4-1.OB会
「めぐみ先輩、とりあえずビールですか。」
飲み物の載ったお盆を手に、康祐は果那たちの方へ近づいた。
2月、真冬のさなかのOB会は都内のホテルで行われていた。
会費制の立食パーティー。なるべく余計なお金を使わないためにホテルマンは使わずに、幹事の3年生がドリンクサービスなどを行っている。
華やかに着飾ったOGとちょっとおしゃれなネクタイのOBが徐々に集まってきていた。
黒のニットにゴールドがかったベージュのサテンワンピースを重ね、髪を編みこみにしている果那。
その果那のうなじが見たくて、後ろから声をかけた。
「果那ちゃんは飲むの?」
「うん、でもビールは苦手だから・・・」
康祐はすかさずシードルのグラスを渡した。
「軽いのにしときなよ、また酔うと大変だぞ、俺が。」
「いいじゃん久しぶりの人と会うんだし。それに康祐くんには頼らないよ。」
「そうそう、彼氏でもないのにうるさいこと言わないの。」
好恵がシッシと追い払うように手を払った。
康祐は渋々他のグループを見まわした。移動する前に、めぐみを脇へ呼んだ。
「何よ。」
怪訝な顔で康祐について、みんなから2,3歩離れた場所へ動く。
「果那ちゃんがあんまり酔いすぎないように、見ていてもらえませんか。」
「何よ、改まっちゃって、大丈夫よ。」
「でも松井先輩とか、仲良かった先輩たちがもう一緒に居るじゃないですか。」
「あんた、私に代わりにガードしろって言いたいの?」
「俺の代わりっていうか、しっかりしてない果那ちゃんの代わりに、めぐみ先輩に頼みたいんです。めぐみ先輩なら果那ちゃんの本心知ってると思って。」
康祐は黙ってめぐみの返事を待った。
「・・・・・会社の彼とやり直したいって話よね。」
康祐は頷いた。
「だから他の人と仲良くするなっていうの?おかしいでしょ、みんな知ってる者同士集まっているのに、そんなに警戒するなんて。」
「だから、男性を警戒するっていうよりは、飲みすぎると歯止めが効かなくなる果那ちゃんを止めてほしいんです。」
「私だって楽しみたいのに。」
そういいながらも、責任感の強いめぐみは「どうしようかな」と額に手を当てた。
「お酒の方は気を付けるけど、結婚してるわけじゃないし彼とうまくいってるわけでもないから、同期の男子と仲良くするのは止める気ないからね。私、康祐くんの気持ちまで面倒見てられないから。」
めぐみは早くも空にしたグラスを康祐に押し付けた。
康祐は次のグラスを渡しながら、頷いてみせた。
今年のOB会はかなりの出席率で、幹事たちは忙しく動き回っていた。
康祐は果那たち4人と一緒に懐かしの先輩たちが仲良く盛り上がっているのを横目に、他の客の世話に動き回っていた。
1時間ほどして、果那たちのグループで少し高い声が上がった。
果那のことをずっと好きだったらしいと噂の中野先輩が遅れて到着したのだ。




