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良心の提案

 蛇口から流れる冷たい水が、皿洗いを続けた為にで冷えきった手からさらに体温を奪う。

 十二所店長は、奥のキッチンで調理を続けている。

 飲食店では調理用と洗浄用に別の流し台を使っているが、これは法律で決められている事らしい。

 今日初めて得たまめ知識だ。ちなみにソースは十二所店長なので、おそらく間違いない情報だろう。


 そんなことを考えている間にも、茜や里奈からソースや食べ物の残りが入った皿が続々と届く。

 注文が多いという事は洗い物も増えるという事だ。

 まあ、食器を運んでくる度に茜も里奈もなぜか微笑みかけてくれるので、それで苦労は相殺としてもいいのだろう。

 ほかに苦労といえば、ここの制服はスカートがかなり短いのだが、茜の、女子としては鍛えられた無駄の無い腿を見ない様に心がけるのも苦労と言えば苦労だった。

 それも間違って目に入ったときのの眼福と相殺という事で構わないかもしれない。


 蛇口から流れる水の冷たさに感覚を失った手で、落とさない様に注意深く皿から水滴を拭き取り、店長の側に積み上げる。

 その拍子に注文の伝票に目をやると、次の盛りつけは綾乃さんの注文だと分かった。

 決行は、もうすぐだ。


「店長」


 皿を洗いながら僕は問いかける。


「なんだ?」


 調理に専念している為か、店長は視線をフライパンに置いたまま答える。


「今日のアルバイト料の代わりとしてあの機械を僕たちに貸す事はできませんか?」


 これは予定外の提案だ。

 けれども、この提案に了承してもらえれば、僕たちはこれからの計画を実行しなくて済む。


「それは考えていない。機械を使わせないのは君たちの為なんだ。分かって欲しい」


 僕の期待は軽く裏切られ、綾乃さんの注文した料理はトレイに乗せられて茜に運ばれようとしていた。


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