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"ZIG=ZAG" 〜〜ジグザグ〜〜

 ”予言”。


 それは、妖怪:くだんが有する能力である。


 普段はほとんど眠っている牛妖怪のくだんだが、彼は自分達に訪れる”不吉な未来”を確実に予言する事が出来るのだ。


 だがそれだけの強大な能力には当然、代償とでもいうべきモノがある。


 くだんは”予言”を口にする事によって、その命を失う……という宿命を持っているのだ。


 ゆえに、くだんが不吉な未来を言い当てる事が出来るのは、その生においてたったの一度きり。


 だが、それでも言わなければならない事がある!と言わんばかりに、くだんは決死の形相を浮かべながら予言を口にしようとする――!!


「大変だ!この場にッ……!!」


 けれど、その試みが成功する事はなかった。


 気づけば、彼の口は掌でがっしりと掴まれていたからだ。


 くだんの顔面を掴んでいるのは、捕縛されていたはずの四人の内の一人であるチャラついた感じの苦労人――裕太ゆうただった。


 困惑するくだんに対して、裕太が何の気なしに呟く。


「それ以上は喋らない方が良い。……その先を口にしてしまえば、お前は死んじゃうんだろ?」


(……ッ!?コ、コイツ、オラの事を……ッ!!)


 裕太が見せた確かな気遣いに驚愕するくだん。


 その僅かな隙をついて高速で放たれた裕太の手刀が、くだんの意識を瞬時に刈り取っていた――。





「ッ!?な、なんだとッ!」


 突然の事態に困惑する鎌鼬(かまいたち)


 拘束を気づかれないように解いただけでなく、俊敏さに自信のある自分が全く感知出来ない速度で、背後に控えていた”くだん”を瞬時に無力化する。


 まさに異常事態であるが、見れば彼だけでなく、スキンヘッドの男と陰鬱そうな雰囲気の青年も拘束を解いて立ち上がっていた。(鉄平という少年は両手を縛られたままだったが、何故か自慢気な表情のまま体育座りをしていた)


 全く訳が分からないが、この場の警備を任された者として、事態を捨ておくわけにはいかない。


 鎌鼬は配下の者に「全員、かかれぇっ!」と、檄を飛ばしていた。





「よ~し!俺達も早速やるぞ、ナッチ!!……って、何だこりゃ?」


 スキンヘッドの男:大輔だいすけと陰鬱な雰囲気を纏った美形の青年:那智なちの眼前には、いつのまにか施錠された大きな宝箱らしきモノが出現していた。


 拘束されたままの状態にも関わらず、瞳をキラキラ輝かせた小柄の少年――鉄平てっぺいが、「ウォッ!?それ絶対、オタカラじゃん!早くゲットして悪い大人を改心させようぜ!」などとよく分からない発言をしているが、そんな仲間達を制して宝箱を調べ始める那智。


「落ち着け……コイツは恐らく”ミミック”と呼ばれる怪異の類だ。……俺が対処するから、少し待っていろ」


 ”ミミック”とは、普段は宝箱に擬態しているが、欲深な人間などが考えもなしに手を伸ばすと、中から飛び掛かり襲い掛かってくるという奇襲を得意とする恐るべき怪異の事である。


 那智はミミックを自分に任せるように告げると、手早く宝箱の表面上を撫でたりしながら確認していく。


 その間にも、鎌鼬の命を受けて迫ってきた他の妖怪達を、大輔が身体を張って食い止める――!!


 そんな危機的な状況下にも関わらず、那智は瞬時に――かつ的確に、このミミックの情報分析を終えていた。


(建物内ではなく、外部にこの怪異を配置するというのは意表をつく意味ではなるほど、よく出来ているかもしれん。……だが、このミミック。外部にそれほど傷や汚れがなく、地面を引きずったりした痕跡がないことからして、実戦経験に乏しいのは明らか……!!)


 そこから導き出される答えは――ただ一つ。


(恐らくは、両親のもとで大事に育てられたまさに”箱入り”。だが、周囲の想いに反して、本人自体は好奇心旺盛で活発な性格、と見た――!)


 おおかた、両親に自分一人で出来る事を証明するために、反対を押し切って今回の作戦に参加したに違いない。


 だが、どれだけやる気に満ちていようと、所詮は外の世界に飛び出したばかりの世間知らず。


 そういう者達を食い物にする汚い大人を、那智は腐るほど目にしてきていた。


(箱入りならば、"脅迫耐性"はほぼゼロに等しいに違いない……!!)


 そう判断した那智は、素早くポケットから取り出した紙にペンで『お前の正体が、ミミックである事を知っている。……この事を"検非違使(けびいし)"や"退魔師(たいまし)"にバラされたくなければ、誰にも言わずに今すぐ校舎裏に来い』という文章を書き込み、宝箱の(ふた)の間に挟まるように投函とうかんする。


 案の定、自分の読み通りに怯えた表情をしながら校舎裏にやってきたのは、ツインテールの髪型に高価な宝石をふんだんにあしらったビキニアーマーのような格好をしたミミック少女であった。


 『正体を退魔関係の人間達にばらさない』事を条件に、なし崩し的にミミック少女と関係を結んだ那智は、彼女の仲間である妖怪達が必死に戦っている姿を尻目に物陰で何かイヤらしい感じの事をしたり、自分の事を凄く心配しながらも、信じてこの作戦に送り出してくれたミミックの両親に電話させながら、通話越しに彼女を辱しめたりする事で、互いの関係を深める事に成功していた。





 ――そして、再び校舎裏へと戻ってきた二人。


 この寒空の下、煌びやかな宝石をあしらえたビキニという寒々しい恰好だったミミックだったが、最初のときとは違い、那智から手渡されたファーコートを上から羽織っていた。


 那智曰く、『お前が身に着けている装飾より遥かに劣るような安物を纏わなければならない屈辱に、その身を震わせるんだな……!!』などと嘯いていたが、このファーコートの値段に限らず、彼の本心がそんなところにないのは誰の目から見ても明らかであった。


 ミミック少女は強く脈打つ自分の胸元を押さえながら、この短期間のうちに自分の中に強く存在を打ちつけた眼前に佇む青年――那智の事を、潤んだ瞳で見つめる。


 これまで彼に対して強情な事しか言葉に出来てなかったが、伝えなければならない気持ちがある――。


 とうとう、意を決したようにミミック少女は口を開く――!!


「あ、あの、私!!……色々言ってきたけど、実は、貴方の事が……!!」


 だが、その先を制するかのように、那智が強く彼女を睨む。


 それだけでミミックは、この青年に深く刻み付けられた主従関係により言葉を告げなくなっていた。


 だが、それでもなお、どうしても言おうとしたのだが――。





「もうお前も分かっているだろう。俺はミミックであるお前の罠をローリスクで無効化するために、脅迫してお前の心を弄んだだけに過ぎない。……お前はただ、俺に利用されていただけだ」





 ――違う。そんな事はない。


 その気持ちがあったとしても、”脅迫”という歪ながらも二人で築いてきた関係は、それだけじゃないはずだ。


 そう言いたかったが、声がくぐもってしまい言葉に出ない。


 そんな彼女に視線を合わせることなく、那智は背を向ける。


「……そして、その目的は既に達成された。これがお前に対する最後の命令だ」





 ――俺の事など、さっさと忘れろ。





 そう一言だけ告げると、自分の後ろで嗚咽を漏らすミミックに振り返ることもせず、那智は仲間達が待つ戦場へと歩みを進めていく――。





「……それでも、私は、貴方の事が……!!」


 自分のもとから既に去り、姿の見えなくなった那智の方向をいつまでも眺めながら、静かに涙を流して彼が唯一自分に残してくれたファーコートをギュっと握り続けるミミック。


 那智は見事にミミックを心ごと解錠する事に成功したが、その代償はあまりにも大きく、二人の心に消えない傷跡を残す形となっていた――。









(……へっ、感じるぜ!!どうやら、那智ナッチが上手くあの”ミミック”を何とかしてくれたみたいだな!)


 スキンヘッドの青年:大輔だいすけは本能的に那智の勝利を確信していた。


 現在この裏庭では、大輔が四体の妖怪達を相手に大立ち回りをしていた。


 離れたところでは、裕太がこの区域のトップらしき鎌鼬かまいたちと対峙しており、大輔は頑張ってくれている裕太や那智に負けてはいられない、と言わんばかりに闘志を奮い立たせていた。


 そんな大輔を見ながら、彼を取り囲んでいる妖怪達は苦々しい表情を浮かべる。


「もう~、なんでコイツここまでしぶといん!?アタシも、そろそろキツイんだけど!?」


「泣き言を言うでない一つ目の!……それにしても、ただの人間がまさかここまでやるとはの……!!」


 大輔に向けて懸命にクナイを投げ続ける一つ目小娘を叱咤しながら、児泣きショタ爺はチラリ、と縛られたままの小柄な少年:鉄平の方へ視線を移す。


 余裕そうな笑みを浮かべながら、「頑張れ、頑張れ!」と応援する傍らには、同じこの裏庭の警護妖怪だった『手の目』が無様に転がされていた。


 手の目は他の仲間達が大輔相手に手こずっているのを見るや、人質をとって状況を自分達に有利なモノに移行しようと、速攻で鉄平のもとに向かった。


 だが、攻撃を受ける事すら度外視しながら、それ以上の鬼気迫る様子で追ってきた大輔によって一撃で倒された事により、妖怪達の頭数を減らすだけの結果となってしまったのだ。


 人質を取るのは有効的な手段に違いないが、まだコイツ以外の人間が残っている以上、これ以上味方を再起不能にするわけにはいかない――。


 ゆえに児泣きショタ爺は、自分と同じ豪快な力重視の妖怪:『しゅぼん』や、高速でヒット&アウェイを繰り返す戦法を得意とする『送り狼』、そして、クナイによる巧みな投擲攻撃を武器にする『一つ目小娘』の四体で協力しながら、じわじわと大輔を追いつめる事に成功していた。


 ……味方が一体倒されたモノの、このまま行けば自分達が勝てるのは間違いない。


 そんな慢心から、朱の盆が戦闘中に”景気づけ”と称して好きな酒を飲み、口を滑らすのも無理はない事と言えた。


「ガハハハハッ!!壊滅的に頭悪い底辺高校の学生さんにしちゃ、よくやったみたいじゃねぇの。兄ちゃん!……その様子を見るに、実際、オメェのお友達はあのミミックすら何の犠牲も払わずに何とかしちまったみたいだし、そこは素直に褒めてやるよ!」


 けどな、と朱の盆は続ける。


「悲しいかな、テメェらは何の力も持たない単なる人間!しかも、その中でも群を抜いた落ちこぼれときたもんだ!!場当たり的に動いてみせたところで、底辺はどこまで言っても底辺に過ぎねぇんだよ!!」


 ギャハハッ!と笑ってみせる朱の盆。


 それを見かねた児泣きショタ爺が「もう良い、さっさと此奴を始末するぞ!!」とトドメを刺すための一斉攻撃を仕掛けるための指示を出した――その矢先だった。





「何の犠牲も払わずに、だと……?馬鹿言うんじゃねぇ!!離れていても俺には感じられるぜ。ナッチは今、とても傷ついているって事をなぁッ!!」





 突如放たれた大輔の気迫を前に、思わず動きを止める妖怪達。


 あれだけ煽っていた朱の盆すら、酔いが醒めた表情でポカン、と呆けたように大輔の顔を見つめていた。


 追いつめられた大輔からすれば、今はまさに千載一遇の好機であるはず。


 だが、彼は攻撃に転じる様子を見せるでもなく、静かに言葉を続ける。


「ナッチだけじゃねぇ。アイツが無事だって事は、お前らの仲間であるミミックだって、今もどこかで傷ついているに決まってるだろう。……なのに、お前ら!何でそんな事も分からねぇんだよ?」


 大輔の言葉を前に、思わず息を呑む妖怪達。


 そんな彼らを前に、大輔はなおも続ける。


「……確かに俺はお前の言う通り、人様からすればロクでもない生き方をしている”底辺”って奴なのかもしれねぇ。……だが、どんだけ頭悪くても!お前らみたいに、仲間を想う気持ちを母ちゃんの腹ん中に置き忘れるような事だけは!!生まれてこのかた一度もしてないつもりだぜ!!」


 それは、ミミックの悲痛な気持ちに寄り添う様子も見せずに、大輔を『何も持たない』などと嘲笑う朱の盆や仲間の妖怪達を糾弾するような大輔の魂からの叫びだった。


 その言葉を前に、見開いた表情を浮かべる四体の妖怪達。


 ……だが、そんな言葉にほだされるほど彼らは甘くない。


 彼らとて、非情に徹してでもこの場を守り抜かねばならない使命があるのだ。


 ゆえに、ここで闘志を鈍らせるという選択などあるはずもない。


 むしろ先程よりも非情な心を己の中から呼び覚まし、彼らは大輔を確実に仕留める事を決意する。


 朱の盆も先程までの遊びや慢心の表情を消し去った、本気の闘志をその相貌に漲らせていた。


 そんな彼らを前にしながら、更なる絶望的窮地に立たされたにも関わらず、大輔が余裕のある表情をしながら、おもむろに自身の懐に手を伸ばす――。


「どんだけ御大層な”目的”とやらがあろうが、仲間を屁とも思わねぇヤツにくれてやるほど、俺の命は安くはねぇ……!!代わりに、お前らの熱い魂を呼び戻すような、とっておきの”BE-POP”な演奏を聴かせてやるよ!!」


 そう口にしながら、彼は取り出したマイクを高らかに掲げていた――。









(”BE-POP”な演奏、だと……ま、まさか、コイツらはッ!?)


 全力で斬りつけながら放つ自身の両鎌による攻撃を、なんなく捌ききっている裕太と対峙しているときに聞こえてきた、大輔の発言。


 その発言を皮切りに鎌鼬は、自分達が戦闘しているにも関わらず、先程物陰で何やら情事らしき行為に耽っていたミミックと那智なちの光景を思い出していた。





 何の退魔術らしきモノも使わずに、自分達妖怪を相手取る尋常ならざる戦闘力。


 脅迫関係からなし崩し的に始まった、陵辱に見せかけた純愛劇。


 そして今、このスキンヘッドの男が口にした"BE-POP"という単語。





 ――それらの特徴・言動から導き出される結論は、ただ一つ。


「ッ!?貴様等、何をモタついているッ!!……コイツ等は、紛れもなく”山賊さんぞく”だ!!さっさと、殺す気でかかれッ!!……かからんかぁッ!!!!」


 冷徹な指揮官としての仮面も忘れ、鎌鼬はただひたすらにそう叫んでいた――。





 ”山賊(さんぞく)”。


 それは、強大な異能や武力を誇る検非違使(けびいし)達の支配や、現在の日本で猛威を振るう”神獣”の脅威すら恐れることなく、己の野心や”BE-POP”な意思を持って、新時代を切り開こうとする者達の総称である――!!


 彼ら四人が単なる人間ではなく、”山賊”であるならば、半端な戦闘力を持っただけのそこいらの妖怪では太刀打ちできるはずもない。


 なのに自分達は、彼らが底辺の吹き溜まりとして有名な”ひよこ高校”の生徒であるというただそれだけの事で彼らを侮り、その脅威を前にしておきながら、現状に至るまでその可能性を考える事すらしてこなかったのだ。


(高校に通う”山賊”達がいたとしてもおかしくはないはずだろうにッ!?……わ、私は何と言う失態を……!!)


 悔やんでも悔やみきれないと言わんばかりに、歯ぎしりする鎌鼬。


 だが、考えてみれば当然の事である。


 昨今活発化している新興武装組織や、地元のヤリサーのメンバー達ですら寄り付かないようなこの呪われた地に、単なる学生達が”肝試し”程度の感覚で足を踏み入れるはずがないのだ。


 それでもなお、強大な”七つの怪談”という怪異が(ひし)めき、妖怪達が拠点を構えながら”ネコ丸”という至高の力を守ろうとするこの廃墟に訪れる者がいるとしたら――。


 それは、何物をも恐れずに自分達の道を切り開いて行く”山賊”という存在に他ならない――!!





 このまま、あの大輔(だいすけ)という山賊に魂ごと焼き討ちし尽くすような熱唱をする事を許してしまえば、この場にいる自分達は確実に”BE-POP”な旋律に呑み込まれる事は明白である。


 いや、自分達がこの場で敗北するだけならば、まだマシ……。


 もしもこの山賊達が、妖怪神や七大妖怪王達のもとまでたどり着いてしまえば、一体どうなってしまうのか――。


 気づけば、鎌鼬は眼前の裕太から完全に背を向けると、そのような思考を振り払うかのように無我夢中で大輔のもとへと疾駆していく――!!


(もはや、この作戦の成功による名誉も恩賞もいらぬッ!!……我ら妖怪達の未来(あす)のために、コイツは俺が命に懸けても殺すッ!!)


 取り囲んでいた妖怪達をも抜き去り、大輔の前に躍り出た鎌鼬による高速の刃が振り下ろされる――!!


「死ぃ……ねぇぇぇぇぇぇっい!!!!」





 だがそれよりも早く、大輔がマイクに向けて声を張り上げる――!!





「……ッ!?」


 辺り一面に響き渡る大輔の熱唱。


 全く心に響くことはないが、変わりに鼓膜をつんざき心臓を締め上げるがなり声。


 激しい曲調なのに、何の波風も立たない(なぎ)のような抑揚のなさ。





 ――何故、ここに『演奏停止』機能がないのか。


 ――とゆうか、ここはもしやカラオケボックスではないのか……?


 ――延長する気はないので、早く家に帰してください。





 異口同音なれど、そのように錯乱したとしか思えない考えに満ちた宇宙が、この場にいる全ての妖怪達の脳内に広がっていく――。


 ……そう、これ以上言葉を悪戯に重ねる必要はないだろう。


 とどのつまり、この大輔という山賊は――。





「ま、紛れもない……音痴そのものッ!?」





 大声量の中、この無念を誰かに知らせようとでもするかのように、自分達が直面し知り得た真実の理を叫ぶ鎌鼬。


 だが、そんな彼の奮闘もむなしくかき消されながら、現在どこら辺のパートが流れているのかも分からない、まさに終わりの見えない混沌へと、妖怪達の意識は呑み込まれていく――。









「ふい〜、終わった終わった!!まさに、これ以上とない"BE-POP"な時間だったぜ!」


 そう口にしながら、マイクをしまい一息つける大輔。


 彼の眼前には卒倒している妖怪達、両耳をふさぎながら苦笑の笑みを浮かべている裕太、ミミックのもとから帰還してきた呆れ顔の那智……そして、両腕が縛られたままだったため、妖怪達と同じ末路を辿った気絶中の鉄平の姿があった。


 鉄平の頬を叩きながら、何とか彼の意識を戻させると、一行は倒れていた一つ目小娘から、自分達のスマホや鉄平のデジカメを押収する事に成功した。


「やった〜〜〜!!俺の愛しのカメラちゃんが、返ってきたズェ〜!!」


 そんな鉄平を尻目に、大輔が一つ目小娘の頬をペチペチと叩く。


「オラッ!特に愛とかはないけど俺がスッキリしたいから、こんなとこで寝てないで、茂みで変な事するぞコラッ♡」


「よせ。こんなところで道草食ってる場合か、雑食ボウズ。……さっさと、先に急ぐぞ」


 那智の制止を聞いて、しぶしぶその場を離れる事を了承する大輔。


 そんな去り行く彼らに、消え入りそうな声で――けれど、確かな意思を持って言葉を投げかける者がいた。


 ――決死の形相を浮かべた鎌鼬である。


 気力で何とか意識だけは耐え抜いた彼は、憎悪のこもった瞳で四人を睨みながら、怨嗟の呪詛を放つ。


「……な、何が"BE-POP"だ……!!貴様らの、どこに、そんなモノがある……?許さん。断じて許さんぞ……山賊どもめ!!」


 そんな鎌鼬の視線にも臆することなく、正面から受け止めた大輔が意気揚々と答える。


「"山賊"なんてざっくばらんな呼び方はよしてくれや。……恨まれるのは構わないが、野暮だけは互いに損しかしねぇやい」


 何より、と大輔はその名を口にする――!!


「俺達は、ひよこ高校2年F組が誇る最強の山賊集団――"ZIG=ZAG(ジグザグ)"っていうイカした名前があるんだぜ?……俺達の事は、そう呼ぶんだな!! 」


「ジ、ジグザグ、だと……?」


 それは、最後まで耐え抜いた鎌鼬が掴んだ唯一の功績だった。


 ――だが、それを仲間に伝えるための気力は、既にない。


 鎌鼬は無念さと安堵が入り交じる不思議な表情を浮かべながら、その意識を静かに手放していた――。









「よ〜し、お前ら!!これから、この廃墟に眠るお宝をゲットしに行くぞ〜!!」


「オォー!!」


「あ、うん……オォッ!」


「……」


 大輔の呼び掛けに全力で答える鉄平と、恥じらいを捨てた裕太。


 そして、ノリが悪すぎる那智。


 彼ら四人による山賊団:"ZIG=ZAG(ジグザグ)"の猛威が、ヒナタ達妖怪軍団に迫ろうとしていた――。

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