プロローグ 〜〜二人の青年と目映き光〜〜
「この【妖怪大戦争】っていう企画を起ち上げた”ネコ丸”って奴の面子を潰すために、不毛で泥沼な戦争を引き起こそうズェ……!!」
「良いズェ……!!」
2人の男子高校生が帰り道に『小説家になろう』という小説投稿サイトを閲覧しながら、軽い調子でそのような益体もない冗談を言い合っていた。
最初にそのように呼びかけたのは、久本 礼一の方だった。
彼は好きなアーティストは誰か?と聞かれたら、真っ先に『”HEAPS≪ぼた山達≫”』というトップアーティストグループの名前を上げることからも分かる通り、クラスの中心で頻繁にイベントなどに興じるのが好きな典型的なチャラ男とでもいうべき人物だった。
礼一の呼びかけに同意した隣の青年は、彼とは対照的に特徴らしきモノがそれほどない――端的に言ってしまえば、冴えない部類の男子生徒だった。
彼の名前は、後野多 進。
礼一と違って休み時間は教室の片隅で一人、『アカシック・テンプレート』が執筆した典型的な”山賊小説”を読みふけっているオタク系男子だった。
彼らは互いに全然違う気質の性格・人間性だったが、家が隣同士の”幼馴染み”だった事もあり、不思議と昔からウマが合っていた。
この日も別々のクラスながら互いに何の用事もなくたまたま鉢合わせした二人は、そのまま適当に一緒に寄り道しながら帰っていたのだが、会話も途切れたので何とはなしに進が『小説家になろう』でそういう企画を起ち上げた人物がいる事を礼一に教えたのが、今回のやり取りの発端だった。
軽口を叩きながらも、彼らとて分別が出来ない年齢ではない。
礼一も進も、本当は分かっていた。
例え、今の現代社会がどれほど不安定で激動の中で情勢が変化しようとも――。
例え、自分達がどれだけ超メジャー級の熱いBE-POPな歌を聴きまくり、大人気の躍動感溢れる山賊小説を読み漁ろうとも――。
何ら特別な”何か”を持たない自分達のような凡人に、世界を変える事など出来るはずがないのだと――。
そんな諦めを払拭するかのように、言葉だけは”大言壮語”とも”不謹慎”ともいえる冗談を口にする。
――何も変えられないのならせめて、自分達のこの友情くらいは、何があっても不変のモノであって欲しい。――
言葉にするにはあまりにも照れ臭いそんな”確認”の意味を言外に込めて、2人はこれまでと変わらないくだらないやり取りに興じる。
そして、このまま何事もなくそれぞれの家に帰るだけ……のはずだった。
「「ッ!?」」
刹那、轟音を響かせながら盛大に周囲に激震が走る――!!
突然の異常事態を前に、2人はパニックに陥っていた。
「ッ!?な、なんだ、こりゃあ!?」
「せ、盛大に揺れてるよ!礼一!?」
「そんなことよりもアレを見ろ、進!!……あそこで何か光ってるぞ!!」
礼一が指さしたその先。
そこには、眩き輝きを放つ光の天球が、夕闇に染まろうとしていた街を照らすように出現していた――。
 




