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説得

『はい、西御門ですけど』

呼び出し音が途切れると同時に、携帯から不機嫌そうな声が聞こえて来た。


***



「翔太です。一日に何度も電話して申し訳ありません。西御門さんに助けて欲しい事があるんですけど今日会う事はできますか?」


 知人とすら言えない年上の人に頼み事をするのはやっぱり気が進まない。


『また君か。俺の話は十二所から聞いてはいないのかな? あんまり親しくしてはいけないとか、信用して付き合ってはいけない男だとか。実際君は俺の事をどう思っているかは知らないけれど、俺の事は付き合っては行けない、全く違った世界の人間だと思っていた方がいい。何を助けて欲しいか分からないけれど、他の大人を頼りにした方が間違いはないと思うんだけどな。十二所とかにはもう頼んだのか? まぁ、やつも信頼するにはどうかと思うがな』


 電話の向こうはかなり騒がしい。それだけ聞き取るのがやっとだった。


「他の大人じゃ駄目なんです。西御門さんにしかできない事だから。実は、西御門さんの所にある機械、ヘッドギアのついたやつ。城廻くんの作った機械を貸して欲しいんです。十二所さんには断られてしまって、西御門さんしかお願いできる相手がいないんです」

『何だって? あれはお前たちには貸せないな。一体あの機械は何だと思っているんだ?』

「異世界に、意識だけをトリップさせる装置」

『実際そうだ。ドーパミンを放出させてトリップさせる機械だ。違法な薬物と同じ働きをする物だ。そんなのを使って、お前ら、俺の世界まで落ちてくるつもりか?』

「いえ、そんなんじゃ……僕は城廻くんを助けたいんです。その機械を使って、城廻くんのお爺さんから城廻くんを取り戻したいんです」


『何だって? あの女性連続襲撃事件の事件の犯人か。そいつから城廻を取り戻したい? 何を言っているんだ、奴は死んだ筈だぞ。確か服役中に自殺をした筈だ』

「今日僕たちは城廻くんと会って来たんです。そうしたら、そのヘッドギアをつけていて。聞いたら、死んだお爺さんの記憶や知識を自分に同期させているって言うんです。放っておくと城廻くんが、彼のお爺さんの人格になってしまうから……それに城廻くんの身体でお爺さんが復活してしまう」


『何を言っているんだ? 意味がわからないぞ、そんなオカルトだかSFだか分からない話。それに、俺の機械を使ったって、それを阻止できるとは……しかし……。お前たちの言っている荒唐無稽な話を本気になんかしていない。でも、城廻の祖父が絡んでいると聞いたら大問題だ。俺はそいつを放っておく事はできないからな。とにかく直ぐにお前たちと会うから、こっちへ来て詳しく話すんだ』


 西御門さんは、自分のいる場所を告げた。僕たちに残された、たった一つの、危険な命綱だった。


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