みんなのいない絶望の世界
「……ん」
……朝か。カーテンの隙間から入ってくる日差しに目を細め、体を起き上がらせる。
また今日も始まった。もう、どこにも生きる意味なんてないはずの今日が。
「……いくか」
ここにいても、何もすることなんてない。それ以上に、ただずっとここで一人になっているのは、本当の意味で一人で……嫌だ。
俺はやる気もなく、学校に向かった。
*****
「…………」
学校に着いて、自分の席に座り、何するでもなく、ボーっと外を眺める。そんな俺には教室の喧騒も耳に入らない。
どこにいても、俺は一人だ。それでも、ここには他の誰かはいる。それだけで心は和らいだ。
「ねぇ……明夜君?」
誰かに話しかけられた。けれど、俺は視線も返さない。返事もしない。ずっと窓の外を眺め、それを無視した。
そうしていると、相手は困ったように声を漏らすが、すぐに誰か他の人が気づいて声をかける。
「……やめておけよ。あいつも色々と傷ついているんだろうからさ」
「あ……だよね。ごめんね」
そう言い残して離れていく。
俺は関わりあいたくはない。そんなに強い人じゃない。もう一度、前を向くことも俺にはできない。
だから……ごめん、だなんて言わないでくれ。俺は……そんな言葉を受け取りたくはない。俺がみんなに言いたい。俺はきっと、みんなの望む自分には絶対になれないから。
*****
「……ただいま」
そう言って家の中に入る。もちろん、最初から返してくれる人なんていない。そんなことはずっと昔からそうだった。それなのに、今ではそれがどうしようもなく虚しい。
部屋につき、ベッドに身を投げる。こうして今日も終わっていく。
「なんで……生きてんだろうな」
意味がないことはわかっているのに。どうして、それでも生き続けるんだ? ……死ぬのが嫌だからか? それが嫌なのか? でも、そうしないと俺はもう――
「お前らに……会えないんだよな」
そうして思い出す、みんなの顔。
実。雪音。治恵。心。真記。
今のこの世界には、お前らはいない。
どうしてなんだ……。どうしてお前らはいなくなったんだ。何がいけなかったんだ。
俺にはそれさえ分からないよ。けど現実にお前らは――死んでしまった。
もう、感情なんてないとさえ思っていたのに。
俺は今、お前らのことを思い出して。
悲しくて。
悲しくて。
悲しくて。
涙が……止まらない。
楽しかった日々を。
ずっと過ごしていきたかった、お前らとの楽しい日々を。
思い出して。
想像して。
「う……っぐ。あぁぁあ……」
……苦しいよ。
お前たちは望まないだろう。俺が死ぬことなんて。
死んだら本当に終わりなんだから。
死んだら会えるなんてことは、絶対にないんだから。
それでも――死ぬことにでも希望を見出さなければ、俺は今ここで死ぬことさえ、決心できない。
俺は、どうすればいいんだろうか。
どうしていけば、いいんだろうか。
生き続けてずっと、ずっと。
お前たちがいなくなったことを悲しめばいいのか?
苦しめばいいのか?
そうしていくことが、俺に必要なことなのか?
そんなことは耐えられない。俺はこんな世界で生き続けるなんてできない。悲しいのも苦しいのも嫌なんだ。
できないから俺は――本当に耐えきれなくなったときに死を望むだろう。そう決断出来た時、死は一瞬で訪れる。逃げることができるから。
それまでは……この世界で生き続ける。俺という存在が壊れてなくなるまで。




