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4-2.泥酔

中野先輩が会場に遅れて到着し、果那かなたちに合流したことで、康祐こうすけはますます落ち着かなくなった。


地方勤務だから現れないと思っていたのに。

中野先輩が果那ちゃんのこと好きだという噂は噂ではなく事実であることを康祐は知っている。逆に中野先輩も康祐が果那をずっと好きなことを知っている。

サークルにいるときの二人の恋のライバル関係は、康祐の固いガードに中野先輩が半ば諦めた形になっていた。

その中野先輩が、果那たちと楽しそうに乾杯して、名刺やらケータイを出しあっている。

康祐は、近くにあったグラスを手に取り、一気にあおった。そしてすぐ、次のグラスへ手を伸ばす。


「中野先輩は優しくてスタイル良くて、いい会社に入って、本当にイケメンだもんな。」


康祐はふて腐れた独り言を呟きながら、水割りのグラスをちびちびやっていた。

会の半ばを過ぎて、お決まりのビンゴゲームなどが始まると康祐は暇になり、どんどん酒を呑みつづけた。

そのうち、アルコールと人いきれで息苦しくなり、康祐はバルコニーへ出ようと歩き出した。


「康祐、どうしたんだよ。」


真っ直ぐ歩けない康祐に手を差し出したのは、親友の渡辺洋わたなべひろしだった。


「どうもしないよ、暑いから外の空気吸いに行くんだよ。洋、手なんか掴むなよ。」

「お前、自分が相当酔っぱらってること解ってないのか?」

「俺が?俺あのくらいの酒じゃなんともないぜ。」

「何ともあるようにしか見えない。ヨタヨタしてるぞ。」


洋は康祐を支えて一緒にバルコニーへ出た。


「果那ちゃんたちを見てたら、飲みすぎたのか。」


洋が心配そうに聞く。

康祐はフン、と鼻を鳴らして街の灯りへ目をやった。

ホテルの中の生暖かい熱気のこもった空気と打って変わって、凍りつくような冬の空気が体中に刺さるようだ。


いぬいちゃんはあんまり酔ってないよ、めぐみ先輩が飲むもの気にしてくれてるし、俺に声かけてくれていたから。お前のことも気にしてくれてるんだよ。」


康祐はため息をついた。


「みんなに心配されるけど、みんな果那ちゃんと俺がうまくいくことを応援してはくれないんだよな。」


洋は黙っていた。


「なぁ、もう少し酒持ってきてくれないか。」


康祐の言葉に洋は渋々グラスを取りに行った。


「もうさ、酔っぱらわなきゃやってられないよ。目の前にあんなに楽しそうにしている果那ちゃんたちに近づくことすら出来ないんだから。中野先輩も、松井先輩も、果那ちゃんのこと気にしていたのを知ってるのに。何にもわかってない果那ちゃんが、あの馬鹿みたいに素直な果那ちゃんが、ほっといたらあっという間に仲良くなるのは目に見えてる。果那ちゃんて天然とか恋愛に鈍感なだけじゃなくて馬鹿なんじゃないか?」


康祐は嘲笑するような表情で言うと、洋が持ってきたワインのグラスを飲み干した。


「あんな馬鹿、俺くらいしか一生守ってやれないのに、何にもわかってないんだから、果那ちゃんは。」

「何年たっても、このままじゃ死んでも分ってもらえないのは、果那ちゃんが鈍感なだけじゃなくて、お前が何もしてないからだ。」


洋がはっきりと言った。


「康祐、このままじゃどんどん辛くなるだけだぞ。もう、覚悟を決めた方がいいんじゃないか。」

「なんだよ覚悟って、洋もどうせ幼馴染はダメなんだって思ってるんだろう。」

「俺はお前のことずっと背中押してるだろう。フラれろって言ってるんじゃない、自分の気持ちを伝える覚悟を持てって言ってるんだ。そんな風に陰からうだうだ言いながら泥酔してるお前なんて見たくない。」


康祐は親友の本音の言葉に涙がでそうだった。


「ごめんな、いつも情けなくて。洋の言うとおりなんだよな・・・でもやっぱり今日はこれ以上もう無理そうだ。」


真っ直ぐ歩けない状態で帰ろうとする康祐を洋は止めたが、それを振り払うようにして康祐はよろける足下でホテルを出た。


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