力を手にした日4
「……ぼくはこの星に留まりたいです」
ずっと考えていたそのことをしっかりと声に出して伝えた。お父様は少し戸惑うように、たずねる。
「ヒカリ、どういうことだ?」
「別に罪滅ぼしとかなんて思いもしません。でも、こうしてこの子たちと出会えてのも何かの縁だと思うんです」
そう言ってぼくは、みんなに目を向ける。
彼女たちは、ぼくにみつけさせてくれた。ぼくのやりたいことを。望みを。
「ぼくはもっとこの星のことを知りたい。この子たちのことを知りたい」
だから、知りたいと思った。ぼくとは違う……けど、同じ彼女たちを。
「そしてぼくは、この子たちのためになることをしたい。この子たちが立派になれるように導いていきたい」
ぼくはその言葉とともに願いの石を手に取る。
ぼくが望むのは……みんなを導く力。
みんなの先頭にたち、みんなを助けてあげられる力。……未来予知だ。
「それがぼくの願いなんです」
石からは光があふれた。そして少しして、石は消え去った。ぼくの願いはもう叶ったんだ。一生に一度だけの願いは。
その光景眺めて、お父様たちは何も言わずに、黙ったままぼくを見続ける。そんなお父様たちに、ぼくは声をかける。
「それはきっと、この先ぼくが王位を継承したときにも役に立つことだと思います」
ぼくが願ったのは王として、民に対する気持ちでもある。いわば、ここでみんなにやることは、のちのための前準備だ。
彼女たちを導くことができてこそ、ぼくは初めて、自分の星の王としての資質と覚悟を、持てると思う。
ぼくが望み、そして気づかせてももらったのは、そういうこと。ぼくが目指していく王の形。それを教えてもらった。彼女たちを見ていて。その優しさに触れて。無邪気な笑顔に触れて。それを守っていきたいと思えた。
きっと、他人だったからなんだ。そこに自分がいなかったから。ありきたりな幸せを感じることができた。大切な普通を知ることができた。
だからぼくは、それを気づかせてくれた彼女たちを導く。感謝……しているから。
「お願いします。ぼくをここに残してください」
そう、ぼくはお父様たちに頭を下げる。やる気になっても、まずは許してもらわないといけない。それはぼくが子供である証。
お父様は、どこか諦めたようにため息を吐く。でも、すぐにそれは別の感情に変わる。
「頭を上げなさい」
促されてその通りにする。見ると、お父様は暖かな笑みをぼくに向けていた。
「お前が、叶えようとしたことだ。絶対に変えない。捨ててはいけないと。私は言ったばかりだしな。何もいいはしない」
「私も心配ではあるけど。ヒカリが自分で考えて、やったことだものね」
お母様もそう言ってくれる。ぼくは今許された。それは今ぼくが、ただの子供ではなくなった証。ぼくを一人の人間として、認めてくれた証拠。……嬉しかった。
お父様はぼくの目の前でしゃがみ、目線を合わせる。
「……一つだけ言っておこう。ヒカリ、君は自分の思うように、あの子たちを助けて導いてあげるんだよ」
「はい」
「人は誰だって悩むものだ。大きなことにも小さなことにも。その中で、人と違う力を持つことは、それが悩みの種になりやすい。今はそれが欲しいと願っていても。この先、迷うことがきっとあるだろう。そのときこそ助けてあげるんだ。いいね?」
わかっている。ぼくがやるべきことは。お父様のこれも確認にすぎないんだろう。だからぼくも、今一度自分に問いかけて、そうして力強く頷いた。
「はい」
ぼくは誰よりもまっすぐに。迷わずに。みんなの指針となる。
その答えにお父様は満足にすると、立ち上がった。
「じゃあ私たちはいくよ。これはヒカリが王になるために自らに課した試練だからね。ヒカリだけの力で解決するんだ。力が定着する10年後に、また迎えに来る。それまでさよなら」
「はい。ぼくは頑張ります」
「それと最後に……」
お父様はそこでみんなに視線を向ける。みんなは今まで、話を黙って聞いていて、かやのそとになっていたが、いきなり目を向けられて体をびくっと震えさせる。
「きみたちからは、ここでのことは忘れてもらうよ」
「ええー! なんでー! せっかく、宇宙人にあったことオレ、自慢しようと思ってたのに!」
「誰にも知られたくない秘密だってきみたちにもあるだろう? 私たちも、あまり知られるわけにはいかないからね」
「でも、まさか記憶まで消せるなんて……なんでもありね。本当にSFの世界だわ」
お姉さん然とした一人の女の子はそう言ってため息をつく。
とはいえ、ぼくたちの星の技術でもそう簡単に記憶を消すなんてことはできない。するにしても、時間が結構かかるし、ぼくたちのような上の人間でなければ使うことはできない。でも、今回はそうじゃない。
「ヒカリのこと……よろしく頼むわね……」
お母様がみんなに話しかける。みんなはぽかんとした顔をしていたがすぐに――
「うん!」
笑ってそう返してくれた。
「ありがとう……」
そう言って、お母様は自らの力を発動した。




