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経緯2

「最初は怪しいと思っていた俺を、犯人ではないと思った根拠を聞かせてもらおうか」


 西御門さんは僕を覗き込む。


「最初に、十二所さんが、自分の店のアルバイトが行方不明になった事を話した時、西御門さんは確か他の女の子の事を話しましたよね」

「ん、鈴音か」

「そう。美咲さんの事を話した訳じゃなかった」


「鈴音は、危ないバイトをしているって俺に情報が入ってきていたからな。ネットの掲示板を使って、男を誘っていたらしいんだ。俺の雇い主がこの地域のそっちの元締めで、フリーで派手に動いている鈴音を煙たがっていたんだ。自分の客が減るってね。で、俺になんとかしろって指示があって、俺が動いた」


 三人は口に手をあてる。


「それって……」


 茜がつぶやく。


「言っただろ? 俺はそういう仕事を任されているんだ、借金の形にな。でも、なんとかしろって言われても、俺は鈴音を十二所の店でバイトをしていた時に知り合っているから、手荒な真似なんてできっこない。結局、元締めの経営するもう少しマシな仕事を紹介してやっただけだ。ま、水商売ではあるんだけどな」


「その件は置いておいて、西御門さんは美咲さんが失踪している事を知らなかった」

「確かに俺は知らなかったけれどな。でも、演技をしているって考えなかったのか?」

「そうは見えなかった。城廻くんの話が出て来た時の話の持って行き方がそうは思えなかった」

「ああ、おまえに美咲はあきらめろ、城廻がいるぞって、教えてやったっけな。女なんて一人じゃないぞってな。まあ、あのときは三人の可愛い女の子に囲まれているとは知らなかったからな」


 西御門さんは茜、里奈、綾乃さんの顔を順番に見比べてから、僕に向かって笑いかける。


「そんなんじゃ……」

「そんなかどうかはお前の意思だけで決まる訳じゃないけれどな」


 その言葉を聞いた三人の女の子は、それぞれ視線を外す。


「まあ、いろいろ複雑になりそうだからそこは触れないでおく。とにかく俺の疑いはそこで晴れたんだな」


「ええ。で、次に怪しいと思ったのは城廻くんです。美咲さんの日記にも出ているのを茜がみつけているし」

「そこなんだが、城廻の家はどうして知ったんだ? 十二所は確か知らないはずだったんだが」

「私が。小学生のころの知り合いだったから」


 茜が西御門さんの疑問に答える。


「なるほどな。で、城廻の家を尋ねて、自殺だって言われたわけか。で、それを信じたと」

「自殺って、美咲は死んだ訳ではないのだけれどな。まぁ、まだ意識は戻らないのだが」


 里奈が割って入る。


「まあ、そこは置いておいて。西御門さんも二度目の時はいっしょだったから分かってもらえると思うけれど、城廻くんはあの状態だし、僕の判断としては嘘を吐ける状態じゃないと思った。それに、話に齟齬が感じられなった」


「君たちの推理が全てが正しいとは思えないけれど、言いたい事は分かった。でこれからの行動なのだが、どうするんだ?」


「西御門さんと十二所さんの所にある機械は、城廻くんの所にある機械と同じ物で、十二所さんは薬物中毒の治療に、西御門さんはその逆の作用の為に使っていたんだけど、城廻くんの話では、周波数と刺激を与える箇所の調整で、亡くなった人の心と同期ができるらしいんだ」


 僕はまだ情報を知らない里奈と綾乃さんに向けて話す。


「翔太、それって。美咲のメールにあった『彼がお母さんと会わせてくれる』っていうのがそれなの?」

「そう。綾乃さんの言うとおり、僕もそう思っている。うまく周波数を合わせれば、亡くなった人の今の姿を見る事ができるって城廻くんは言っていた。美咲さんはお母さんの殺された場所で、殺された格好で亡くなればお母さんのもとに行けるとも。それで、美咲さんは自らあんな場所で、あんな格好で死を選んだということらしい。けれども城廻くんの場合、亡くなったおじいさんと会うだけじゃなくって、それ以上の事をしているんだ」

「って、いうと?」

「詳しくは僕も理解できていないんだけど、おじいさんの記憶や知識を同期しているらしい」


「そんなの、どうすればできるのだ? 亡くなっているんだろう、そいつのおじいさんとやらは。いや、生きていたとしてもそんなのは不可能だろう」

「今日は二回、城廻くんの家に行ったんだけど、二回目はもう彼とは言えない感じだった。できるかどうかじゃなくって、既に行われていることなんだ」


「そこで俺の目的だ。俺の人生も、直美の人生も、十二所の人生も、すべて城廻の祖父が起こした犯罪のせいで滅茶苦茶にされてしまったんだ。そいつの記憶や知識を持った人間を二度とこの街に野放しにしたくない」

「それには私も賛成だ。私もそいつの被害に遭いかけて、それで空手を習って、こんな言葉遣いを始めたのだから」

「私も。……まぁ、ゴスロリは嫌いじゃないけれど、そればかりは嫌」

「綾乃さんのは動機がちょっと小さい気がするんだけど、気持ちは同じということで。で、今夜中になんとかしたいと思う。城廻くんの為に。彼を、一番新しい犠牲者にしない為に」


「城廻の祖父を、戻さないためにだな。俺は」


「その為に僕と茜があの機械を使おうと思っているんだ。二人で城廻くんのおじいさんに会って来ようとおもっているんだ。で、西御門さんの機械を貸してもらうとして、もう一台、十二所さんの機械が必要なんだ。できるだけ合法的に済ますには、どうしたらいいと思う?」


 僕は三人の顔を見比べる。


「いい方法があるの」


 一番に声を上げたのは、綾乃さんだった。

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