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俺たちの能力

「で、どこまで行くんだ?」


 治恵に手を貸してもらいながら歩いて、グラウンドからもそれなりに離れたところで俺はそう聞いた。


「う~ん。まぁ、この辺でいいか」


 すると、ちょっと考えた素振りを見せてから、そう言う。

 辺りは自転車の駐輪場。この時間なら、ここには誰来ることはないだろう。俺たちはその場に座る。


「んじゃ、足見せて?」


 俺は言われたとおりに足を向ける。治恵は俺の怪我した箇所に触れると、何か暖かな感触に包まれる。そのまましばらくした後、治恵は手を離して俺の顔を覗き込む。


「どう?」

「ああ。もう大丈夫だ。ありがとう」


 軽く足を動かしたり、立って確かめてみるが、痛みはない。どうやら治ったようだ。

 俺がそう答えると、治恵は軽く笑い返してきた。


「今から保健室行くのもなんだし。戻ってもどうせ、野球はさせてもらえないだろうから、とりあえずここでサボってる?」

「そうだな」


 治恵にそう言われて頷き返すと再び、その場に座り込む。日陰ということもあって比較的ここは涼しい。まだ本格的な夏には早いが、それでもさっきまで体育で汗をかいていたこの体にはちょうどいい。

 そのまま会話もなく、しばらくの間、穏やかな時間が流れる。


「……にしても、不思議よね。この力」


 そうして俺の汗も引いてきたきた頃、治恵は突然そう話しかけてきた。

 治恵に言われて、改めて考えてみる。


 まず、治恵が持っている力。

 今さっき足の捻挫を治してもらったように、どんな傷だって一瞬で治してくれる力。風邪のようなものにだって対応できる。さらに相手の体に触れれば、その近くに傷や病気があるのか理解できるという発見能力もある。治癒能力。


 次に、雪音。

 手を触れずに物を動かせる力――サイコキネシス。

 まぁ実際は、さっきのボールの軌道を変えたり、テスト中に念力の弾を飛ばしてくるなど、そういう使い方もできる。それに、疲れるからと言う事でやりはしてないが、どうやら人一人を持ち上げるくらいもできる。つまり、自分自身に使えば空を飛べる。まさに人類のロマンだ。


 次は、真記。

 見たものをすべて記憶することのできる力――完全記憶能力。

 これ自体は実際にも存在するものだが、真記のはそれらとは違う。記憶するのは真記がその力を発動させている間だけで、それ以外の時は普通であること。記憶したことは、自分の好きなように引き出して、思い出すことができる。

 だから実も言っていたように、力を使って教科書を全てページ記憶させておけば、テスト中であろうと、好きな時に教科書をみることができるというわけだ。まぁ、真記は実ではないからそんなズルしないだろうけど。


 今度は、実だ。

 頭の中に、世界を構築する力。あいつ自身の命名で、現実空間リアル・シミュレーション

 その名前通り、現実となんら変わりない体験をすることができる。その世界では五感もすべて感じ取ることができ、疑似的に未来を体験できる。そうして得た情報をもとに、行動を変えれば、必然的に未来を自分の好きなように変えることができるというわけだ。

 ただ、精度を高める問題なのか、一週間先までしか体験することはできない。それに、一日にその空間に行くのは三度まで。連続で一時間しか入れない上、こちらとのそちらでの経過時間は全く同じ。つまり、仮想空間で三十分過ごしたら、現実でも三十分経つという、万能だが制約も多い力だ。

 うまく使えばもっと何でもできるのに、実はあんな変な使い方ばかりしている。あと、そんな感じで無駄遣いしているせいで実際に俺は一度も行ったことはないが、実だけでなく、他の人も一緒にその空間に行くことができるようだ。その時にはいくつか選択することがあるらしいが、そこに関しては知らない。


 五人目に、心。

 広義的に言えば、テレパシー。けれど、制約も存在する。

 それは、心の声を何でもかんでも読めるものではないこと。『心の中で誰かに対して明確に話す』と、本人が思わない限りは相手に伝わらない。簡単に言えば、喋らないで会話する力といったほうがいいだろう。

 範囲は教室一つ分程度。またテレパシー内なら、お互いの声色の聞き分けも普段と同じように分かり、声も机一つ分離れた程度で聞こえる。

 また、複数人での会話も可能。この力は、心自身が力を使いこちらに話しかけた時点で始まる。その後はみんながその同じ『空間』で話をする。

 ただ、この力は『心の中で誰かに対して明確に話す』のため、一人の人物に対してだけ話しかけるというやり方もできる。

 その後、その空間から出るには、自分自身の意思でやることができる。もちろん、心がその空間から退出させることもできるし、心自身がいなくなれば強制的にテレパシー空間からは出てしまうが。

 とまぁ、俺としてはチャットとか、ライ○とかみたいな物という認識だと思っている。


 そして最後に、俺自身の力。

 たぶん、他の五人よりも一番万能で強い力――未来予知。

 実と違って五感は感じ取れないが、一日の制限使用回数もないし、一週間先ではなく半年先までの未来を見ることができる。それに、未来予知をしているときの経過時間だって、一日分を見るくらいで一分程度だ。

 制限があるとすれば、見れる未来は、未来の自分の視点からの情報ということと、その時に感じている自分の気持ちはわからないということくらいだ。それに他の人に触れた状態なら、その人の視点からその人の未来をみることができるという力もある俺のほうが、やっぱり汎用はあるだろう。


 けど半年先まで知れるからと言っても、そんなに先のことを知っても仕方ない。

 だから俺は、一日の始めにその日のことをざっと見る程度にしか使ってない。結局はその日になるまで、予知をしたところで何もすることはできない。その日のことはその日に知ればいいのだ。

 実際、この力が役立っているのは、帰りに急な夕立が発生するときに傘を準備して学校に行けるってことくらいだし。そう言う意味じゃ、俺は全然有効活用できてはないんだろう。


 それらのことを念頭に置いたうえで、もう一度考えてみる。

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