#5 無力先生
ボクは絶句した。ボクの心臓の次に大切なものに凪那なんかの唾液が付着したのだ。なんというかこう…悲しみの涙に溺れる。
凪那自体が不潔だって意味じゃない。凪那自身清楚なルックスだし綺麗な髪にインナーカラーのモカ色?が染まってるだけ。ニキビないしボク以上に清潔だと思う。でも今回はそんなの関係ない。このキャラメルマキアートに唾液を付けていいのはボクだけだ。許さねぇ。絶対に許さん。お前のID控えたからな。
「な、なんなの?」
お前のIDリフレインしたんだよ。
「ふ、ふっふっふ、いいだろう。ボクはこんなことで怒らない。だが!ボクのキャラメルマキアートに唾液を付けた罰だ。覚悟しと…あれ、ない。」
凪那はテレポートができるのか。テレポートを使ってボクのキャラメルマキアートを奪ったのだ。いや冗談抜きてやめてほしい。
「あ、目星ちゃーん!」
ん?ボクは振り向いた。しかしボクの耳はその音を捉えた。ジュルジュル聞こえたぞ。
「もうさ、飲んだことは怒らないからとりあえず返してくれ。」
「はーい」
絶対見返してやる。覚悟しやがれ。するとダル絡みから帰還した柊念が現れる。お疲れ様。
「ダークドラグーンよ、先に逃げるとは卑怯な…。」
悪かったなー。
「無属性もさっきは悪かったよ。でもお前も逃げたな…。」
「私はホーリードラグーン!間違えちゃ駄目」
お前は口付け廃人だよ。
「じゃあそれでいいよ。ダルいなァ…。」
ホーリードラグーンの唾液付き回復薬グレート飲みまーす!ゴクゴク。鳥肌がやばいな。冷水機に行くか。チャイムが鳴った。口がムズムズする。
「柊念、ボクは今日ホーリードラグーンに奢らんとダメだから一人で帰るねー」
「はいよ」
そういえばまだ2日目なのに結構自然な感じだな。ボク達。
あ、そうそう。新学期早々の一時間目は数学Aだそうだ。担当教師は無力有力先生。とても楽しみだ。さっさと授業課題を終わらせて寝るか。
「はーい、授業を始めるよ。座れー。」
座ってる。
「今年度数学Aを担当する無力有力です。まぁここは担任だから知ってるよな。てな訳で授業の進み方を説明する。」
本読む。寝る。瞑想する。テレパシーで目星ちゃんと談笑する。
「まず授業は基本ノートに板書を移す形式だ。」
はァ?
「こら、堂春。起きろ。」
「すんますん!」
起こされるのか…。てかすんますんってなんだよ?寸ま寸?
「ただ授業の進度を決めるために今から課題だ。今日はそれを終わらせたら自習。では配る。」
っしゃ!
因みにボクは高校生の勉強は数学に限らず予習している。だから1年の範囲など九九を解いているような感覚だ。実際に配布後二分で片付けた。高校ってベクトルとか確率とか習うんじゃないの?ん?暇だし声かけてみるか。
「ねぇねぇ凪那」
前の席にいる凪那がよさそうだ。
「今集中してるから話しかけんな」
「まだやってんの?」
「いやいやいやいやまだ始まったばっかじゃん!てかそっちこそもう集中切れたの?」
集中する間もなく終わりました。因みに私語は厳禁だが、周りが騒がしいからか上手くカムフラージュしているようだ。
「…まさかもう終わったの?」
「うん」
ボクはテレポートで課題プリントを前の席に移動させる。
「なによ」
「移せ」
「へっ?そんなのバレるよ!」
なに、心配するな口付け廃人。ボクが先生の視線が戻るのを未来予知で予測した結果約5分。何故なら瑠車とサッカー部員達が騒がしくてそちらを見張っているから。だからボクは
「貸せ」
「いや駄目」
しかし無駄だ。ボクは凪那と、ついでに柊念のプリントをかき集め3分で終わらせた。
「ありがとダークドラグーン!」
恩に着たまえガイアの長。
「な、何がありがとなの?頼んでなんかないし…」
お前の脳内では感謝と歓喜がパレードを起こしてるぞ。
「かわいい」
「かかかわいくなんかない!」
よし大声をだした。
「こら黙りなさい真璃!声デカすぎ」
クラス中で笑いが起こる。いい快感だぜ。ボクは知らんぷりをして読書を始めた。
授業が終わり、二時間目もこの調子で終わった。ボクにとってはここからが一日だ。今日は部活もないし終会の終わりのチャイムを聞いてすぐ教室を飛びだす。今日は一人で優雅にキャラメルスイーツ専門店にでも行こうか。
「待てよゴラァ」
ヤクザに絡まれたのか?いや凪那さんか。
「そのて、体では暇そうじゃないか!」
キャラメルスイーツを食べることで忙しい。
「飯を奢れ」
はい諭吉。ボクはバイトしてるからお金には困らない。
「違う、そうじゃない!」
東京〇種かよ。てかキャラメルスイーツ専門店はすぐそこ。ボクはこんなとこで抑止を食らう訳にはいかない。テレポートだ。
なんとか助かったな。さてさてこれがその楽園か。中に入ろうか。
「「あっ!」」
なんで中に入るや否やあっ!なんだよ。普通はいらっしゃいませ、だろ。てかフロアの店員瑠車じゃねえか。楽園じゃなくて監獄じゃねぇか。まぁ何故か知らんけど目星ちゃんがいるから許す。
「舞崎くん、こっち!」
喜んで行きまーす。
「ダークドラグーンよ、まさか甘物好きとはな。」
キャラメル専です。
「舞崎くんはこのキャラメルニューヨーク目当て?」
「そうそう。ボクはキャラメルが大好物だから。」
「へぇー!一緒だ」
うん知ってる。事前にテレパシーで聞いた。さてと、ボクはお目当てのキャラメルニューヨークを頼む、と。
「よう隆斗。注文は決まったか?」
「「客にタメ口聞くな!」」
「あっご、すいませんでした。ご注文はどうなさいますか?」
キャラメルニューヨークにお供のブラックコーヒー。全員一致でそのセットを頼む。
キャラメルニューヨーク。厳選された国産キャラメルミルクに、風味を意識したミシュラニストパティシエによるパフェテイスト。僕の五感を根っこから刺激する完全体だ。見ただけで味を感じてしまう。運んできたのが瑠車ってこと以外は文句なしだな。
「いただきまーす!」
目星ちゃんが先に食べ始めたようだ。ボクも…。
「オレも頂くぜ。おっと、此奴を作った傭兵に家畜共に感謝の意を示さなければな。ありがとなお前ら。」
まともなこと言うなし。じゃあボクも頂くか。いただきます。
予想通りの味だ。ボクの味覚に干渉するとはやるな。たまらない美味しさ。しかも隣席には目星ちゃん。久しぶりの天国だな。今日は地震が起こりそうだ。
「おいゴラァ待てつってんだろクソちょ…ダークドラグーン!」
ヤクザがきた。完食してて正解だったな。
「あ、えーと、あ、ああの目星ちゃんっ??!」
目星ちゃんはボクの目星ちゃんだ。
「あ!かわいいで照れてた人だ」
どんな覚え方だよ。
「照れてなんかないですっ。あ、あのその…なんで舞崎くんと…?いるんですか?」
タメでよくね?
「もしかして彼女さんなの?だったらごめん…」
それはまずい。ボクの目星ちゃんが…!
「違います!こここんな奴なんかわわ私の足元にも届かないっ」
殺そうか?
「帰りたまえホーリードラグーン。オレ達は楽しく貴様の愚痴をしてたのさ。」
それはない。
「してないよ…?」
「それは知らないけど…その、舞崎くんには近づくな!」
ボクはいつからお前の物なんだよ。
「目星ちゃん、ボクはこんな奴知らないよ。気にしないでね。」
「でもなんかまずくない?」
「多分片思いなんじゃないかね?ボクは知らない」
「ならいいけど…」
凄いな。目星ちゃんの脳内にはボクが想像する未来がそっくりそのまま投影されてる。もしや予知能力者…?
「もう隆斗なんて知らない!バイバイ」
ボクは元から知らない。
「待てよホーリードラグーン。」
柊念やめろ。
「だまれ!」
「オレはお前が…好きだぜ」
数秒辺りは沈黙に包まれた。まぁボクはこれが嘘コクなのを知っている。テレパスです。
「柊念くん」
私は嫌い。
「私は嫌い」
「おっけ」
なにこれ。
ボクは目星ちゃんを連れて外に避難した。何故なら今から
地震が起こる。
「ねぇ目星ちゃん」
「何?」
「震度いくつ?」
「4かな?多分死者はでないね。ほってこ。」
そう、これが目星ちゃんの本性だ。ボクは既に気付いていた。テレパス。
「正解。因みに柊念はこの後凪那を落下物から守るロマンチックな展開を繰り広げるよ」
「なにそれ。バカみたいだね」
だからボクは目星ちゃんが好きなんだ。気が合うし好みが一致するからね。
次回「夢と魔法の遠足」




