仲間を待ちながら
郊外のターミナル駅も、この時間になると通勤客の乗り降りもピークを過ぎている。
駅前を歩くのはほとんどが残業に疲れた早足のサラリーマンか、場違いな大笑いを響かせる千鳥足のサラリーマンに大別される。
この二種類のサラリーマンの違いは何なのだろうと僕は一瞬考えた。
まぁ、どちらにもなりたくはないなというのが僕の結論なのだが。
けれども、それでは僕は将来何になるのだろう?
当然の様にオープンカフェは営業時間を終了し、街路樹の下のテーブル席は街行く人の気軽な休憩スペースとなっている。とは言っても大概は空席か、または埋まっているとしても使っているのは酔ったサラリーマンか、昼間の名残を惜しむ夏休み中の高校生がほとんどにも見える。
そんなテーブル席の一角を、僕たち三人が独占していた。
「この場所、今日だけで三回目ね」
辺りを見回しながら茜が呟く。首を振るごとに少し遅れて髪が左右になびいた。
「僕たちはそうだね。でも里奈や茜さんにも、ここは分かりやすい場所だから」
「おまえらはいいかも知れないけれど、これから来る二人を合わせた高校生四人と一緒に居る俺は周りから一体どう見られるのかな」
「西御門さんは……保護者かな、やっぱり」
「夏休み中に夜遊びをしている自分の生徒をみつけて説教をしている担任とか」
茜の嬉々とした顔。
「まあ、それならいいんだけどな。警察に見られたら真っ先に職務質問の対象になりそうだと思ってな」
女子高生三人、男子高校生一人に囲まれた、厳つい成人男性は、確かに周りの風景から浮いて見えそうだ。
「けれど、俺の機械を貸すとして『はい、どうぞ』とはできないからな。操作を間違えると大変なことになるし、それに城廻の事も心配だ。あと、お前が言っていた城廻が本当にあいつの祖父に乗っ取られたのか確かめる方法っていうのが気にかかる。まだお前らと離れる訳にはいかないな」
何かを促す様に西御門さんは僕を見る。
「さっき言った、確かめる方法っていうやつですか?」
僕の問いかけに西御門さんは大きくうなずく。
「簡単ですよ。僕と、僕以外の誰かが西御門さんの機械を使って、死後の世界? 城廻くんのおじいさんに会いに行くんです。美咲さんと同じ様にね。で、その二人の体験が噛み合っていなければ二人はそれぞれ幻覚を見ていたことになる。けれど、もし二人が同じ場所での体験を話したら……そして二人の体験に信憑性があれば本当にその世界がある事になる」
「なるほどな。でもそれだと機械が二台必要になるけれど、俺は一台しか持っていないぞ。それに二人が危険を置かす事になるんだけどな。その方法だと」
「十二所店長の所に一台あるはず。それに、もう一人は私でいい」
茜が呟く。
「そう。実際に機械を見ているのは他には茜しかいないから、茜が適任の様な気がする。で、十二所さんにうまく頼み込めますか? 西御門さん」
「難しいかも知れないな。あいつには嫌われているしな」
背後にある店の方角を見つめながら西御門さんはつぶやく。
「それでも大丈夫。無理なら忍び込めばいいのよ。やっと私と里奈の出番のようね」
茜が、何か法に触れそうな事を楽しげに言っている。




