#1 入学式
読者の皆さん、突然ですがここで質問です。
俗に言う「超能力」とは生まれ持った体質なのだろうか。
答えはNoだ。超能力なんて、個人の生まれ持った「普通能力」を超強くしただけである。そしてボク、舞崎 隆斗は超能力者だ。その証明としてボクは物体に直接触れずにその物体に圧力を加える『念動力』を実際に成功させた。初の発覚は中二のときだった。ボクは厨二病の真っ最中に超能力を習得したのだ。きっかけはESPシステムスキャニング(超能力の有無を調査するための科学上のテストのようなもの)でテレパス(相手の脳内と直接交信できる能力)の判定を受けたことだった。ボクはそれを機に独学で「自分だけの現実」の確立に専念、しまいには幻想を現実にすることに成功したという訳だ。
まあそんな小難しい話はさておき超能力者であるボクは今日、東京都立熊名高等学校の入学式に新入生として出席する。おっと、ボクについてのイメージを欠かしていたね。
ボクは現在15歳。髪型はマッシュヘアで白髪に近い金髪。目は細くて下北沢にいそうな感じの高校一年生だ。サイズは172-61。うんどうでもいい。
ボクは朝に強い。何故なら成長期が終わったから。とりあえず身支度を済まして熊名へと向かう私鉄の電車にライドオン。途中熊名の新入生らしき人物と度々出くわしたが、軽く会釈をして去った。が、一人だけそれでは済まなかった。その人物の名は緒美 瑠車。正真正銘のキラキラネームだ。由来は親御さんのとあるアニメへの愛好心。因みにどうして会釈で済まなかったかというと、熊名の新入生のLINE交換合戦の際にボクに興味を示し一方的に粘着してきたからだ。ああ厄介。
「よう舞崎君!いやリュウト!いやイケメン!」
「…よう害児。」
瑠車の容姿は悪くない。スラリとした高身長に、キリッとした顔立ち。声は少し低い。ただボクの容貌と正反対なのだ。
「なんだァ?お前だって害児顔じゃねえか。」
かなり頭の悪そうな顔つきで首を傾げる彼でも一応ボクと同じ特待生だ。
「ボクは至って平凡な高校生だお前と一緒にするな」
「まぁまぁ仲良くなろうぜ」
「…ああ」
話を変えるが、新入生の特待クラスにかなりの美女がいるらしい。ボクはこう見えて美女には興味がある。一目見ておきたいものだ。
熊名の最寄り駅、熊名学園前に到着したボクと瑠車は担当の生徒の誘導のもと入学式前のクラス会合へときた。特待クラスはやけに賑やかでその隅っこにボクと瑠車がヒソヒソしていた。担任の数学教師の少しいかつい男性教師が教室に入ると、賑わいは一気に止んだ。そして短い話の後に名前順で整列、入学式会場へと向かった。
ボクは入学式とか長い話を聞くのが苦手だ。だから眠った。そういえば美女なんかいたっけ?
校長や生徒会長の長々しい演説が終わると、なんと新入生指名儀式が始まった。流石に寝てらんないから、予知夢を見ながら寝ることにした。そしてボクの列の点呼が始まる。
「ねね、名前呼ばれるよ。起きて。」
隣の女子がボクの肩を揺さぶるが、気にしない気にしない。
「…ほら早く!」
しかしその女子の名が呼ばれ、女子は仕方なく起立して返事をする。
「真璃 凪那!」
「はいっ!」
そしてボクの名前が読み上げられた。最後の「と」が読まれた瞬間、ボクは目を覚ました。隣の凪那という奴は唖然としている。
「はい」
そしてのうのうとボクは着席した。決めたぜ。凪那って人が最初のターゲットだ。何故なら簡単にからかえそうだから。次々と新入生の名前が呼ばれる中、ボクは凪那さんの方を見てドヤ顔を決めていた。凪那さんの方は恥ずかしそうに下を向いて赤面しているが。
入学式が終わり、ボク達は教室に戻った。
「では改めて。私の名前は無力有力。」
いや無理がある。
「年齢は34歳。趣味は空手だ。極真空手。」
それは余計だな。
「これから皆のことを知るために自己紹介をしてもらう。出席番号順によろしく」
まじかよ。
先生の言う通り席順に自己紹介がなされた。そして瑠車の番だ。
「緒美 瑠車っていいます。埼玉から来ました。趣味は…ボクシングです。」
普通か。
「あとサイクリングとかやってます。ドッペルギャンガーに乗ってます。主に甲州ルートを中心に約230箇所のインターセクションを周回する覇道コースを毎日欠かさず走っています。」
いや嘘だろ。
「今日も既に125箇所は制覇しました。」
イキリオタクかよ。
「よろしくお願いします。」
かますな。
クラス中で瑠車に対する好奇心が沸き起こる。無論ボクも若干興味が湧いた。
あともう一人ボクの好奇心をそそる自己紹介があった。
「堂春 柊念です。女みたいな名前って言われるが男だァ。(有名校)の滑り止めで仕方なくここに甘んじてるだけの小童とはオレのことだ。言うまでもなくオレは天から召喚された。」
はい。
「まぁ愚民共、笑うんじゃねェ。ヒッ!趣味なんてねェよ。本職が忙しいからな。本職ってのは地球外生命体の侵略を阻止するダークレベル部隊の指揮。」
本職は勉強だろ。
「もう一つある。それはボーカルだ。オレは幼いときから邦ロックに憧れて毎日歌の練習に励んできた。だからオレはこの学校では軽音部に入る。よろしくなァ」
これに興味があった。何故ならボクも軽音部に入りたいからだ。
そしてターゲットの自己紹介。テレパシーで散々文句つけてやる。
「あ、う、あ、真璃 凪那です。」
コミュ障。
「あれ?筆箱がない!」
テレポートで隠した。皆笑え。
「まあいいや。しゅ、趣味はあに、アニメの、鑑賞です。」
ん?
すると柊念くんが、
「どんなアニメが好きなんだァ?」
と流れで質問する。
「ぶふぉぉぉ!失礼しましたっ!「バイオリズム」とか…」
変顔で笑わせた。てかアニメはまともだな。
「あと渋谷からきました。よろしくぉぉぉぉ!願いします。」
柊念にテレパシーを送って変顔してもらったぜ。よろしく。
あ、次はボクか。反撃に警戒しよう。
「こんにちは。舞崎 隆斗といいます。新浦安からきました。趣味は」
ここで凪那さんが筆箱を素早く取り戻す。しかしボクは気にしない。
「音楽かな?DTMとかやってます。堂春くんと同じく軽音部に入ろうと思ってます。よろしくお願いします。」
普通に拍手喝采。ボクは澄ました顔で着席する。
てか柊念と組むの正解やったな。
次回「始まる愉快な揶揄生活」




