表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方幻神録-Lord of Pantheon-  作者: 蓬莱桜
1/1

プロローグ『幕開けは○○○と共に』


 ――『幻想郷』。


 それは日本の人里離れた山奥に存在する、二つの結界により外界から隔離された土地。言うなれば、一種の異世界ともいえる場所。


 『幻と実体の境界』と『博麗大結界』という二つの強力な結界が張られたその地は、通常外部から侵入することも内部を確認することもできず、同時に外に出ることも外部を確認することもできない筈であった。


 しかし、今。


「――あぁ、相変わらずここの風は気持ちが良い」


 神にも迫る力を持った大妖怪『八雲紫』を始めとして、幻想郷に存在する名だたる強者達に一切悟られること無く、1人の男がいとも容易く幻想郷へと降り立った。


「この感覚、何百年ぶりかな」


 腰まで伸ばされた癖一つ無い黒髪に、全てを見通すような底の知れない黄金の瞳。その精悍な顔には神をも畏れぬと言わんばかりの不敵な笑みが刻まれ、龍瞳鳳頸という言葉を想起させる。細身ながら一切の無駄なく極限まで鍛え上げられた肉体と合わさって、その姿まさしく眉目秀麗。人体の黄金比とも言うべき存在であった。


「さて、まずはどうしたものか」


 だがそれ故に畏ろしい。あらゆる芸術品すらも霞むその身はまさしく完璧。第一印象において人に好かれるという領域をとうに越え、むしろ人が神に畏れを抱くように親しみの感情を封殺する。


「やはり挨拶か……?」


 しかしそんな事、この男には関係ない。彼は別段なにかをしているわけでは無く、今この状態こそが自然体。その身から溢れ出る威圧感も何もかも、ただ無意識に漏れ出すモノに過ぎないのだから。

 神も仏も、人も妖怪も、俺を畏れるのなら勝手に畏れておけばいいと、不敵な笑みは言外にそう語っているようでもあった。


「それじゃあ一つ、ゆるりと」


 と、風に靡く髪をかき上げた男が、カランコロンと下駄を鳴らして歩き出す。千歳緑の着流しが風に揺れ、袖を通さず羽織った黒地に黄金で天翔る龍が描かれた羽織が翻る。


「数百年ぶりの幻想郷、とくと堪能させてもらいましょうか!」


 今こうして、幻想郷で新たな物語が幕を開けようとしていた。




「――うっわ、犬のうんこ踏んだ!!」


 台無しである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ