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地球儀を買ってもらった次の日に、朝鮮半島が崩壊した件について

作者: 朱雀

初投稿なので、変なところがあったら教えてもらいたいです。



 「ほれ、ゆーすけ、パパからのプレゼントだぞ」


 今日は四月四日。

 ゆーすけの誕生日だ。

 そう。小学生三年生になったゆうすけの誕生日。

 歴史や世界遺産が好きなゆうすけ。

 彼の父親は、前からゆうすけが好きと言っていた地球儀をプレゼントした。


 「うわあ、ありがとうパパ」

 「大事にしないとね。ゆうすけ」

 「うん、ママもパパもありがとう」


 そのとき、ふと、ゆうすけの両親は、リビングで点けていたテレビに目を向けた。

 つられてゆうすけも振り返りテレビをみる。

 そこで、報道番組の女性アナウンサーの声が強張っていることに気づく。

 

 《……ただいま臨時ニュースを申し上げます。

  今日、九時三十八分。北朝鮮から多数の飛翔体が発射されたと、政府から発表されました。

  え、うそっ!!》


 読み上げていたアナウンサーが一瞬、動揺から喋るのを止める。

 だがやはりプロだった。

 すぐに渡された原稿を読み上げる。


 《……つ、続けます。北朝鮮からの飛翔体は弾道ミサイルであると判明。

  日本各地へ向け発射されたということです。

  防衛省は東京に飛来した、二十二発の弾道ミサイルのうち十六発は迎撃できたと発表しました。

  しかし……撃ち漏らした六発は練馬、板橋周辺に落ちたようです。

  落ちたのは通常弾頭であり、周囲で核爆発は確認されておりません。

  ……さらにその他の地域でミサイルの着弾を確認。

  沖縄、佐世保、横須賀、青森県三沢……》


 アナウンサーはさらに被害地域の発表を続ける。

 被害地域を言うにつれ震えていく声。

 だがそれでも、アナウンサーである自らの使命として視聴者に伝える彼女。

 食い入るように見る、ゆうすけの家族。

 彼らは椅子に座るのも忘れ、立ったままアナウンサーの言葉を聞いていた。


 《……、呉市……えっ。

  お、沖縄県北部と京都府舞鶴で核爆発を確認。

  繰り返します。

  沖縄県北部と京都府舞鶴で、核爆発とみられる白い閃光とキノコ雲を確認》


 現実のこととは思えないままそれを見ている、ゆうすけの家族。


 《報告します。たったいまアメリカ軍が北朝鮮の日本海沿岸へ、上陸したと速報が入りました。

  現在、ホワイトハウスでアメリカ大統領による会見が行われているようです。

  そちらへ中継を移します。特派員の鈴木さん》


 そしてスタジオからの映像がワイプになり、画面は赤絨毯のひかれたホワイトハウスへと移った。

 大統領の会見を聞くため集まった、世界各国の記者たちの眩しいカメラのフラッシュで、ゆうすけは一瞬目が眩んだが、すぐに大きく瞳を閉じてそれを治し、ひとときも逃すまいとその演説を聞く。


 《……in Andersen Air Force Base.

  ……北朝鮮による先制攻撃が行われた。ハワイ、オキナワ、プサンなどで核爆発を確認した。

  我々はこの無差別攻撃は決して許すことはできない。私は全アメリカ軍へただちに反撃を命じた》


 大統領の英語での演説に、すぐに字幕が付け足されていく。 

 途中、文がおかしいところもあったが、大統領が何を言っているのかは分かった。

 テレビの中の大統領はいったん演説を止め、手を揚げた質問者を指している。

 その質問者が発言をしている最中、カメラのピントが変わり、マイクを持った一人の男性を映した。

 四月だというのに顔には滝のように汗が流れている。


 《……こちら特派員の鈴木です。たったいま、アメリカ大統領による演説が行われました。

  アメリカ政府は、北朝鮮からの韓国、日本、在日・在韓米軍への先制攻撃を受け、反撃を開始しました。そしてアメリカは戦略爆撃機による攻撃や艦船からの巡航ミサイル攻撃を開始した模様です。

  さらに、さきほどアメリカ海兵隊による北朝鮮沿岸部への上陸が開始されたと発表がありました》


 そして映像はスタジオへと移った。

 スタジオでは出演者やスタッフや慌ただしく動き、カメラの映っていないところからの指示を出す声が響いている。


 《ただいま、アメリカ大統領の演説の途中でしたが、中継を切り替えます。

  ソウル支局の佐藤さんからのライブ映像へと切り替えます。佐藤さん》


 アナウンサーがそういうと、画面は黒い物体がたくさん映るビーチへと変わった。

 遠くから撮影しているのだろうか。

 ピントはあっておらず若干ぼやけているが、それが何かはゆうすけの家族には分かった。 


 《……おいっ! カメラにカバー付けろ!! 反射してバレるだろうが!!》


 切り替わった映像から男の人の怒鳴り声がとんだ。

 そしてカメラの映像がやや暗くなったかと思うと、顔に迷彩柄の化粧をした一人の男性が顔をだした。

 

 《こちら佐藤です。ただいまアメリカ軍の上陸の様子を撮影しています。

  沿岸の強襲揚陸艦から、出撃したアメリカ軍が上陸しています

  おいっあれ映せっ!!》


 佐藤さんがそういうとカメラは上陸地点上空を飛ぶ航空機を映す。

 いくつかの航空機がそこに映った。

 そのなかには、ゆうすけでも知っているオスプレイが姿もあった。


 《いま映しているのはオスプレイとハリアーです。

  おそらく内陸の敵陣地の掃討へ向かっていると思われ……》


 佐藤さんの言葉は途切れ、爆音が響いた。

 最後に映った映像からは何かの爆発が見られた。


 「どうしたんだろう?」

 「…………」


 ゆうすけの自然な疑問に彼のお父さんは口を噤んだままだ。

 お父さんの顔をみる、ゆうすけ。

 幼いながらに父親の緊張を察したのだろうか。

 なにも言わずにテレビへと視線を戻した。


 《ザーー、ザーー》


 耳障りな音がテレビから聞こえる。

 ゆうすけが耳を抑えようとしたそのとき、その声は聞こえた。


 《……くっそ!! あぶねえ。げほっ、げほっ。

  あー、あー耳は大丈夫か。これ以上はまずい。

  さっさと逃げるぞ》


 そこで映像は途切れた。

 ほっと胸をなでおろす、ゆうすけの父親。

 スタジオへと画面は移り、再び同じニュースを繰り返す。


 父親はテレビのリモコンを手に取り音量を下げる。

 

 「あなた……」

 

 奥さんが涙目になりながら、心配そうに声を掛ける。

 彼女とゆうすけは、父親へと顔を向ける。

 二人の視線を受けた彼は、何かを決意したように二人を見返し告げる――。


 「今日は……家族で一緒に過ごそう」

 

 彼はそう言って、ゆうすけと妻の肩へと手をやり、二人を抱き寄せた。


 


 





  

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なぜ、舞鶴へ核攻撃なのか 米軍のいる岩国ではなく (厚木や横田等の東京方面は、迎撃されて撃ち漏らしは通常弾頭でしたし) 海自のイージス艦の日本海側の母港を叩くためなのか 佐世保も通常弾…
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