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幼馴染み同士の普通の日常4

「大袈裟なんじゃなくて、こういうことは敏感に慎重に判断したほうがいいの」


 そう、いつの間にかやってきていた治恵が言った。


「何かあってからじゃ遅いんだから。念には念を、とも言うでしょ? 大袈裟なくらいでちょうどいいくらいよ」

「そうだな。治恵の言うとおりだ。とにかく、確認してもらおう?」

「というより、こんな時には普通に頼ってよね? 友達でしょ?」

「あ、うん。ありがとう。治恵ちゃん」


 俺たちが勧めると、真記は戸惑いながらもお礼を言う。その真記の様子に治恵は満足そうにうなずいた。


「そうそう、それでいいのよ。それで」


 治恵はしゃがんで真記の足に手を当てる。


「何処か痛いところとかある?」


 ペタペタと触ったり、さすりながらそう聞く。それに真記は静かに首を横に振る。その後も、体のあちこちを念入りに調べて、診察は終わった。


「うん、外傷もないようだし本人もいたくないっていうなら大丈夫だね」


 その結果に俺のほうもホッとする。こういうのは治恵がいれば安心ではあるが、それでも最初から怪我なんてしないほうがいい。健康で過ごせるのが一番だ。


「えっと、ありがとうね。治恵ちゃん」

「どういたしまして」


 真記の二度目のありがとうに、治恵はそう返す。しかし、さっきは実を蹴ったりしてたんだよな。それなのに、真記はこうやって心配して……。この扱いの差……大違いだ。

 治恵は俺に目を向ける。


「ところで、明夜。あんたはあたしのこと、どう思ってるわけ?」

「なんだよ、いきなり」

「う~ん? だって、ずっと見てたけど、そういう流れでしょ?」


 確かに、心と真記には言ったけど。いや、それよりも前に、話はしてたんだよな。そして、実が心に聞いたりしたし。


「で? どうなの?」


 そう言うと、治恵はじっと顔を見つめてくる。

 ……ここで答えないっていうのも、不自然だよな。けど、心や真記相手だとまだ簡単に言えるのに、治恵はそうはいかない。二人は身長と性格もあって、妹の相手をするように対応できるし、冗談で済ませられることも多い。その場のノリってのもある。

 それに対し治恵は真面目だし、あんまりはぐらかすってのもできない。だから正直……結構困ってる。端的に言うと、恥ずかしい。

 それでもこのまま見つめられ続けるのもまた恥ずかしい。


「……好きだよ。治恵のことは」


 それなりに時間が経ってから、ようやく治恵から顔を逸らしつつ、そう答えた。


「ふーん。そっか、明夜はあたしのことそう思ってるんだ~」


 その返答に、にやにやと俺の様子を確認してくる。こういう反応されるのも、嫌だから言いたくなかったんだよなー……。けど俺だけが答えるなんて、よく考えたら不公平だ。治恵にも俺と同じ思いを味わってもらうぞ。


「そっちはどうなんだよ」

「あたし?」


 俺の問い表情が元に戻るが、すぐに俺に笑いかけてきた。


「あたしも好きだよ」


 ……こう、相手からも真面目に返されると、もっと気恥ずかしいな。そんなやり取りをしていると、後ろから誰かが抱きついてくる。


「そういうことなら、海導。私もどう思っているのか、聞いてなかった気がするんだけど?」


 雪音だった。そう言えば、最初からこの話を一緒にしていたけど、雪音にだけは答えてなかったか。もう今更恥ずかしくなんてないし、答えるか。


「嫌いじゃないよ」

「そう……。それはそれとして、海導の今までのこの質問に対する返答は、朝日さんが大切な友達、完本さんが大切な幼馴染み、医十院さんが好き、空谷が究極最強唯一無二で必要な存在ってなってるわね」

「全員分覚えてたのかよ、お前」

「その中で私は嫌いじゃない……。どうやら私が一番どうでもいい存在みたいね」


 うわ、なんかめんどくさい言い方!


「いや、別にそう言う意味で言ってたわけじゃ……」


 そうやって説明しようとしたところで、心がテンション高めで割って入ってきた。


「特に、治恵ちゃんは好きって評価をしているところとか大胆発言だよね!」

「でも、そのあたし以上に実のことが大事ってことでしょ? 一人だけ別格すぎ」

「明夜くんと実くんは一番の仲良し……ってことだよね?」

「いえ、もしかしたら海導はそれ以上の感情を持ち合わせている可能性もあるわ」

「なるほど! でも、安心していいよ。心ちゃんはその辺、ちゃんと理解ある人物だからね!」

「まぁ、あたしにはそんな了解はないけど」

「えっと……つまりどういうことなの?」

「完本さんは知らなくていいことよ。汚らわしいことだから」


 何故だか、俺と実の関係が散々な言われようになっている。あれって、いわゆるノリで言ったものなのに。みんなのことを大切に思っている度合いもそう。ただ言い方が違っただけで、俺からしたら平等だ。それなのに、俺がホモみたいな扱いになっているのは何故なんだ。

 つーか、一向に実が混ざって来ないけど、どういうことだ? こんだけ言われてたら、とっくに来てるはずなのに。

 そう思って、実に視線を移す。あ~……なんか妄想の世界に入ってるな、あれは。間抜けな顔で目をつぶって、ニヤリと笑ってる。気づいてなかったのか。

 他に止める人もいないし、このまま黙って聞いてたらもっとひどいことになりそうだったので、反論をする。


「それを言うなら雪音だって、実のこと好きだって言ってたし。心は実とマブダチだと言ってたろ?」

「で、あんたは完全究極最強唯一無二なんでしょ?」

「いや、それなんか増えてない!?」

「それにしたって……ねぇ?」


 そう言って治恵がみんなの様子をうかがう。するとみんな(真記以外)がうんうん、とうなずく。


「あの物言いは明らかに、友情を超えているからね」

「きっと海導は男の方が好きなのね。いえ、もしかして、女には興味ないのかしら」

「あ、それあり得るわね。どうなの、明夜?」

「俺だって普通に女のほうが好きだっての!」


 あんまりな扱いに思わず、声を荒げてそう答える。それを聞くと治恵と雪音は一歩、そっと俺との距離をとる。


「うわー……引くわ―。そんな実じゃないんだから、こんな場所で宣言しなくても」

「欲望にまみれているわね。いつ襲われるか分かったものじゃないわ」

「お前らは俺にどうしろってんだよ!」


 そうやってHRが始めるまで、騒がしくも楽しく過ごした。

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