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力を手にした日

「……!?」


 俺は思わず、身を起き上がらせる。

 辺りを見ると俺の部屋。さっきのは夢……か?

 だったらいい。あれは悪い夢で、本当ではないことであったならいい。

 だけどなんだ? この感覚は。あれは夢なんかじゃないって、そう思えてしまう直感は。現実にそうだって思えてしまうのは。


 俺は一旦落ち着こうとする。そして整理しようとする。

 そうして時間が過ぎるたびに、さっきの記憶が俺の中に馴染んでいく。本当のことだと。

 だとしたら俺は、思い出してしまったんだな。

 俺が本当は何のためにみんなと一緒にいたのか。

 そして、俺が本当はこの世界に住む人間じゃない……宇宙人だってことを。


*****


 俺はとある星の王子だった。名前はヒカリ。

 王子とはいっても特別なことはなく、普通に同年代の子たちと遊んで、勉強も同じようにした。違ったとすれば、子供のころから許嫁だといって、結婚する相手がいたことだった。それがヤミだった。


 そうして身分はあれど、みんなと同じように毎日を過ごしていったある日。俺は家族旅行にいくことになった。

 場所は地球。理由はいくつかあった。

 一つはそこには俺たちと同じような文明を築いた人間が存在するということ。

 もう一つは、その人間の容姿が俺たちとそっくりであるということ。


 俺もそれには期待に胸が膨らんだ。星から離れ宇宙に行くことさえその時の俺には初めてのことなのに、ましてや宇宙人に会えるというのだから。

 俺は必死になって、その星の言語を勉強した。場所によって言葉が違っているようだったが、目的地は決まっていたから、そこで使われているという『日本語』を。


 そうして出発の日はやってきて宇宙船に乗り込む。これから先のことにわくわくが止まらなかった。

 旅たって、自分の星から離れていくのを窓から見ていた。離れていくたびに、自分の済んでいる場所とは、あれくらいちっぽけなものなんだってそんなことを思った。


 辺りと見回すと、そこには多くの星々がきらめいていた。とても美しく、幻想的に感じた。しばらくして、ワープに入り、外を見ていても仕方がなかったのと、はしゃぎすぎた疲れから、俺は眠った。


 そうして何日かして、やっと地球が見えてきた。外から地球を見た感想は、『青い』だった。もちろん、その光景には目を奪われたが、見えるほとんどが水。地球のことはちゃんと勉強してきたし、その写真も見たことがあった。

 あれが海ってもので、陸地との割合は7対3で海。水の星。そんなことはわかっていたけど、やっぱり実物とは、変え難い感動がある。素晴らしかった。


 宇宙船は着陸の態勢に入った。目的の場所は既に、何度か探査船が着陸をして地球の情報を収集するのに使っていた場所だそうで、安全は保障されていた。いや、されていると思っていたんだ。


*****


「あ……もう、着くの?」

「ええ、あそこに降り立つのよ」


 お母さまはそう言って指をさす。示した場所は山。木々の中。文明の栄えているのとは少し離れたところ。けど、この星では未だに異星間での交流はないそうだから、いきなりこの宇宙船をみたら、びっくりさせてしまうんだろう。この星の人々を驚かせるのはこっちも嫌だし。友好な関係は築きたいと思う。それに、ぼくたちはただ旅行に来ただけだ。ぼくたちとこの星の人は似ているし、あんまり怪しまれることはなく、過ごせそうだ。


 ぼくはそうして、未知の土地に踏み入ることの不安よりも期待を大きく感じながら、少しずつ近づいていく、地を眺めていた。

 その時だ。突然、宇宙船は警告音を鳴らした。


「……! まずい!」


 お父様は下部からのカメラ映像をモニターで見て、何か気づいたのか、焦るようにそう言う。ぼくはまだ事態には飲み込めていなかった。

 けれど、この宇宙船は自動運転だ。それを切らない限りは、どうしようもない。


「……っく!」


 お父様もそれを当然知っている。すぐさま自動運転を切り、ハンドルを取る。そうして機体を浮き上がらせようとした。でも、それは遅すぎた。宇宙船はそれをしても止まり切らず、下に落ちていく。ぼくたちは……着陸をした。


「う……いてて……」


 突然操縦を変えたせいで、着陸時の衝撃が大きくなり、その場で尻餅をついた。ぼくはお尻をさすりながら立ち上がり、お父様たちの近くまで寄っていく。


「……間に合わなかったか」


 お父様は悔しそうにそう呟く。けど、ぼくはどうして警告音が鳴ったのか。お父様が何を気づいたのかも知らなかった。それはお母様も同じだったのか、聞いた。


「……どういうこと?」

「…………」


 お父様何も答えない。ただただ、悲しそうな顔で俯いていた。

 しばらくして顔を上げたと思ったらぼくたちには目もくれずに黙ったまま、出口に向かって歩いていった。ついていけばいいのだろうか? ぼくはお母様と目を合わせて、その後に続く。

 お父様は扉の前に立つと、その扉を開けた。そうしてぼくは、初めてこの地を肌で感じた。


「あ……」


 周りは暗かった。夜だ。でも、明かりがあった。あの月が、こうして照らしているんだ。


「すぅ……」


 息を思いっきり吸い込む。これが……この星の空気。とても心が癒されるようだ。

 そんなこの場所をぼくは気に入って、そしてこれからが楽しみだった。


「……え?」


 でも、その気分も一瞬で吹き飛んだ。宇宙船から出て、そのすぐ横。

 そこには血を流して倒れる人々がいた。見れば、まだ子供。ぼくとそう違わないほどの背丈だった。

 まさか、あの警告音はこの子供たちが下にいたから? そして、お父様はそれに気づいて――。でも結局間に合わなかった。だとしたら、もうこの子たちは……。


「……いや、まだ死んではいない」


 ぼくが悲しそうにその子たちを見ていると、お父様は近くまで寄って傷の具合を確認して言った。それを聞いて、ぼくとお母様はよかったと安堵のため息を漏らす。

 もちろん、けがを負っていいことなんてないけど、それでも生きているなら、これ以上に嬉しいことはない。

 お父様は、その子たち5人を腕に抱える。


「私たちのせいだな。早く治療をしよう」

「……ええ」


 そう言うとぼくたちは船内に戻っていった。

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