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1-3.続 行方不明のキス

「康祐くんじゃなくて“康祐”って呼ばれたいんだって?」

「!」

「いつまでも年下のドレイっぽい扱いが嫌だっていうこと?生意気だよねぇ。」


なんだか康祐が思うところと果那の言うニュアンスが違っている。

それに、ドレイだと思ってるとしたら酷すぎる話だ。

しかし酔っ払いにそんな細かい話をしても通じるはずはない。


「康祐くんは、こうすけくん、だよ。対等にはならないね。だってほら、手だって大して大きくない・・・あれ?」


ろれつの回らない口調で言いながら、果那は康祐の左手と自分の右手を合わせた。


「あれ、ずいぶんがっちりした手になったねぇ。」

「いつの頃と比べてるんだよ。」


果那はふふんと鼻で言って康祐の顔をじっと見た。

アルコールの臭いと共に果那の胸の辺りから漂う甘いフレグランスが康祐の理性を刺激する。

康祐は自分の鼓動が速度を増すのを感じていた。


「な、なんだよ。」

「そういえば、丸かった顔も、眉毛がピシッとして目も奥二重で鼻筋も通ってきたね。」


果那は康祐の首に回していた腕を外し、康祐の眉や頬を指でなぞった。

康祐はゾクゾクして息がこぼれそうになるのを眉間に力を入れて必死でこらえ、平静を装った。


「あ、でも三つもある泣き黒子はそのままだね。」


面白そうに果那は康祐の顔をいじりまわす。


「じゃあ、耳は?」

「やめろよっ」


果那の手が康祐の耳に触れたとき、康祐の限界が来た。

康祐は重ねている果那の手に指をからめ、反対の手を果那の後頭部へ伸ばしてぐっと引き寄せた。


「んっ」


強引に唇を重ねると果那はすぐに康祐の胸を押すように抵抗したが、康祐は何度も唇を重ねた。


「ふあっ・・あ・ん・・・」


果那から甘い息が漏れ抵抗が弱まると、康祐は少し興奮して、深く、果那への沸きだしそうな気持ちを伝えるようにキスを続けた。

康祐はなぜだか、泣きたいくらいに苦しい気持ちだった。


果那の体の力が抜けて崩れそうになり、康祐は我に返って果那の後頭部を押さえていた手を背中に回し、しっかりと支えた。

そして、今度はそっと、頬や瞼に軽くキスを落とした。

果那は黙って目を閉じ、そのまま徐々に康祐の胸に体を預けてきた。


「か、果那ちゃん、あの、俺。」


胸に寄りかかる果那を思わず力強く抱きしめると、康祐は緊張して声が震えた。

俺、弟分じゃなくて、早く果那ちゃんに対等に見てもらいたいって思っていたんだ。そしたら、果那ちゃんに言えるかなって。


「ぐー。」


果那ちゃんにちゃんと男として見てもらいたいってずっと思ってて。

ん?今のはなんだ?

康祐がどこから話すか頭の中で盛り上がっていた時、胸の中で果那が寝息を立てていた。


「え?果那ちゃん?」


康祐が果那の肩を揺っても、果那は完全に寝ていた。


「嘘だろ、この酔っ払い・・・」


本当に泣いちゃおうかなぁ。

俺のことこんなやばい状態にさせておいて、寝るか?

制服のズボンがきつくなり、更に寝てしまった果那の体重がかかって痛くなって体を動かした。

康祐は果那を胸に抱いたまま、深くため息をついて虚しく曇天の夜空を仰いだ



その後、果那は康祐との公園の出来事などまるでなかったかのように普通に振る舞っていた。

あまりに平然としているので、康祐は自分が夢を見ていたのかと思うほどだった。

一度、新歓コンパの帰りのことを確認してみたが、どうやって家に帰ったのか覚えていないと笑って答える果那に、康祐はもう何も言えなくなっていた。


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