表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

7-3.康祐の部屋

「それにしても果那ちゃん、もう少しお母さんのお手伝いしたほうがいいわよ。」

「はい、そうします・・・。」


康祐の母親、康祐、果那は三人で食卓を囲んで賑やかに食事をしていた。

正確には賑やかなのは母親だけだったが。


「でもやっぱり女の子が家にいると嬉しいわぁ。」


果那が最後まで料理したゴーヤチャンプルは、見た目が本当にチャンプルでぐちゃっとしていた。

康祐が作ったミョウガと溶き卵のスープは卵がふんわりしていた。

母親が作ったかぼちゃの煮物は冷やしてあっさりと。


「果那ちゃんがお嫁に来てくれたら、一緒にキッチンに立てるのかしら?楽しそうだわ。」

「ははは・・・」


果那が苦笑する。


「母さん、俺たちのこと解ってるくせにそういう話するのやめろよ。」

「あら別にいいじゃない、果那ちゃんがもしも売れ残っちゃったらうちに来てもらえれば。」

「売れ残る・・・」

「そんなわけないよ、果那ちゃん大学でもモテてたし。」

「じゃあ康祐は気が気じゃなかったのねぇ。」


母親がまた面白そうに笑った。

食事が済むと、三人で一気に食器を片づけた。

あっという間に洗い物は済んで、康祐は冷やしておいたスイカをリビングのローテーブルに運んだ。


「あ、康祐、スイカ持ってきて。」

「なんで?」


母親の言葉に首を傾げて大皿にのせてあるスイカを手にキッチンに戻る。

母親はお盆に乗せた皿にスイカをいくつかのせ替えて、麦茶も二つ置いた。


「はい、どうぞ。」


康祐が怪訝そうに母親の顔を見る。

母親はまた馴れないウィンクをしてみせた。


「部屋でちゃんと話してきなさい。」

康祐は溜息をついて、お盆を持った。


「果那ちゃん、上でも・・・いいかな。」

「え?」


ソファに座っていた果那が驚いた顔をした。

すかさず康祐の後ろから母親が顔を出す。


「ごめんね、ちょっと大量に買い出しに行ったら疲れちゃって、ソファで横になりたいのよ。」

「あ、わかりました・・・。」


果那は康祐について二階に上がっていった。


「ごめん、ドア開けてくれる?」


大きなお盆を手にした康祐の代わりに果那が部屋のドアを開けると、熱気がもわっと二人を包んだ。


「うわ、あっつー。」

「凄い暑さだな。」


康祐は勉強机にお盆を置くと、エアコンのスイッチを入れた。

そのまま机の前の椅子に座る。

果那は部屋を見回して、ベッドに腰かけた。

康祐は小さい皿ごと果那にスイカを手渡した。

自分も膝に皿を置いて一切れかぶりつく。

暑い空気の中、良く冷えたスイカは美味しかった。


「康祐くんの部屋に入るのって、子供の頃以来かな。」


スイカを食べながら果那はキョロキョロと部屋を見回す。


「あの頃は確かマンガが一杯あったけど、さすがに今は真面目そうな本が多いね。」

「そりゃあね。」

「男子って大体変な本とか隠したりしてるの?」

「何だよ変な本って。どういうのか言ってみろよ。」

「変な本は・・・・・写真集とか。」

「何の?」

「・・・・。」

「・・・・・果那ちゃんのバーカ。」


康祐は食べ終わった皿をお盆に戻すと、机の引き出しを開けた。

奥の方に腕を伸ばす。


「こういう本のことだろ。」


康祐は裸の女性が表紙の本を果那の方に投げた。


「や!出さなくていいよ!」


果那はそれを投げ返した。

康祐は笑って本を元に戻すと、麦茶を両手に持って果那の横に座った。

麦茶を一つ果那に差し出す。


「私、康祐くんより包丁が使えないってさすがに恥ずかしいなぁ。」

「そうだねぇ、得意料理のひとつくらいあった方がいいだろうね。」

「本当に売れ残っちゃったらどうしよ、おばさんが言ってたみたいに康祐くんにもらってもらうかな。」


果那がいたずらっぽく笑って見せる。

康祐はムッとした。

その顔に果那が驚く。


「そういうこと、冗談でもいうなよ。」

「あ、ごめん。」


康祐は果那が彼とうまくいっていない様子だったことが気になった。

また無言で並んで麦茶を飲む。


「でもね。」


果那が口を開いた。


「私、今から多分ものすごく勝手なこと話すけど、とりあえず聞いていてほしいの。」

「は?」

「私、結局暁さんとは本音を話し合えなかったから、逆に何でも言える康祐くんには言いすぎて迷惑かけてるけど、でもやっぱり言ってないこともあって。嫌われても呆れられてもいいから、思ってること全部言いたいの。」

「結局話し合えなかったっていうのは。」

「うん、もう暁さんとは終わりになったの。」

「いいの?大丈夫なの、それで。」

「うん、大丈夫。」


康祐は嬉しく思うより先に果那のことが不安になった。


「私、この間気が付いたの。そうやって私のことをいつもいつも気にかけてくれる康祐くんと暁さんを比べていたの。それで、更に我儘な自分の気持ちに気が付いたの。」


果那はチラッと康祐を見た後、うつむいて小さな声で言った。


「私のことを好きでいてくれる康祐くんを失いたくないって思ってる自分がいたの。」


康祐は何も言えなかった。


「サイテーでしょ、振ったくせに。」


果那はうつむいたまま「ごめんね。」と言った。


「こんなこと言われたら頭にくるでしょう。」


しかし康祐は怒りの気持ちを持っていなかった。

というか、まるで真っ白だった。

麻痺しているような感覚で、どう反応していいのかわからなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ