存在しない人
胸の痛みが消えない。
重い何かを背負っているような感覚に蒼空は襲われていた。
あれから2年。蒼空はこの2年間、男性に意識を持たなくなった。
「あんたこれからどうすんの。」
遥の質問は容赦ない。
「どうするって…」
「ずっと誰とも付き合わないつもり?そんなんじゃ一生彼氏できないよ。」
「べ…べつに今好きな人いないし…」
蒼空の頬に一筋、汗が流れた。
「出会いを探しなさいよ出会いを!」
遥はアイスコーヒーを飲み干した。飲んだ後の声がまるでおじさんだ。
「そんな無茶な…」
「合コンに行きなさい。」
「は?」
「私のように合コン通いになりなさい!」
「え、えー…。」
その後、遥はこれからのこと、恋愛、合コンについて語られた。
(合コンについて語られたの何回目かな……)
蒼空はそんな事を思いながら、カフェオレを飲み干した。
海に行きたい。
その思いは変わらなかった。
そうすれば、あの頃のことを思い出せる。
あの人のことを……
蒼空は、その思い出を忘れかけていた。
「後悔しても知らないよ。」
遥から言われた言葉。その意味が理解できない。
「海斗……」
名前を言ってみる。懐かしい感じがした。
あの人の名前は橋本海斗。
名前通り、海がすごく好きだった。
私が行きたい海は、私と海斗が出会った海。
目から何かがこぼれた。
「あれ…なんで…」
あの人の顔、声が浮かぶ。自然と涙が出てくる。
もう、存在しない。
胸の痛みが、さらに増した。




