1話
「ンーンン~」
鼻歌を歌いながら、駐輪場に止めていた自転車にまたがった。隣の自転車のサドルに、ブロッコリーが刺さっていたが、あれはどう乗って帰るのだろうか。
まあ、そんなことはどうでもいい。明日は待ちに待った、ケモミミ装備ガチャだ。尻尾と耳が出るまで引いてやる。かっ飛ばして家に帰ろうとするが、学校前の信号で止められてしまった。運悪いなと思いながらも、携帯でもう一度ガチャ内容を確認する。狐もいいが狼の尻尾も捨てがたい、かといってウサギの可愛い尻尾もいいな。
「危ない、避けろー」
「え?」
顔を上げると暗くなり、衝撃が走った。体が熱い。最後の記憶は、赤だった。
「う~」
目が覚めて、いつものように体を持ち上げようとするが、全く持ち上がらない。やっぱり轢かれたのか。目も見えないし、体もうまく動かせないし、包帯巻いてるであろう感覚でさえ感じ取れないし、これはオワタ。
それに周りにだれもいないの、ここ息苦しい、私起きましたよ!。また眠くなってきちゃったしから、寝ちゃいますよ。結局気づかれず、睡魔に負けて寝てしまった。
今度は違和感で目を覚ました。全身が締め付けられている。待って苦しい、ほんとここどこ、夢か?。それにしては痛い。轢かれるし、全身締め付けられるし、もう踏んだり蹴ったりだよ。痛みに耐えていると、締め付けられながらも押し出されていることが分かった。もうわけわからん、出口があるなら早くついて!。
終わりは急に来た。辺りが明るくなり、包まれた。痛かったよ〜。
「うわあぁぁぁぁぁああん。あぁぁううん」
「頑張ったわねメメル、元気な女の子よ。抱けそう?」
「抱きたいわ」
なんかよくわからんけど、涙とまらない。
「無事生まれてきてくれてありがとう」
「可愛いな」
「結局名前は何にしたの?」
「ミアよ。あなたの名前はミア」
「あうぁ」
「ふふ、ママですよー」
「パパだよー」
ミア?。それに、ママとパパって言ったよね。私生まれ変わったんか。
「もうそろそろメメルも休まなきゃ。ばば様とゆりかご部屋に連れいっとくね。村長さんはここに残る?それとも一緒に来ますか?」
「俺はここに残る」
「わかりました」
「ババ様もリマも、手伝ってくれてありがとう」
「いいえ」
「気になさるな、母子ともに元気でわしも嬉しい。ゆっくり休みなさい」
ゆりかご部屋?ばば様?村長?。うーん、泣きすぎたのかな、うまく頭回らない…。
「ふぁ~ん」
あれ、寝ちゃってた。そういえば、私生まれたんだっけ。試しに手足を動かしてみると、ばんざいが出来たが、上にも下にも動かない。
「わ、あーあうぅ」
「今度はザシィね。おむつは濡れてないし、お腹空いたのかしら」
「あいぃ」
「ミアも起きたのね、ザシィに乳あげ終わるまで待っててね」
乳あげるとか、やっぱり死んで赤ちゃんになっちゃったのか。記憶もったままとかラッキー。でもな、昨日ばば様とか言ってたから、超ド田舎だったらどうしよう。電波とどくんかな。前世から何年たってるか分からないけど、獣人キャラのいるゲームやりたいな。また神絵師様探そ。
脳使ったからか腹が減りだしたとき、ザシィが終わったらしい。私の番がまわってきた。ミアちゃん初めてだけど、うまく飲めるかな~とか、人生2回目なんで余裕です。
飲んだ後はしっかりゲップをして、おむつまで変えてもらえた。
「ただいま、赤ちゃん達大丈夫だった?」
「おかえり、ザシィとミアに乳あげて、ミアはおむつも変えたよ」
ありがとうと言って、椅子を引く音が聞こえた。そのあとは、2人が話し始めたので、現状を知るために聞いた。
は、また寝ちゃったか。赤ちゃんだからしょうがないか。昨日の会話を整理する前に、腹が減っては何とやら。泣いて乳をもらった。
腹も満たされたし、整理しますか。昨日聞いたこと思い出す。
どうやら、ここにいる赤ちゃんは3人で、ザシィと私とトト。私の名前はミアで、私の母は明日から子育てに参加するらしい。あと、名前と子育ての仕方的に、ここ絶対日本じゃない。それなのに、二人が話してる内容が日本語で理解できることなんだよな。ほんと謎。
あとはババ様が入ってきたあたりで記憶があいまいになっているので、そこで寝てしまったんだろうな。
「これでよしっと、トトきれいになったね」
「それにしてもホー、子供が生まれてよかったね。しかも女の子」
「ほんとやっとよ。それに同い年に女の子がいてくれたのもうれしいわ」
「それもそうね。一個上4人とも男の子だものね。ミアちゃんが女の子でよかった」
一個上は4人とも男の子なのか。それで会話的に、トトと私が女の子で、ザシィは男の子って感じか。来世は男になってみたかったけど、また女に生まれちゃしょうがないな。前は高校生で死んじゃったし、できるだけ長生きするぞ。
キリがいいので短めです。2話すぐ投稿します。