3-2.束の間の
その晩、滝沢康祐は何度も何度も頭の中で想像していたことを夢に見ていた。
何度もそうなりたいと願って想像していたことが、ようやく現実になったのだと幸せな気持ちでいた。
幼馴染の呪縛を解いて、やっと手に入れた幸せな時間。
窓から差し込む月の光が明るい夜。
自分の腕の中で静かに寝息を立てる、果那の穏やかな寝顔を見ながら、ただその髪を撫でるだけでそれ以上触れることなく、それだけで満たされた気持ちで自分もゆっくりと眠りの中に溶けていく。
映画の中のワンシーンのように。
果那のことで、どうしようもなく胸がいっぱいになり眠れなくなると、いつもこんなことを想像していた。
声を聞きたくてたまらなくても、幼馴染という間柄では、話す事もないのに意味もなく電話を掛けることがおかしい気がして、できなかった。
好きな気持ちが、素直に行動することを何かと邪魔していた。
解っている。
みんなが諦めろという理由は。
幼馴染はダメだという理由は。
そんなのずっと昔から自分が一番解っている。
それでもどうしようもなく諦められないんだ。
大人になるほど、幼馴染は互いの距離が遠くなっていく気がして、不安になった。
何度も告白してフラれて終わりにしようと思った。
彼女でも作れば忘れられるかと思った。
でも、他の人を見ようとするほど、果那のことが気になって仕方がなかった。
どんな子とつきあっても、結局、相手を傷つけてしまうだけだった。
高校3年になる直前に3人目の彼女と別れた康祐は、とりあえず、目の前の大学受験のことだけ考えようと思った。
それも、果那のいる短大の近くを狙っていた。
もちろん、将来やりたいことに繋がる学部を考えてもいたが。
そんな時、酔った果那にキスをした。
覚えていないのは嘘か本当かわからない。
だけど、覚えていなくて良かったのかもしれない。
覚えていたら、きっとぎこちなく、おかしな関係になっていただろう。
しかし、その曖昧な状態は自分に返ってきている。
結局自分の気持ちをうやむやにしたままでいるうちに、また一歩先に大人になり社会人になった果那とは当然のように会うことは減り、そしてとうとう、果那に恋人ができた。
傍にいることも、話をすることも、気持ちを伝えることすら、もう何もできない最悪の幼馴染になっていた。
辛うじて、果那が何かあると相談してくることは続いていたので、連絡があったときには何よりも果那を優先していた。
愚痴や暇つぶしや相談相手でしかないことは解っていたが、康祐はそれにすがるしかなかった。
自分からは、偶然を装うくらいにしか、会うことは出来なかった。
でも今はこうして果那が自分の腕の中にいる。
もう、あんなに苦しい思いをすることもない。
素直に果那に向かい合える。
康祐は果那のまっすぐなきれいな髪を撫でた。
そして・・・目が覚めた。
康祐は目を開いてしばらく天井を見つめていた。
ゆっくりと現実に戻る。
戻りたくない現実に。
「やっぱり夢だったか。」
大きくため息をついて体を起こした。
服のまま、ベッドで転寝していたらしい。
ケータイで時間を確かめると、夜11時になるところだった。




