ケシーだ」
「私は、ミア。よろしくね」
自己紹介したら、試合が始まった。一発で倒して、動けないようにした。ナグより弱かったな。
「ケシー、よえーな。次は俺だ」
「名前は?」
「ジブ」
「よろしくね」
これも、瞬殺した。ナグぐらいの強さだったな。
その後2人倒して、合計4人倒した。誰も試合を申し込まなくなったので、私の友達を悪く言うなと、くぎを刺して、木に登った。
「ただいま。つかれた~」
「やっぱり、ミアはすごいね」
「なんだかんだ、ボーより今戦った子達弱いんだよね。なんかボーが強いのムカついてきた」
「ありがとぅ」
「ぜんぜん気にしなくていいよ。わざわざ、悪口言ってきたあいつらが悪い」
ヘルデ見てると、疲れ飛ぶな~。毛は真っ白で、目が血みたいに赤いから、この子アルビノでしょ。レア度高いし、かわいくてきれいだし、見てて飽きないわ。
頬が変に緩まないように、会話をした。ヘルデは同い年らしい。親は白くなくて、兄弟も友達もいないらしい。さっきの子の言い方といい、仲間はずれされてるんだろうな。私も小学生のころデブで、金魚の糞からボッチになったもんな。それで、獣人と推しに逃げたもんな。この子は、気を強くすることで、耐えてるんだろうな。
「ねえねえヘルデ、友達になってくれる?」
「友達?」
さっきのと今の反応見る限り、友達いないよね。
「そうか~。ヘルデ、私が友達第一号か」
「え、」
「僕2番目」
「じゃあ私3番目」
「さっきと同じことまた起こるわよ」
「そしたら、倒すよ。歳の差があって勝てなさそうだったら、逃げるけどね」
「う、あ、好きにすれば」
ならないとか、言われなくてよかった。
日が暮れるまで、話したり、みんなのことを観察したり、人形遊びしたりと、楽しんだ。楽しい時間は過ぎるのが早く、あっという間に、次の日の帰る時間になった。
「また遊ぼうね」
「うん」
打ち解けられてよかった。リアルで推しと友達になれる世界とか、いい世界だな。バイバイと別れを告げて、村を出た。
「ミア、ヘルデと友達になったのか?」
「うん」
「そうか」
父の頭の上で、みんなと遊んだ思い出を話して帰った。
ブックマークがまた増えました。ありがとうございます。