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第一章 転生しました

 ことの始まりは前世での出来事から。

仕事が終わり、俺は夜の道を歩いていた。車も少ない時間帯で油断していた。俺は車は通らないだろうと赤信号の横断歩道を渡った、それが油断だった。

キキーッ!!

大型トラックが猛スピードで走ってきた。俺がそれに気付いた時にはもう遅かった。

俺は夜道で交通事故に遭って命を落とした。

それが前世での最後の記憶。

 そんな前世を思い出したのは生まれ変わって十六年後。派手に転んで石で作られた道に頭を打った衝撃で思い出した。

「大丈夫か、ジニー!!」

頭を打って倒れた俺は名前を呼ばれる。

ジニー。それが生まれ変わった俺の名前。

「怪我してないか!?」

「あ、ああ…」

俺を心配するこの男は父親のアラン。俺はゆっくりと起き上がる。

起き上がって辺りを見上げると外国のような古い町並みが見える。先程まで思い出してた前世の記憶の町並みとは全然違う。

「平気……一応」

「一度家に帰るぞ!」

「いや、いいって。怪我してないから」

「あんなに勢いよく転んだんだぞ、安静にしたほうがいい」

この通り、過保護な親父で参っている。今さっき前世の記憶を思い出しただなんて言ったら余計に心配するだろう。

「わかった、帰る」

俺は親父に言われるまま実家に帰ることにした。

俺は先程の頭を打った衝撃で前世を思い出した。そして今の俺がいるこの世界は前世の世界とは違うことも。


  ※


 生まれ変わった俺の住む世界はRPGやファンタジー小説でよく見るような世界だ。前世の記憶がそう言っている。俺がいた世界にはスマホやコンビニがあって…この世界とは全然違う覚えがある。

俺のこの世界の役割は……

「ただいまぁ」

「ただいま」

「お帰りなさい旦那様、若様」

実家に帰ると従業員が挨拶をする。実家の中は一般家庭というより販売店に見える。

首のないマネキンにドレスやコートが着せられているのが四つある。木の台の上には畳まれたTシャツのようなものとスボンがある。それに壁には帽子がかかっている。つまりここは服屋である。

この世界の俺の役割は仕立屋の息子。店先は売り物が並べられ奥のほうには大型のミシンが多く並んでいる。

「ジニーがさっき頭を打ったんだ、医者を呼んでくれ」

「いや、そこまでしなくていいから!」

親父が従業員に医者を呼ぶように指示し、従業員は店を飛び出す。


  ※


 「――異常はありませんでした」

俺は自分の部屋で初老の男の医者と二人きりになり、見てもらった。どうやらかすり傷だったらしい。

「何か気になることは?」

医者は椅子に座る俺に問う。

「えっと、……こんなこと言っていいでしょうか?」

「なんです?」

俺は今ある自分の疑問を語る。

「信じてもらえないかもしれませんが俺、頭を打った時に前世の記憶を思い出したんです……」

俺は医者に前世の記憶を話した。日本という国に生まれた二十七歳で死んだ普通のおっさんだった記憶を。

「……」

医者は真剣に話を聞いてくれているように見える。

「そうか、君もか」

「え?」

医者は慣れた顔になる。

「君のような話をする患者は何人か診てきた。それに転生なんてよくある話だ」

「はい??」

この医者曰く、俺のように前世の記憶を持つ者はよくいるかつ俺がいた世界から来た人は結構いるらしい。

「私の知り合いに魔術師がいるんだが、ソイツも君のように違う世界から来た者の相手をたくさんしてきたそうだ」

「つまり俺のようにこことは違う世界で前世を生きていたという人は少なくはないってことですか?」

「ああ。こないだ知り合いの魔術師が出会った勇者は前世だと『高校生』という役職だったとかなんか」

「そんな若い子が!?」

俺の前世の話を信じてくれた医者と一時間くらい盛り上がった。俺がいた世界で生きた人はこの世界にそこそこ多いらしい。

そして俺は誓った。前世のような社畜人生じゃない、自分に正直な人生を送ろうと…


  ※


 前世の記憶を取り戻して一年後の春。俺は十七歳になった。

「親父、工場の作業着七着追加注文入った!」

店の作業場で注文を受けた品が書かれたリストを読み上げる。

「あいよー」

親父は大量の厚手の布を運びながら返事をする。

仕立屋での俺の仕事は注文を取ったり顧客を探したりする営業マンのようなもの。前世でもサラリーマンしてたからか結構順調だ。しかも我が実家ながら無理なことはさせられず従業員も大事にされ、なかなかホワイト企業だ。

「ジニー、役所に書類渡しに行ってくれ」

「ああ。行ってきます」

親父に書類の入った封筒と渡されると俺は店を出る。

「……あれ?」

店を出ると見慣れない兵士のような男達を見かけた。黒い軍服に青い槍を持っている。

「なんだろう、あいつら」

男達が気になりながら、役所に向かって歩く。

――この時俺は役所に行ったことを後で死ぬほど後悔するとは思ってもみなかった。


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