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力を手にした日2

 ぼくたちの星は、この星よりも医療は進んでいた。子供たちは重傷だったけど、それでもこうやってすぐに治療に移れたことは、何よりも大きい。ぼくは助かりますようにと、祈っていた。


「……ううん」


 治療は終了してベッドの上で眠るみんなを見守っていると、そのうちの一人が意識を取り戻したのか、そう呟く。そして少しして、目を開けた。


「……あれ?」


 その子はボーっとした様子で辺りを見回す。


「……オレはなにして……ここ、どこ?」


 その反応にぼくたちは質問に答えよりも無事に目覚めたことにホッとして、喜ぶ。そんな僕たちを見て、相手は首を傾げていた。

 その後、次々に子供たちは目を覚ましていった。みんなが起きたところで、お父様は声をかける。


「すまなかったね。君たち」

「? すまなかったって? というより、わたしたちなにしてたんだっけ?」

「馬鹿だな、心。そんなもの……何してたんだけっけ?」

「覚えてないんかい! あんたたちが行こうって言い出したくせに!」

「あ……そうだ! そうだよ! それでオレたち山の中に入って、目的の場所について……」

「上を見上げたら、何かが降り立ってくるのが見えた。そしてそれはそのまま接近してきて私たちに当たった……そうよね?」

「うぅ……みんな覚えてるってことは、夢じゃなかっかってことだよね。あれって」


 それぞれが事故の起こる前の出来事を思い出して、納得していく。そうして一人の男の子はぼくたちのほうを見ると、少し遅れて驚く。


「……え!? じゃ、じゃああなたたちが宇宙人!?」

「まぁそうなるのかな? 君たちからすれば」

「……にしては、全然っぽくないね」


 心と呼ばれていた少女はぼくたちの全身を眺めて答える。他の子も口々に不満のようなものを言っていく。


「それに、あたしたちと同じで普通に日本語喋ってるし」

「うんうん。心ちゃんのイメージは、やっぱり、グレーの全身タイツみたいな恰好で、『ワレワレハウチュウジンダ』っていうものだしね!」

「それ、結局日本語話してるじゃない。大体、実際のところイメージなんてあてにはならないものよ?」

「それにSFの小説とか読んでると、自動翻訳機能とかでしゃべったりできるよ? そういうたぐいのものってことも考えられるんじゃないかな?」

「わー! 真記ちゃんってば頭いい!」


 ……普通に勉強したんだけどなぁ……。なんか、心外だよ。


「んなことよりサイン貰おうぜ! いや、写真が先か? 握手?」

「握手はともかく、カメラも持たず、サインペンや色紙も持たずに何を言ってるの、空谷は」

「そうだった! なんでオレは持ってこなかった!」

「本当にね。宇宙人に会うんだ! って意気込んでたくせに、その証拠を残す手段をもってきてないなんて、空谷は馬鹿よね」

「馬鹿っていうなよ! いう方が馬鹿なんだぞ!」

「じゃあ、あなたが今、馬鹿って言ったから、あなたは馬鹿ってことになるんだけど、今私も馬鹿って言ったから馬鹿ってことになって、そしてその馬鹿の言った言葉は当然馬鹿な言葉でもあるから――」

「うわぁああ! もういいよ、雪音! 俺が馬鹿で!」


 ……なんだか賑やかな人たちだな。そんな風に思って、彼らを見ているとお父様が気になっていたことをたずねた。


「それより、どうしてあんな場所に君たちは居たんだ?」

「え? ああ、オレたちは最近この辺に光の弾が降り注ぐとか、隕石が落ちてるとか噂で聞いて!」

「それで、私と実ちゃんでじっくりと考察していったら、それは宇宙船が降り立つ瞬間だー! ってなって」

「そして、その実と心の馬鹿な行動につき合わされて、あたしたちもここまできたの。……けど」

「まさか、それが本当だったとは思わなかったけれどね」


 どこか信じられないというようにそう答える。実際、半信半疑。そんな状態でこんな場所まで来たんだろう。そして、ぼくたちに出会った。


「そうか。何度も探査船で使用していたのが、仇となったようだな」


 お父様は納得するように頷く。そういえば、ここは調査のために宇宙船が下りる場所として何度も使われてたんだっけ。だから安全だって言っていたけど。そのときのことを見られてたのか。それで今回こんなことが……。

 お父様は相手の子供たちと目線を同じにするためしゃがむと、申し訳なさそうに頭を下げる。


「本当にすまなかった」


 ぼくとお母様も同じように頭を下げる。これで許されるなんて思ってはいない。命に別状はなかったとしても、ぼくたちがやってしまったことは変わらない。傷つけたことに違いはないんだ。それは絶対に忘れてはいけない。

 彼女らはぼくたちの態度に戸惑っている様子だったが、一人の女の子が冷静な口調で答えた。


「いえ、こうして手当もしてくれたようですし……。私たちのほうが感謝しなければならない立場です。ありがとうございます」


 その言葉で顔を上げる。そしてその子に視線を向けると、どこか優し気で、ぼくたちのことを怒っているようではなかった。

 他の子も続いて答える。


「まぁ、夜にこんな場所に子供だけで来たことのほうが悪いですし。逆に、あたしたちのほうが怒られても仕方ないですよ」

「オレは宇宙人に会えたってだけで十分だぜ!」

「しかもここって宇宙船? の中だよね! そんな場所にまで入れたなんて、一生の宝物だよ!」

「私も……いつも本ばかり読んでて、こういうのには憧れていたから……。嬉しいです」


 そう言ってみんな笑っていた。ぼくたちのしたことを全然、気にしている風ではなかった。

 ……同じだ。ぼくたちと。ちゃんと持っているんだ。住む世界が違くても……同じ心を。ちゃんと分かり合える心を。

 どこかで不安だった。本当に地球人とは安全なのか。コミュニケーションを取れる存在なのか。互いを思いやる心を。理解し合うことをできるのか。そんなぼくの普通は……受け入れられるのか。

 そんな不安は消え去った。ちゃんとぼくたちは同じ存在だったんだ。

 お父様は彼女たちに目を細める。


「そうか……。君たちは優しい心を持っているんだね」

「うん! そうだよ! こころちゃんは心も優しいんだよ!」

「自分で言うのはどうかと思うけど……。わたしたちは、普通ですよ。あれは事故ですし。こちらにも非がありました。さらに相手からは手当もしてもらった。そのうえで謝れても、困ります」


 ぼくはその物言いに呆然とした。この子はぼくと同じくらいの年で。それなのに、こんなにもしっかりしている。ぼくはまだ、こうやってお母様の後ろに隠れているというのに。彼女は、お父様と……見ず知らずの目上の人と、臆せずに話をしている。

 ぼくは王子だ。だから、ぼくもいずれは、そうならないといけない。この子と同じように。見習うべき相手だ。


(そのためには……まず……)


 ぼくは勇気を持とうと思った。

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