6話
いつもより早く投稿できました。
「今日は、また魔法の練習をしてみるかの」
今日こそ出てほしいな。自主練で、週2で試しているが、まだ一度も魔法が出たことがなかった。
「ウォーム」
全然温かくならない。
「フーン」
すんとも風は吹かない。
「ボコ」
地面はびくともうご…いた⁈。よく見ると、地面がポコッとしていた。もう1回唱えてみると、もう1個出っ張りができた。
「ババ様できた」
「本当か」
「ほら、ボコ」
「本当じゃ、使えるようになって良かったな。これからは、使える回数を増やすか、より大きい出っ張りが作れるように練習するんじゃ。しかし、倒れんように気を付けるんじゃよ」
「はい!」
やっとか。2歳なら早い方だが魔法を知って1年半、長かった。これからは、遊ぶ合間合間に練習するか。
それから、魔法の練習、遊び、手伝いを繰り返した。
そんなある日気づいた。出っ張りできるなら、へっこみもできるんじゃね。凹だし沈むだろ。
「ボコ」
唱えると、地面が少し凹んだ。案外簡単に成功したな。というか、これで魔法に大切なのは、イメージということが分かった。すでに無暗唱で、地面をボコってできるのは実証済みだから、前世からイメージしやすい言葉を言えば、どうにかなるようだ。
試しにもう1個、違うイメージしてみることにした。
「ストーン」
今度は何も出なかった。さすがに、自分の魔力が足りなさそうなものは、出ないらしい。それにしても、これから魔法研究も生活に加わると思うと、わくわくてかてかしちゃう。
沼とかできたら相手の動き弱められるよなと、魔法のことを考えていると、母に呼ばれた。
「もう行くわよ」
そうだ、今日は収穫日だった。慌てて母のもとに向かい、半年前種を植えた畑に向かった。
「今日は、みんなこの育った繊維の草をぬくぞ。やり方をしっかり見ておくように」
「「「はーい」」」
「まずは、草の生えている根元の土を掘り起こすんだ。ある程度掘ったら、引っ張って抜く。抜いたらあそこの端に置いてくれ。植えるときより簡単だろ。それじゃ、誰が一番多く収穫できるか競争だ」
「準備はいいか。よーい、はじめ」
種植えのとき同様に、みんな一斉に掘り始めた。さて、私の植えた草はどう成長してるかな。今の身長だとひまわり畑みたいになる畑を歩いて、おそらくここだろうという所についた。周り同様大きく成長していた。
変化ないな。さすがに私が少しほぐしたぐらいじゃ変わらないか。今度、潮干狩りに持ってきそうなやつ作れたら作るか。
今回は、収穫数順位は真ん中ぐらいだった。やっぱり1位は、ドドイだった。
「それじゃあ、この草についてる種を取って、4日後にまたここで種植えするからな」
「「「はーい」」」
4日の間に、作ればいいか。明日ババ様の所行こ。
「子供達、明日は種取りするから広場集合ね」
「「「はーい」」」
これは、明後日かな。運ばれていく、繊維の草の多さに苦笑いした。
次の日は、種を取る作業で、1日つぶれた。
昨日は、大変だったな。それでも子供の体だからか、全く疲れが残ってない。子供の体ってすごいな。
「ババ様あそびにきました」
「いらっしゃい、今日は何を持っておるんじゃ?」
「食堂にあった、まきです」
「それでまた何か作るのか」
「はい」
ババ様から、いつも通り牙をもらって、私は杭のようになるように削り始めた。
潮干狩りで使うような歯の出たものを作ろうかと思ったが、使いがってと自分の力を考えたら、ツルハシを半分に折った、杭のような形を作ることにした。だから、薪を貰ってきたのだ。
くしよりは簡単な構造なので、私の腕ぐらいの長さの杭が、あっという間にできた。父にも使う許可もらったし、種植えの日、杭をもって畑に行った。
「ミア何もってんだよ」
「くい、掘るときに使ってみるの。パパにもちゃんと許可取ってるよ」
「へー、すででほったほうが、早いだろ」
「まあ早いだろうけど、試したいことあるから」
ボーは、ふーんと興味を無くしたようで、ナグに突進していった。
そして、みんな畑に揃うと種植えが始まった。まず、杭で地面をグサグサして柔らかくしながら掘った。4日前に収穫しているので、ある程度柔らかいが、固いところがちらほらあるので杭持ってきてよかったと思う。
みんなより時間はかかっているが、前回よりも固いところをほぐして植えられるので、実験としては満足だ。
「フーフフ~」
「ワオーン、ワオーン、ワオーン」
「3回⁈」
私たちは、遠くの仲間との会話や合図として、吠える。
「ミア」
「トト、襲撃だ」
「ワォーン」
そう、3回は襲撃を意味する。結構遠いところで掘ってるし、急いでパパの吠えたところに向かわないと。
「ミア、うしろ…」
「え、うっわ」
振り返ると、こっちに向かってくる蜘蛛が、ぱっと見だけでもけっこういた。慌てて、トトの手を引いて走り出した。
しかし少し走ると、トトが減速し始めた。後ろを見ると、疲れはじめたトトとピンクに紫色の気持ち悪い蜘蛛が見える。やばい。どうしよう。考えている間にもどんどん減速する。どうする。片手には、掘るための杭がある。守りながらよりは…
「トト、先に走って大人連れてきて」
「え、でも」
「いいから。はやく、行って!」
「う、うん」
私は、トトの手を離して振り返った。こいつらを、1匹も後ろにぬかしちゃいけない。
「おめぇら、私が飯だ。かかってこい」
総勢6匹、やるしかねえ。
「悪いが、今世で死ぬ気はないんだよ」
まず先頭に突っ込んできた蜘蛛を、杭で頭を刺した。
〈レベル2になりました〉
声?、レベル⁈。この世にはやっぱりレベルがあるのか。そんなことよりも、あと5匹。次に、1匹蹴って、もう1匹を刺すも、避けられて頭を外してしまった。この際だと、足で頭をつぶしてとどめを刺す。
「いったい、なにすんだよ」
蜘蛛に足を噛まれた。痛みを怒りに変えて頭を刺して振り払ったが、横から来た新たな蜘蛛が飛びかかってきて、今度は腕を噛まれてしまった。さっき蹴った蜘蛛も起き上がって、飛びかかってきたので殴りとばす。腕のやつも、杭をこん棒のようにして叩いてつぶした。
〈レベル3になりました〉
「あと2匹。じゃないか」
まだ向こうから蜘蛛がわいくる。何匹だろうと倒さなくては。増援が来る前に、残りの2匹をどうにか倒した。
もう1か所かまれたし、ふらふらしてきたし、やばいな。えーっとあと4匹、8匹?。あれ、蜘蛛が重なったり、増えたりする。
「ミア」
「パ、パ」
「こんなに傷だらけで、よく頑張ったな。すぐババ様のところに連れて行くからな」
そう言って、私を抱えて走り出した。
「トトは?」
「無事だぞ」
「よか、た」
「ミア、ミァ!」
なんて言ってるの?。
うぅ、気持ち悪い。ここどこ。そうだ、結局どうなったんだ?。
「ミア、起きたか」
「ババ様」
「おはよう。どうだ、熱いとか違和感あるか?」
「気持ち悪い」
「わかった。無理してしゃべらんでいいが、何かあったら遠慮なく言うのじゃよ」
「ありがとう、ございます」
「うむ、いったんここを離れるが、すぐに戻る」
そう言うと、ババ様は部屋を出て行った。
噛まれたところは、包帯グルグルで動くと痛いし、気持ち悪いし、かなりひどい状況だけど、生きててよかった~。
しばらく、全身の感覚や動くか試していたら、部屋に母が入ってきて、抱き着いてきた。
「ミア、無事なの?」
「うん」
「こらこらメメルよ。嬉しいのは分かるが、また傷口がひらいてしまうぞ」
母はごめんねと言うと、優しく私を離した。ババ様は、薬を作りにいくと言い出ていったので、母にあの後どうなったか聞いた。
母たちは繊維を取り出す作業を広場でしていたので、集合の遠吠えがしてから畑に向かった。ついたら、みんな子供を守りつつ蜘蛛と戦っていて、ほぼかたがついた後だった。そこに、気を失っている私を抱えた父が帰ってきて、ババ様の家に急いで運んで治療した。
仲間によると、父は集合をかけると、仲間と私のところに向かって走ったらしい。途中でトトを見つけ、話を聞くと仲間にトトを預けて、私のところに全力疾走したらしい。
「生きていてよかったわ。ぐったりしたミアを見たときは、息が止まるかと」
「よかった」
私もトトも、生きれたんだ。
「お待たせ。ミアよ、この薬を飲むんじゃ」
帰ってきたババ様は、私をおこして器に入れた粉薬と水を飲ませた。
「にが」
「じゃが、良くきく薬じゃ。あのモンスターは毒を持っとるから、この薬を飲んで、毒がなくなるのを待つだけじゃ」
「どく」
「もう1回噛まれてたら、死んどっただろうな。なんせ3日寝込んでたのだから」
3日もか。けっこう眠ってたんだな。
「ミア起きたのか」
「声が大きい」
「スマンスマン。ミア、ごめんね。それにしても、起きてほんとによかった。返事がなくなったときは、ほんと、もう」
「だいじょぶだから、泣かないで」
「そうだよな、でも涙止まらないや」
「ほれ、もうそろそろ、ミアも回復するために寝なくてはいけない。話はまた今度じゃ」
ババ様に言われて、両親は部屋から出て行った。そのあとは、薬のおかげで少し楽になって、寝ることができた。
そのあとは、両親以外にザシィとトトや仲間も来てくれた。1週間もすれば、激しい動き以外は許可が出た。
「さーて、レベルが上がったとか聞こえし、魔法試してみますか」
そう、この日を楽しみにしていた。戦闘中聞こえた、レベルが上がったと言う声。ババ様に聞いても、レベル自体を知らなかったから、自分で確認するしかない。
「久しぶりでもでてくれるかな。ボコ」
地面が5センチ程度膨らんだ。感覚は鈍ってないようなので、引き続き、何個同じような出っ張りができるか、試してみた。
結果は、6個で疲れた。レベルが上がる前は、3、4個で疲れていたから、一気に2個増えたことになる。これはすごいな。
さらに1週間して、完全回復したときに動いてみると、前より速さや力がパワーアップしていた。
「これは、外にモンスター狩りに行ける日が楽しみだ」
「そうだね。おいしいお肉とりたい」
あ、ザシィとトトのレベルも考えなきゃじゃん。今回みたいに、守れるとは限らないし、みんなも強くなってもらわないといけないな。みんなのレベルも上げて、生き残って、この生を謳歌するぞ。