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4話

お久しぶりです。

「ミア、おはなしかいってどう?」

「ババ様のおはなしきいたり、そとで遊んだりする」

「たのしそうだね」



 そう、今日はみんなで、初めてのお話会です。私は2回目だが、他2人は初めてなのでウキウキしているようだ。現に、さっきの会話は朝から5回目だったはずだ。



「ザシィそんなに不安がらなくて大丈夫よ。最初のうちは、一緒にママ達も聞くから」



それでも不安なのか、ザシィは母の洋服をぎゅっと握っている。

 そうこうしているうちに、ババ様の家に着いた。部屋に入って、前回のように母の膝の上に乗せられた。



「それじゃあ、今日は初めてじゃし、昔ばなしでもするかの。それは、とても昔のことじゃった…



こうして戦士ロンは、仲間を助け、村を守ったのでした」



ババ様が話し終わると、母達が拍手をしたので、私も同じく拍手した。

よくある昔ばなしだった。狩りから帰ってこない仲間、助けに行くが返り討ちにあい、けがを負う。神に助けられ進化し、仲間を助けてチャンチャン。1個上のやんちゃキッズ達なら、ロンにあこがれそうだな。



「そしてこのことから、我々はロンに敬意をあらわして、ロン族と名乗るようになったのじゃ」



私たちは、ロン族というのか。聞きたいことできたし、質問していいかな。



「ババ様、しつもんいい?」

「よいぞ、なんじゃ?」

「ロン族以外に、族いる?」

「おるぞ。現にトトの母のルーは、フォル族じゃ。ここから一日歩いたところに、フォル族の村があるぞ」

「その村が、私の出身地。グーイに嫁いできたから、この村にいるのよ」



フォル族は、ルーみたいな見た目をしてるのか。毛が少し長くて、角はないのか特徴かな。



「ほかはー?」

「もっと南に行けば、ウサ族がおるかな。東には同じロン族がおる。行くのに半日はかかるがな」

「へー」

「3歳になれば、フォン族、隣のロン族と遊べるぞ。結構交流があるからな」



それは、おいしい情報だ。楽しみなことが増えたな。



「ほかに質問はあるか?」

「ない、ありがとう」

「いいえ。それじゃあ、少し外で遊ぶかの。何かしたいことはあるか」

「あれみたい」

「どれじゃ?」


私は、部屋の端にある本棚を指さした。


「あれか、あれは難しいぞ。本といって、字を知らなくては読めんぞ」

「じーしりたい」

「そうか、ザシィとトトは何がしたい?」

「にんぎょー」

「じー」

「ミアとザシィは、字について教えよう」

「トトは、私たちと人形で遊ぼうか」



 それからトト達は、部屋の後ろの方で遊びはじめ、ババ様は違う部屋から大きい木の板を持ってきた。



「本に挟まっている紙というのは、貴重なものじゃからな。普段は、こういう木盤に書くんじゃ」


見ると、五十音順みたいによくわからない文字が彫られていた。


「これが字じゃ。これらを組み合わせると、言葉ができる。これともう一枚あるが、それは濁音とかじゃから、まずは読みやすいこっちからじゃな」


そう言うとババ様は、文字を指さしながら読みはじめた。さすがに、あいうえお順じゃないけど、日本語みたいだな。ほんといいところに転生したな。今度は、一緒に発音した。


「これらが、基本的な形と思ってくれてよい」

「ババ様、書きながら練習したい」

「ほう、書きたいか。それなら、ここにいる間だけ、小さい牙をかそう」

「それは危ないのではないでしょうか」

「わしらが見てれば、大丈夫じゃ」



ババ様は、今度は小さめの木盤と牙を持ってきた。牙は、ほかの人に向けてはいけないよと、言われたので、元気よく返事をしておいた。

 その後も、字についての講習は続いた。板のほうは、持ち帰っていいと言うので、覚えやすい、あいうえお順に直して書いた。さすがに、筋力的にうまく彫れなかったが、分からなくはないのでいいだろう。ちょっと危なかったのは、書き直した理由を聞かれたことだ。なんとなく覚えやすい順と言って乗りきったが、気を付けないとぼろが出ちゃうな。変な誤解を生まないように、しっかり隠さなければ。


 その日は、さ行まで書いて持ち帰った。


 その後も、3日か4日に1回、ババ様のお話会があった。童話のほかにも、神話、文字、遊び、常識について、話を聞いた。魔法についても聞いて実践したが、誰も魔法は使えなかった。私は、まだうまく書けないものの、すべての字を覚えた。

 やんちゃ坊主らはというと、たまに鬼ごっこすることはあったが、仲良くはなれなかった。ボーはガキ大将みたいだし、ムグとナグはいたずらっ子で、母たちを困らせるし、ドドイは話さな過ぎてよく分からんし、悪すぎる子ではないけど疲れる。



 こうして、学び遊んでいるうちに、あっという間に2回目の誕生祭が訪れた。


 前回同様、ババ様が祝辞を述べた。去年と違ったのは、1個上の子達が小さな、獣の牙の短剣を貰ったことだ。どうやら3歳になると貰えるらしい。



「今年も良き年となるように、かんぱ~い」

「「「かんぱ~い」」」



皆一斉に食べ始めた。



「今年は大会があるわね。ミア、大けがはしないようにね」

「そういえばそうだったな。ミアはすごいから、優勝しちゃうかもな。がんばれ」

「あ、うん。がんばるね」



今年は、組み合い(戦いごっこ)大会するって言ってたな。忘れてたわ、パパにがっかりされない程度に戦おう。

 食事もそこそこに、組み合い大会が始まった。ルールは簡単、素手のみ、3カウント地面に押さえつけたら勝ち。

 一回戦目は、トトだった。気は引けたが、出来るだけきれいに投げて、押さえて勝った。



「ケガしてない?」

「うん、やっぱりミアはつよいね」

「ありがとう」



ケガしてなくてよかったー。

 一息ついてるまに、次の対戦になった。次は、ザシィを倒したナグと戦うらしい。



「おまえも倒して、ボーにも勝ってやる」

「おてやわらかに」


さて、どうするか。ナグは、ひょろ長い。どう押さえつけるか。エビぞりにでもさせて、固めるか。

 はじめの合図で、試合が始まった。ナグが突っ込んでくるので、よけつつ片脚を抱え、持ち上げてこけさせた。あとはすぐうしろで、立ち上がろうとしているナグの足を掴み、背中に乗って、シャチホコみたいにエビぞらせたら、勝負がついた。


「いたいいたい」

「ミアの勝利」

「おつかれさま。もう少し、しなやかさ上げたほうがいいよ。ナグはかたい」

「しなやかさってなんだよ」



私は、その場で前屈をして、地面に手をつけた。そんなことできると言ってナグもやるが、膝にしか手が届かない。



「お前、どうなってんだ⁈」

「今のまいにちすれば、ほぼできるようになる。まいにちやってみて」

「わかったよ。つぎは負けねーからな」



そういってナグは、ムグのところに走ってった。どうやら、さっき教えたことを、伝えているらしい。あそこは双子だし、2人で仲良くストレッチしてくれたらいいな。

 次は大本命、ボーとの対戦だ。



「やっぱり、ナグを倒したか」

「そっちも、ドドイ倒せたんだね」



どんぐりの背比べではあるが、1番大きいドドイを倒してくるのはなかなかだな。先と同じくエビぞり作戦でいいか。ダメでもまだ作戦あるし。


「はじめ」


やはり、合図とともに突っ込んできた。それを避けて足を掴もうとするが、寸前のところでよけられてしまった。さらにのしかかられそうになったので、四足を使って横に跳んで回避した。さっきみたいに、簡単にはいかないか。私は考えていた、もう1つの作戦を試しことにした。


「とった」


避けきれなかったふりをして、肩をつかませた。そのまま腕をつかみ回しながら一緒に倒れ、十字固めをした。昔テレビで言ってた、より痛くするポイントを思い出しながら、ボーの腕を伸ばした。



「いだぃいだぃ、むり、いたい」

「ミアの勝利」

「おつかれ」

「もう1回しょうぶしろ」

「むり。さいごまで気をぬかず、たたかった方がいいよ」

「なんだと」

「あと、もう少しれいせいになった方がいい」



あとはかなり歳の差がある、ラナとの試合かと、振り返って歩き出そうとしたとき、後頭部に衝撃を受けた。


 いった~、なんで目の前にママの顔があるんだ?。



「ミア、大丈夫?、痛いところある?」

「ママ、なに?」

「よかった、みんな起きたわ」

「リマ、巻ける新しい布持ってくるんじゃ」

「わかりました」


みんな何の話してるんだと、起き上がろうとすると、止められた。


「ミアは、安静にしてなさい」

「なんで?」

「あなた頭から血が出てるのに気づいてないの」


言われてみて、違和感のあるおでこに触ってみると、ひりっとする痛みがした。触った手を見てみると、手が赤かった。いつ頭切った?。気づいたからか痛くなった頭で、必死に思い出した。

 確か試合が終わって、後ろから衝撃がはしって…。そうだ、手が出なくて、顔面打つのは避けなきゃって思って、斜めになりながら倒れたんだった。そこから思い出せないから、打ちどころが悪かったんだろうな。

 痛みをそらすために、楽しいことや、獣人のことを考えていると、リマが帰ってきた。畳まれた布を挟みながら、包帯がまかれた。押さえられた後頭部も、案外痛かった。


 その日は、血が止まったものの、すぐ家に帰って寝かされた。




 次の日、布団に座る私の前には、リリとボーが立っていた。



「本当にごめんなさい」



ボーも、ごめんなさいと言って、リリと一緒に頭を下げた。うすうす気づいていたが、昨日の後頭部の衝撃は、ボーが石で殴ったかららしい。素手ならまだいいものの、石で殴ったものだから、後頭部が切れてた。そして倒れた時、打ちどころが悪くて、おでこの右側も切ってしまったらしい。ババ様曰く、子供だから下手したら死んでたかもしれんな、だそうだ。

 


「ボーを許すのも、許さないのも、ミアの自由じゃからな」



さっき、ババ様がそう言ってたな。ボーのしたことは、なかなかヤバいことだったらしい 。

 1,試合が終わったにもかかわらず、無理やり戦おうとしたこと。

 2,将来有望な村長の娘に、怪我を負わせたこと。

 3,故意に、仲間に武器で暴力をはたらき、命の危機にさらしたこと。

が大人たちの話し合いで出たらしい。1、2はまだしも、3がやっぱりまずいらしい。3は元々村のルールにあり、大人ならほぼ追放決定らしい。

 しかし、まだ子供で本人も生きていることもあり、刑に関しては、私に一任された。許さなかったら隣の村に家族で引っ越す、許しても怒られるだろうし、しばらくは、お手伝いやらお勉強やらさせられるらしい。まあ、最初っから答えは決まってるんだけどね。



「ゆるす。ただし、15日間はおてつだい、べんきょうをして反省すること」

「わかったわ。ボーにみっっっちり、叩き込むわ。いいわね」

「うん」

「返事は、はい!」

「はい!」



頭をパシっと叩かれたボーは、いい返事をして部屋を出ていった。リリは、出る前に一礼して、出ていった。



「許してよかったのか?」



ババ様、そりゃ~もちろん見る獣人が3人も減るのは嫌だからですよ、なんて言えないので、年上だけど子供だからと言っておいた。

数日は、病室という名のババ様の家にいた。ずっと字の練習と本が読めたが、食後に苦い薬を飲むのがつらかった。


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