ロボットではありません、アンドロイドです。
今まで作品を仕上げたことがなかったので、無理くり短編にしてみました。
説明しきってない上の尻切れトンボで申し訳ない。
『皆黒に乗ってるけど赤い方がカッコいいよね?』
丸いメガネに少しぼさっとした髪の毛。
片手にお玉を持って、赤いエプロンをして。
テレビの中を走り抜ける車を見てお父さんがそう言ってたっけ。
ほんわりとした笑顔のお父さんと、シャープな印象の車とのイメージがなんだかチグハグで妙に印象に残ってる。
ん・だ・け・ど!!
自分に向かって猛スピードで近づいてくる車は、カッコいいとかそんなの関係ないから!!
車体の色は黒で、そういえば昔も今もあまり赤い方って見なかったよね~。
やっぱり黒色の方が人気あったのかな?
・・・・・・なんて、再度現実逃避なんてしてる場合じゃなってわかってはいるんだけれど!!
ガムでも踏みました?
ってか、瞬間接着剤でもくっつけるちゃった!?
てな具合に足の裏が地面にべったりとくっついているみたいです。
単に恐怖で足が動かないとも言うんだけどね?
ちなみに目をつぶることも出来ません。
こちらも恐怖のあまり瞬きさえも出来ないだけなんですが。
今のわたしに出来ることはお父さんとの思い出を走馬灯のように脳裏に流すことぐらいです。
ハハハ。
あ、乾いた笑いが出ちゃった。
いや、だって、ね?
そんなこんなしてる間に運転している人の顔も細かに見えてきちゃったりして?
大人の年齢っていまいちわからないけど、走馬灯の中のお父さんよりは年上の男の人。
顔色はコピー用紙も真っ青!! なぐらい真白。
顔も見事に強張ってます。
肩はものすごく力が入ってて“ああ錨肩ってそういうコト”ってなぐらいに肩が上がってる。
『したくもないのに、やらされてるんだ』
まあわたしは死にたくもないのに殺されそうになってるんだけどね?
そこまでしてわたしを殺したいの? って会ったこともない人たちには非常に呆れて。
でもそれに巻き込まれてしまった運転手さんには少し申し訳なくて。
「ごめん、ね?」
つぶやいた口の動きからわかったのか、蒼白な顔色はそのままに。
顔も強張ったままに、けど目は大きく見開いて。
それから、泣きそうな顔をして。
・・・・・・
いやいやいや、あなたが目を閉じてどうするの!?
しかも目をぎゅっと閉じながら・・・・・・アクセルは踏むんだ。
あ~これは流石に詰んだな。
スピードが増した車にようやく瞼を閉じることが出来た。
出来れば苦しみたくないな。
そう思っている時に感じた衝撃。
「!!!!」
は、思ったよりも痛くない?
ふっ飛ばされた浮遊感はあるのに、追加で何かに包み込まれたような感覚。
か・ら・の、ガサガサっとなにかの上に落ちながらパキリ、ボキリとなにかが折れる音。
「?????」
痛いは、痛い。
シャッとなにかが頬を掠ったのか、若干ヒリヒリしてるし。
けど、とりあえず。
「・たし、死んで、ない?」
声が擦れたのは、やっぱり恐怖のあまり喉がきゅっと締まったからなのか。
それでも自分の声が耳に届いた。
その声に後押しされるように恐る恐る目を開ければ、だれかの制服のブレザーの肩越しに見える青空。
「博士、大丈夫か」
抑揚の少ない、けれど耳障りの良い低い声。
ああ、また“彼”に助けられたんだ。
え~~と、何度めだったっけ?
ここ数日の間に手段は違えども何度も命を狙われた。
いや、わたしはまったくもって普通の女子高生ですよ?
隠された才能も、財産もない、ちなみに人様に羨まれる美貌もなにもない女子高生ですよ?
それなのに、事実今みたいに何度も死にそうな目にあってて、その度に助けられて。
助けてくれるのはいつも同じ人、今もその人に助けられた。
「博士、大丈夫か」
もう一度、やっぱり抑揚なく尋ねられる。
でも
「・・・じゃない」
さっきよりも掠れた声でなんとか言えば、ガサリと音と共にブレザーの肩が遠ざかる。
包み込まれたような感覚は“彼”に抱きしめられてたからなんだ。
羞恥心はもう、流石にないや。
形は違えども何度抱き寄せられたことか。
男の人に対して免疫ないのに、こういうことには慣れるって何なんでしょうね。
わけわかんないって。
なにに対してかわからなけど拗ねた気持ちで仰向けのまま、ブレザーのなくなった青空を眺める。
目に沁みる程の青空なのかな? だんだんと景色が滲んでくる。
すると動かないわたしに焦れたのか手を引かれ体を起こされた。
傍にあったマンションの前の植え込みに突っ込んでたんだ。
ふたりの体の重みに耐えきれなかった枝が何本も折れているのが見えた。
掴まれた手は少しだけ、温かい。
それがなんだか哀しくて、折れた枝を見ることでそれには気付かないフリをした。
「博士」
植え込みの前に座り込んだわたしの頭の上から“彼”が三度声を掛ける。
でも、
「じゃない!!」
パタパタパタっと制服のスカートを濡らすのは、景色を滲ませていたモノ。
安堵の為か、怒りの為か。
頬を濡らしたまま見上げればそこには抑揚のない声と一緒の感情の伺えない表情の“彼”
イケメンというよりは男前で、言葉数も少なくて背も高くて体格も良いから……威圧感が半端ない。
いつもならその雰囲気に押されてるけど
「博士なんか、じゃない!!」
緊張と緩和で、なにかがプツリと切れてしまったのか。
この数日で思っていたことが溢れだしてきた。
“博士”だと言ってわたしを守ってなんか欲しくない!
だって“博士”は他にいるんだから。
わたしは、わたしは
「至、大丈夫か」
「!?」
この数日の間、一度も名前なんて呼んだことないじゃない。
なんで、なんで、なんで!?
なんでこのタイミングで呼ぶのよ!!
名前なんて、名前なんて呼ばれたら
「うわ~~~ん!!!!」
子供みたいに声をあげて泣くしかないじゃないか!!
女子高生をこんな風に泣かして、ただじゃおかないんだから!!
八つ当たりだってわかってるけど、ボディガードっていうんなら心のケアもしてください!
逃げられないように掴まれた手を逆に掴みかえせばビクリとその手が震えた。
「???」
その動きがなんだか動揺しているように感じて涙を拭きながら“彼”を見れば、いつもみたいに感情のない顔じゃなくて少し焦った色が瞳に見えた。
「どしたッの?」
少ししゃくりあげながら聞けば、今度は肩が揺れる。
やっぱり、なにかに動揺してる??
疑問に思いながら掴んだ手を軽く引けば、いつもは真横に伸びている眉の眉尻が下に下がる。
「困ッて、る?」
もう一度手を引きながら聞けば、ちらりとわたしを見て“彼”は少し息を吐き出し
「手を掴まれるというのは、なんだか落ち着かない気分になる」
と言った。
んだけどもね?
いやいやいや、さっきのもそうだけど仕方ないとはいえ一体何度わたしは抱き寄せられましたでしょうか?
それこそ「手を掴む」なんて序の口よ? ってな感じだったし、さっきは自分から掴んできてたのに。
それで落ち着かないとか言われても、ねえ?
それに
「ロボットなのに、落ち着かない、の?」
「ロボットじゃない、アンドロイドだ」
信じる、信じないは別として。
“彼”はロボットだ(そういうと必ず“アンドロイド”だと訂正されるけど)
掴んだ手は少しだけ温かくて、ごつくて固いけれどそれは人のそれとそれほど大差なくて。
それでも“彼”はロボットで、わたしのボディガードをしてくれてる。
それがいつまで続くのかわからないけれど
「ありがと」
泣いたせいで鼻は真っ赤だろうけど、なんとか泣きやめてそういえば
「ロボットなのに、顔赤いよ?」
「ロボットじゃない、アンドロイドだ」
FIN
最後まで読んでいただき、感謝多謝vv
最後のやり取りを書きたくて書きました。
小説には全く出てこない設定の意味って、なんでしょうね?(笑)