#7 夢と魔法の遠足-2
見ての通りボクは快楽に包まれている。何故なら、柊念の乗りたいらしい某山岳ジェットコースターの待ち列が必要以上に長くキャラメルポップコーンを食べる時間を延長してくれるからだ。
そんなボク達だったが、待ち列の前にソロで並ぶ好青年によって平穏は崩された。
「お前らもこれ乗るのか?なんなら両手放しで乗ろうぜ!」
ボクは安全バーすらいらないがな。
「全種族の魔王たる者して安全配慮は怠ってはならぬ。ガイア種族に代々伝わる教えさ。」
怖いだけだろ。
「あ、あのぅ…」
お前いたのか。なにか言いたそうだな。
「私怖いから…誰か守って。」
(これを機に私の下僕が増えるの!)
ごめん突き落としたろか。
「音聖ちゃんだっけ?オレとそこの筋肉がいれば安心さ。」
筋肉だけで十分だろ。
「…ありがとね」
(キモイな。カッコつけ)
お前も可愛小ぶりキモイ。
「ダチなんだ。当たり前だろ!」
(交友関係増やした方が凪那ちゃんの好感度が上がるだろうな)
今の凪那のお前に対する好感度は氷点下だよ。
「おっあと少しだ!」
瑠車アラームが鳴ってるしそろそろキャラメルポップコーンを片付けないとな。パイロキネシス。
ポップコーン全体を口の熱で溶かす。それを液体のように飲み込むのだ。
ボクも実を言うとジェットコースターは得意だ。何故なら予知能力でレールの方向を事前に知ることができて恐怖が全くないから。そこそこの無重力感に吹き付ける自然風。空を飛べるボクにとっても他の干渉でのこの感覚は新鮮だ。楽しもう。
ん?どうしてボクが音聖ちゃんの隣なんだ?お前ら守るんじゃなかったのか?
「あ、音聖ちゃん隣じゃないのかー。まぁそこにいるキノコに守って貰えー!」
殺すぞ。
「…舞崎くん、守って。」
(キター!寝息でア〇ニーしてきた甲斐があったなー)
流石に自慰行為は引くけど寝落ちしたときに残ってくれたのは精神的に安心した。
「わかったから腕離せ」
ボクは純粋にビッグ〇〇〇ー・マウンテンを楽しみたいのだ。少しでも気を逸らすようなものは必要ない。
「やだ」
(さぁ出発よ。照れ隠ししないで私にもっと近づきなさい!)
お前は本性まるだしだけどな。やれやれ、透明化したスマホでお前の素のビビる顔をキャプチャしてやるから安心したまえ。
結局ボク達を乗せたライドは風をきって走り回った。後ろの二人の奇声のお陰でコースの読みにズレがでてかなりの恐怖体験をした?ノーノー。ボクはこうみえて25回これに乗っているのだ。コースの一本ぐらいは脳にインプットされている。
「次どこ行く?あ、昼食の時間じゃん!」
柊念、厨二キャラはどこいった。まぁたしかにもう昼だな。BSMの待ち時間があまりにも長過ぎて体内時計に誤差を…まではいかないが体感時間が少し短くなったのだ。
「俺美味い店知ってるぜー!」
お前どうせステーキとかだろ。
「ステーキのな」
帰れ。
「ステーキもいいけど斬鉄剣に委ねたオレの味覚が疼くレストランがすぐそこにある。そこに行こうぜ」
(そこで凪那さんと約束してるんだ。頼む隆斗)
ダークドラグーンな。まぁいい。奇遇にもボクもそのレストランに行きたいからな。
「ボクもそこがいい。」
ん?
(ま、ま、舞崎くんと私の好みが一致する…?)
「私は…いやいや同じくそこがいい!」
柊念と食の好みが一致するのか。よかったな。
「じゃあ俺も着いてくか!」
(ステーキェ…)
お前優しいんだな。
ネイティブ・アメリカンって感じの木製の落ち着いた店内。(※フィクションです。)平日だから席はガラ空きだな。見通しの良い窓際に席を構えた。柊念がスマホを少し見ていると凪那もきたようだ。さてと飯の時間だ。ボクの脳を休めるとするか。幸いデザートにキャラメルアートパンケーキ(某黒い剣士のアニメを連想するな)があったからそれは最初にキープ。あとはボクの好きなチキンカットダブルバーガーのセット。これは幼い頃からの大好物で、パン生地にかかったシナモンソースとチキンパティに広がるスパイスとのマッチテイストが最高に美味しい。
「ダークドラグーンよ、注文を決めるのが随分と早いようだな。もしや貴様ソムリエか?」
消費者です。カスタマーです。
「そういう柊念も早いな。俺はビックサイズがいいな。」
適量を食うことだな。
「私はサンドイッチでいいや」
凪那、ここのサンドイッチは巨大だぜ。
「わ、私は…わたし」
(一番女子力の高い注文はこれに決まってる)
何だ?言ってみろ。
「ダブルチーズローストのスモールサイズ!」
正解。ドヤ顔はやめろ。まぁいい。このアットホームカフェテリアは雰囲気によらずスピードメイクだからな。ほらもうきた。いただきます!
昼食を終え、目星ちゃん達と合流。チェックポイントを通った後はなんか知らんけど10人ぐらいのグループに成長して緩めのアトラクションを回った。ボクは目立ちたくないから柊念とコソコソ最後尾をついて行っただけなのだが、何故かグルの一人がボクと目星ちゃんがデートいや会話したことをチクリやがったせいでボクは目立った。たまにはいいや。
遠足楽しかったな。来年は修学旅行だ。ボクとしてはクラス替えが寂しいと思えるほど今日は楽しかった。
はずだった。
「ねぇねぇ嬢ちゃーん、コレ持ってない?カネだよカネ」
やれやれ。壁ドンの仕方が下手すぎるな。
「持ってないです!」
嘘つけ。
「いちえんもでちゅか?」
相手は赤ちゃんかよ。仕方ない。相手は五人、ボク一人で目立たず対処できる程度だ。
って音聖ちゃんじゃねえか!
「隆斗くんっ!」
(チャンス到来!)
勘弁してくれ。もしボクが平凡な華奢野郎だったらお前助からんぞ。
「なんだテメェ。金出せよ」
ボクの胸ぐらを掴むってのはな、
「…なんだやんのか?ア?」
「アバヨ」
お前の腕が折れるって意味なんだけどわかる?
「ああァァァァァあいてェェエエ工」
「なんだなんだ?全員でかかれ!」
夢と魔法の国へようこそー!ボキボキ。音聖ちゃん、ボクを怒らせないでね。
「やば!かっこいいっ」
「夢と魔法の遠足は楽しく終わらなくちゃね。」
次回「舞崎の親戚はある意味超能力者」




